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読書評:『わたしを離さないで』カズオ・イシグロ

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課された、「ある目的」とは⁉︎

舞台は、主人公の優秀な介護人キャシー・Hが生まれ育った施設ヘールシャム。物語は、学生、青年時代にありがちな友人同士の日常生活、友情とすれ違い、進路と別れなどが、淡々とした語り口で書かれています。

しかし淡々と描かれる会話や日常生活の背景に、何か釈然としない闇、奥歯にものが挟まったような、まどろっこしさがつきまといます。「提供者」「介護人」「猶予」「使命」「ポシブル」などの意味深な言葉が、詳しく説明されぬまま続いていくためかもしれません。

キャシー達にしても、自分たちの境遇やこれからの進路を「教わっているようで、教わっていない」ため、そのこと(境遇、出生の秘密、担う使命)を口にするのもためらわれ、あらぬ噂や思い込みに揺れ動き続けます。青年たちの感じているであろう漠然とした、はっきりと表現されない不安が、読み手にも波及し、ページを捲る手を止めさせません。

主人公達は成長し一定の年齢に達すると、ある「使命」を果たしていくようになります。そして最終的に聞かされた真相。この真相を受け止めるキャシー達の態度と次の言葉に、この物語は収束していくように思います。

(あなたたちは他の“提供者”と比べて恵まれた存在だ、と話す先生に対して)

「(世間の風潮が)追い風か、逆風か。先生にはそれだけかもしれません。」と私は言いました。

「でも、そこに生まれた私たちには人生の全てです。」

物語を通して、遺伝子工学や再生医療に関わる倫理の指南も含まれているかもしれません。それでも「倫理」だけでは説明つかない、命の紡ぎや生き方を巡るさまざまな想像や信条が読者に浮かんできます。青春時代の友人・恋人との歯がゆいやり取りも印象的です。

さらに表題「わたしを離さないで」には、物語の展開でいくつもの別れにあうキャシーの心情を醸し出しているようでもあります。文庫本表紙のカセットテープも、主題のカギを関わっていて、それも考慮すると興味深く読めます。

本書『私を離さないで(原題 Let Me Go、土屋政雄 翻訳、早川書房、2006年)』は、イギリス最高の文学賞「ブッカー賞」に続き、2017年のノーベル文学賞を受賞した作家、カズオ・イシグロ氏の長編小説です。

青年達に生来課された「ある目的」に想像を巡らせながら読むことをオススメします。

 

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