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万病のもと“内臓脂肪”を落とす <読書評>内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法(奥田昌子著,幻冬舎新書)

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内臓脂肪と聞いて,「おなかが出てきたけど,そんなに問題なのか!?」とお思いでしょうか.

『内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法(奥田昌子著,幻冬舎新書)の著者は,つぎのように内臓脂肪の危険性を指摘しています.

内臓脂肪は,ただたまっているだけでなく,ある種の物質を活発に分泌しています.この物質が血圧を上げ,血糖値を上げ,動脈硬化を進行させ,血管の中で血を固まらせて脳梗塞を招きます.認知症についても,やはり内臓脂肪から出る物質が脳の神経細胞を破壊するという論文が発表されました.こういうことが最近どんどん明らかになってきています.(はじめに)

内科医として20万人以上の人間ドックや健康診断の経験から,「データに異常値があらわれるより先に内臓脂肪の蓄積が始まる」「内臓脂肪を取らない限り,病気の進行を止められない」ことを実感してきたそうです.さらに,ほとんどの人が自分はまだ大丈夫だと思い込んでいることにも危機感を募らせてきました.

しかも日本人は,遺伝的に内臓脂肪が付きやすい体質をしているといいます.

これには,日本人のもつ筋線維の特徴から来ているという説があります.筋肉には,瞬発的に強い力を出す速筋線維(白筋)と,弱いけれども持続的に力を出す遅筋(赤筋)とがあります.内臓を支えるようにお腹を取り巻く腹横筋や腹斜筋といった筋肉は,主に速筋線維からなります.日本人はアフリカ系の人と比べて,遅筋線維の割合が高いとされており,腹筋が弱く,内臓を十分に支えられないというのです.そのため,内臓脂肪を増やして内臓を固定するようになったのではないかと考えられるのです.

今回は,第2章 内臓脂肪は万病のもと!に着目し,内臓脂肪が全身に影響を及ぼす理由をみていきます.

肥満はお腹が出てきて見栄えがしないだけでなく,さまざまな病気の引き金になるといいます.とくに不健康な肥満と考えられるのが,BMI 25以上に加えて,次のいずれかに当てはまる人です.

  • 腹囲が男性で85cm以上,女性で90cm以上の内臓脂肪型肥満の人
  • 肥満を原因とする健康障害があるか,今後の出現が予想される人

これは「肥満症」と呼ばれる病気で,減量を含めて医学的な治療が必要と判断されます.肥満症が恐ろしいのは,脂質異常症や高血圧,高血糖を招き,ひいては脳梗塞や心臓病,脂肪肝の発症率を高めるなど,さまざまな病気を引き起こすことです.さらに,肥満を原因とする腰痛や,睡眠時無呼吸症候群などの健康被害も招きます.

内臓脂肪

内臓脂肪が全身に影響を及ぼす理由

内臓脂肪は皮下脂肪と異なり,中性脂肪を大量に取り込むと1個1個の細胞が大きくなって,体積が竿台で2倍を超えます.
(中略)困ったことに,内臓脂肪の細胞は大きくなると悪玉物質を分泌する力が高まります.それと同時に善玉物質をあまり作らなくなるため,脂質,血圧,血糖の数値は悪化するばかり.こうなると手が付けられません.(59ページ)

そもそも人の身体には,皮下脂肪と内臓脂肪を合わせて300億個の脂肪細胞があります.脂肪細胞はエネルギーの貯蔵庫であると同時に,さまざまな物質(その数,100種類以上!)を活発に分泌して身体の生理機能を調節しているといいます.これらの物質には,身体に良い働きをするもの(本書中では“善玉物質”と呼ばれます)と,悪い働きをするもの(悪玉物質)とがあります.

悪玉物質が問題なのは,血圧や血糖値を上げ,動脈硬化を招いて生活習慣病を起こす働きをするからです.一方で善玉物質には,アディポネクチン(インスリンの効きを高め,蓄積した脂肪を燃やしくれる)やレプチン(食欲を抑えて肥満を防ぐ)といった,生活習慣病の進行を抑えるものがあります.

内臓脂肪が大きくなると,脂肪細胞が分泌する物質のうち,身体に悪影響を及ぼす物質が増え,良い影響を与える物質が減ってしまいます.このため生活習慣病が進行し,恐ろしい病気の発症へと連鎖,メタボリック・シンドロームへとつながるのです.しかも自覚のないうちに進行してしまうのです.

内臓脂肪がインスリンを暴走させ,糖尿病を招く

“内臓脂肪が増加するとインスリンの効き目が悪くなる”,といいます.なぜなら脂肪細胞からインスリンの効き目を悪くする悪玉物質の分泌が増えて,アディポネクチンの分泌が減る減るからです.

インスリンの仕事は,食べものの炭水化物から分解された血中のブドウ糖を全身の細胞に取り込み,エネルギー源にするのを助けることです.インスリンがきちんと働けば血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が下がります.もしインスリンが働かない事態となれば,細胞がエネルギーを作り出すことができず,活動できなくなってしまいます.

内臓脂肪の蓄積によってインスリンの効き目が悪くなると,困った脳は次のように指令を出します.

インスリンの効き目が悪いなら,インスリンをたくさん分泌して量で勝負すればいいんじゃないか?…こうして脳は膵臓に指令を出し,インスリンをどんどん作らせます
これで解決と思いきや,とんだ落とし穴が待っていました.高い濃度のインスリンには困った性質があり,なんと血圧を上げるのです.(66ページ)

こうした内臓脂肪とインスリンの関係が重要で,本書では脂肪肝や生理不順,骨粗鬆症,認知症,歯周病,がんなどさまざまな病気の機序として何度も強調されています.“高血圧,糖尿病,脂質異常症などの生活習慣病は,すべて内臓脂肪の蓄積からスタートして,動脈硬化という共通のゴールに向かって進みます”と著者が指摘する所以です.(68ページ)

しかも日本人は生来,「アディポネクチンをたくさん分泌できないタイプの遺伝子を持っている」,「インスリンの分泌量が欧米白人の半分〜1/4しかない」などの不利な条件を合わせ持っているといいます.遺伝子は変えられませんが,生活習慣による内臓脂肪の蓄積を防ぐ工夫はできます.おなかが少し出ている程度でも油断しないことが大事です.

内臓脂肪が“おなかに付く”のが問題!

内臓脂肪が付く場所が原因で健康被害を引き起こすことも指摘されています.

内臓脂肪が付く場所

内臓脂肪は内臓をつり下げている「腸間膜」という薄い膜の間で,血管の通り道に蓄積していきます.そのため内臓脂肪が分泌する悪玉物質はすぐに血流にのって全身をめぐります.腸間膜を流れる血流はまず肝臓に入ります.内臓脂肪がたくさん付いていると,脂肪細胞に含まれる中性脂肪が過剰に分解され大量の脂肪酸ができます.大量の脂肪酸はそのまま肝臓に入り,脂肪肝の原因になるのです.

 

他にも,内臓脂肪が「おなかに付く」ことで,便秘や頻尿,逆流性食道炎,腰痛などを引き起こしているといいます.

内臓脂肪が付きすぎて,臓器と臓器のすきまを固く埋めてしまうと,腸が自由に動くことができません.食べものを消化しながら出口に向かって送り出す機能が妨げられるため,便秘になったり,無理に食べものを押し込むことでおなかをこわしたりしがちです.(72ページ)

下腹部に内臓脂肪がたまることで腸の動きが悪くなり,女性では便秘が,男性では前立腺肥大に似た症状(頻尿)が起きやすいというのです.さらに脂肪が胃を圧迫すると,食べものや胃酸が食道へ逆流しやすくなります.

 

いまや国民病といわれる「腰痛」との関わりも見過ごせません.

内臓脂肪がたまると,バランスをとるために体が後ろに反り返り,背骨の腰の部分が前に突き出します.この状態が長く続くと背中の筋肉が緊張して腰痛が起こります.(77ページ)

本来,人の背骨を横からみると緩やかなS字カーブを描いて,負担を分散できるようになっています.しかし,内臓脂肪がおなかに付くことで,重心が体の前へ傾きます.身体はおなかの重みを支えようと,背中の筋肉を緊張させていくのです.この過剰な筋肉の緊張によって腰痛や肩こりをも引き起こしてしまいます.

*なお,背骨の形とおなかの重みによる姿勢の変化はコチラもご参考ください→“背骨”を動かして健康になる.Part 1:背骨の形態の意義

腹部重量過多による上半身重心の後方偏位

腹部重量が過多になると,姿勢を変化させて(上半身重心の後方偏位),前後方向の質量バランスを維持しようとする反応がみられる.

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結びに

内臓脂肪をスタートとし,さまざまな病気の連鎖が引き起こされる様子をみてきました.しかも日本人は内臓脂肪の付きやすい体質をしています.

しかし,まだ間に合います!

内臓脂肪がちょっと付いても,すぐに消えていく,そんな体質になることはできます.それが運動の効果です.しかも内臓脂肪は皮下脂肪とくらべて脂肪の合成と分解が活発なので,たまりやすい反面,効果的に取り組めば皮下脂肪よりも先に落ちる(154ページ)

食生活では,体内でのコレステロールの合成を促す成分“飽和脂肪酸”を避ける,食べ過ぎない,食物繊維やお魚をしっかり食べる,などの工夫ができます.もっとも大事なのは,やはり運動です.運動によって脂肪の燃焼を促すうえに,インスリンの効き目を改善し,高血圧や糖尿病,動脈硬化など病気の予防と改善に役立つことが明らかにされています.

内臓脂肪を減らすのに効果的な運動は,「筋力トレーニング→有酸素性運動」の順で運動することです.睡眠をしっかりとる,ストレスをためない,などの生活習慣も大事です.

内臓脂肪を落とす食事や生活習慣,運動方法を知るのに最適な一冊です.本書をご参考に,内臓脂肪を減らす生活習慣を実践いただければ幸いです.

 

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コメント

  • 内臓脂肪とインスリンの関係、悪玉物質、もっと気になりますねぇ…
    内臓脂肪への考え方の幅が広がりました
    この本、面白そうですね ^ ^

    by ババ 2018年9月13日 12:18 AM

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