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「進化医学」の観点から最高の体調を手に入れる(1)現代人を悩ます「慢性炎症」とは?

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(日々のさまざまなレベルの不調や不満に対して)本書では,より総合的なアプローチをとります.
 まずは現代人が抱える問題の「共通項」をあぶりだし,そのうえで,すべてを柔軟に解決する汎用的なフレームワークを提供するのが最終的なゴールです.
 鬱病,肥満,散漫な集中力,慢性疲労,モチベーションの低下,不眠,弱い意志力など,一見バラバラのように見える問題も,根っこまで下りてみれば実は同じもの.すべては一本の線でつながっています.そして,その線の正体を暴くカギが,「文明病」という考え方なのです.(はじめに)

『最高の体調〜進化医学のアプローチで,過去最高のコンディションを実現する方法〜(鈴木 祐著,クロスメディア・パブリッシング)』ではこのようなスタンスで,科学的根拠をもとに実践的な健康管理のロードマップが示されています.

怒りや不安をコントロールできず仕事がうまく進まない,つねに体調不良を感じている,毎日の暮らしに張り合いがない…など症状も深刻度もさまざまな問題に対して,著者は“現代人に特有の「文明病」が原因”だからであると述べています.本書でいう文明病とは,“近代社会の変化によって引き起こされる,現代に特有の病気や症状”を意味します.

文明病を語るのに使う論拠は,「進化医学」の視点です.進化医学とは進化生物学にもとづいた医学であり,進化論を生み出したダーウィンになぞらえてダーウィニアンメディスン(ダーウィン医学)とも呼ばれます(Weblio辞書).進化医学の根幹は,人類の進化と現代の環境のミスマッチにあります.

人類の進化における生活スタイルをみると,1〜2万年前に石器時代から農耕生活にシフトしました.それまでは,現在の人類の基礎ができてから約600万年にわたって狩猟採集生活を営んできたのです.人類の生活スタイルの変遷にもとづき,ヒトが本来の能力を発揮する条件について著者は次のようにいいます.

 この壮大なタイムスパンを見れば,人類は進化の過程で古代の環境に最適化してきたと考えるのが自然でしょう.
 自然のなかで獲物を追い,太陽の運行とともに暮らし,少数の仲間と語り合う.ヒトの脳と体は,そんな環境のなかでこそ最高のパフォーマンスを発揮するように進化してきたのです.(24ページ)

しかし現代生活においては,人類に備わった生存システムが環境に馴染まず,古代にはあり得なかった現象(肥満や集中力の低下,うつ病など)が現れたといいます.これら文明病を引き起こす要素は,「炎症」「不安」に大別されるとのことで,今回は,第2章 炎症と不安 に着目します.

100歳生きる!健康長寿の秘訣は,炎症レベルの低さ

100歳を超えてなお元気な「センテナリアン」と呼ばれる,健康高齢者に注目が集められています.

NHKでも特集されました*あなたもなれる健康長寿|けさのクローズアップ|NHKニュース おはよう日本 

慶応大学医学部 百寿総合研究センターの新井康通先生の研究によれば,センテナリアンと一般高齢者との違いは,身体の中で起きている「慢性炎症レベル」にあったといいます.つまり,慢性炎症のレベルが低い人たちは,高い人たちに比べて,生存日数が長い傾向にあることが明らかになり,“さまざまな老化に関係する因子のなかで,慢性炎症が特に健康寿命の阻害要因として重要だった.慢性炎症を抑えるということが,健康長寿の達成には重要”と述べています.

「炎症」といえば,切り傷や火傷といったケガを負ったときに,有害な刺激を取り除くために免疫システムが起動し,ケガを修復すべく働くものです(=急性炎症).関節炎やアレルギー,風邪をひいたときの発熱や鼻水といった緒症状など,身体の内外で炎症は生じます.炎症は進化の過程で備わった,生体防御システムであり,生きていくのに欠かせないものです.

一方,現代人のさまざまな不調は,“風邪のように高熱で一気にかたをつけるのではなく,とろ火でジワジワと全身を煮込むような形で進行する”「慢性炎症」の結果起きていると,著者はいいます.人体を守るために免疫システムが激しい戦いを続けて,血管や細胞といった周辺組織にまでダメージがおよび,やがて全身の機能が低下していくのです.(41ページ)

内臓脂肪や睡眠不足,ストレスが慢性炎症の引き金

本書は進化医学の観点から,現代の日本人と伝統的な狩猟採集生活を送る部族との比較をもとに健康へのロードマップを示しています.炎症について両者を比べると,次のような違いがあるといいます.

・狩猟採集民:外傷や感染による短中期的な炎症がメイン.激しい発熱や嘔吐など周囲から見てすぐにわかるような症状が出る.
・現代の日本人:体内で延々とくすぶる長期的な炎症がメイン.誰にでもわかるよう症状は表に出ず,少しずつ不調が進行する.(47ページ)

現代病として挙げられる糖尿病やうつ病,認知症,慢性的な痛みや不調なども,炎症レベルの高さとの関連が明らかにされています.脳や身体のあちこちで,だらだらと小火(ぼや)が続いているイメージですね.

では,なぜ現代人の炎症レベルは高いのでしょうか?

 

 

 

 

先日のブログ*で,「内臓脂肪」がある種の物質を分泌し,高血圧や脂質異常,高血糖を招き,動脈硬化を進行させると書きました.炎症とも無関係ではありません.

万病のもと“内臓脂肪”を落とす <読書評>内臓脂肪を最速で落とす 日本人最大の体質的弱点とその克服法(奥田昌子著,幻冬舎新書)

人体にとって異物である内臓脂肪が蓄積すると,体内では免疫システムが作動し,脂肪細胞が分泌する炎症性物質が臓器に炎症を引き起こします.つまり内臓脂肪が減らない限り体はジワジワと燃え続け,炎症性物質で血管や細胞が傷つき,やがて動脈硬化や脳梗塞を招きます.しかも本人のハッキリした自覚が少なく進行するのが,メタボリックシンドロームの恐さです.

内臓脂肪が付く場所

「睡眠不足」も炎症レベルを高めます.カリフォルニア大学によるメタ分析(2016)から次の事実がわかったと紹介されています(50ページ)

・平均睡眠時間が1日7〜9時間の範囲を逸脱すると体内の炎症マーカーが激増する
・夜中に何度も目が覚めてしまうような場合も,体内の炎症は増える 

そもそも炎症は体を守るためのものでした.進化の過程で人類には,朝日が昇るとともに起きて,夕日が沈むとともに休むというリズムが刻まれています.現代生活は,生体にそなわったリズムを逸脱することが多々あります.そうすると体は生命の危機を感知して,炎症レベルを引き上げるかのようです.

睡眠不足

慢性炎症の解消に役立つ3つの枠組み

さらに,全身の炎症を引き起こす要因を考えるうえで,考古学者ダニエル・リーバーマン氏(ハーバード大学)が提唱するフレームワークをもとにした古代と現代のミスマッチが起きるパターンが参考になるといいます.それは3つの枠組みからなり,“(現代において)古代より多すぎるもの,少なすぎるもの,新しすぎるもの”に分類するものです.(54ページ)

  • 多すぎる:摂取カロリー,精製穀物,アルコール,オメガ6脂肪酸,塩分,乳製品,飽和脂肪酸,満腹感,食事のバリエーション,人口密度,衛生設備,人生の価値観
  • 少なすぎる:有酸素運動,筋肉を使う運動,睡眠,空腹感,ビタミン,ミネラル,食物繊維,タンパク質,オメガ3脂肪酸,自然との触れあい,有益なバクテリアとの接触,太陽光の摂取量,深い対人コミュニケーション,他人への貢献
  • 新しすぎる:加工食品,トランス脂肪酸,果糖ブドウ糖液糖,公害,人工照明,デジタルデバイス,インターネット,慢性的なストレス,化学物質,重金属,処方薬,抗生物質,孤独,仕事のプレッシャー

3つの分類をみると,これまでの研究によって健康被害が指摘されていることに気づきます.ただこれまでは,“△△△(塩分)が×××(血圧)に悪い”などのように,バラバラに取り上げられてきたものです.進化医学からみると,それらは決して単独の現象ではなく,一本の線につながっているのです.

あなたの普段の生活を振り返ってみて,多すぎるものや新しすぎるものとの接触は減らし,適度な距離感をたもつ.少なすぎるものを増やし,積極的に取り入れる.そう意識した行動によって全身の炎症レベルを低く維持し,生まれ持つ心身のパフォーマンスを発揮することができるのではないでしょうか.

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結びに

古代と現代のミスマッチにより,体に刻まれた生存システムが機能しないことで,さまざまな不調やパフォーマンス低下を招きます.

ただ,これから「狩猟採集生活時代の生活スタイルに戻しましょう!」といっても,完全に実践することは不可能でしょう.しかし,今あなたが抱えている問題の背景に,人類の進化と現代の生活のミスマッチがあるのではないかと認識することはできます.そうすれば,問題を解決するには,炎症と不安をコントロールしていくために,生活の中で修正していける方法があります.

環境の変化が人類におよぼした影響を知り,その対策をたんたんと実践していくのみです.次回は,炎症の解消のために実践できる具体的な方法をみていきたいと思います.

ぜひ本書で紹介される内容の一部でも実践することで,きっとあなたが本来持つ心と身体のパフォーマンスを発揮することにつながるのではないでしょうか.

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