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「キラーストレス」の対処法−“頑張らない”ススメ−<読書評>

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「ストレスに負けない」「折れない心で頑張り続ける」ことは,実のところ,身も心も滅ぼす最悪の選択になる.その可能性が非常に高いとしても頑張り続けますか?

と,『本当に怖いキラーストレス 頑張らない,あきらめる,空気を読まない(茅野 分著,PHP新書)の著者は現代社会のビジネスパーソンに警鐘を鳴らします.著者は銀座のクリニックで精神科医として働き,数多くのビジネスパーソンの心の病と向き合ってきました.その多くが仕事に関するストレスを抱えており,我慢に我慢を重ねた挙げ句にうつ病などのメンタルヘルス疾患を発症し,休職や退職せざるを得なくなっていたといいます.

そして過剰なストレスによって身も心もすり減らし,ついには死に至らしめることもあります.日本人の年齢別死因をみると,20代,30代の一位,40代の二位,50代の三位にランクするのが「自殺」なのです.さらに恐ろしいのは,死因の上位を占める「心疾患」「脳血管疾患」もその根本原因にストレスがある点だといいます.いかに働き盛りの人間がストレスによって死に追いやられているのか,現状を示唆しています.

*参考:死因順位(第5位まで)別にみた年齢階級・性別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合(平成29年,厚生労働省)

本書では人を死に至らしめる心因を,「キラーストレス」と呼んで,ストレスが「死の真因」とならないように,今からできる対策が紹介されています.今回は本書で紹介されるキラーストレス対策のうちで,第4章-頑張らない,あきらめる,空気を読まない に注目します.

ストレスの原因「ストレッサー」を知る

ストレスの原因となるものは「ストレッサー」と呼ばれ,外界からの刺激「外的ストレッサー」と,個人的な問題による「内的ストレッサー」とに分けられます.さらに,外的ストレッサーは「物理的ストレッサー」「社会的ストレッサー」とに分けられ,内的ストレッサーは「心理的ストレッサー」「生理的ストレッサー」とに分けられます.代表的には以下のようなものが該当します.(86ページより)

内的ストレッサー

  • 心理的ストレッサー:上司と部下,昇進,転職,退職,残業,パワハラ,セクハラ,いじめ,家族,結婚などのライフイベント
  • 生理的ストレッサー:不眠,過眠,疲労,病気,ケガ,痛み

外的ストレッサー

  • 物理的ストレッサー:気温,湿度,気圧,騒音,照明,大気汚染,土壌汚染
  • 社会的ストレッサー:食事,お酒,喫煙,化学物質,薬物,放射能

ストレス対策では,あなたのストレッサーを認識し,「外界からの刺激」と「個人的な問題」の両方からアプローチしていく必要があります.いずれのストレッサーも,度が過ぎればキラーストレスとなり得るからです.

タバコやアルコールの摂取は,リラックス効果をもたらす一方,血管を傷つけ,体内を酸化させ,老化を促進します.身体にとっては,十分,ストレッサーとなり得ます.家庭,職場の環境,日々の食事なども,自律神経のバランスを乱す要因になりますから,まさに「キラーストレス」と化す可能性があるのです.(87ページより)

我慢の連続

「我慢の連続」はキラーストレスを招きます.

キラーストレスの原因は「我慢の連続」であり,「心が抑圧された状態」だといいます.例えば,次のような状況です.

疲れて帰宅する電車の中で,大騒ぎする学生と乗り合わせてしまったとしても,次の日も同じ学生に出会う確率はほとんどありませんから,「電車を降りるまでの我慢」と考えることができます.電車から降りた途端にストレスから解放され,「ああ,良かった」と思うのです.

しかし,毎日,会社で起きることがストレスの原因であったとしたら,(中略)「また,明日もここに来なければならない」「また嫌なことを我慢しなければならない」という気持ちが湧き上がり,「ああ,良かった」と思うことはできないはずです.(22ページより)

こうした「継続した我慢」から生まれたストレスに対して,多くの人たちは「負けてはいけない」「頑張らなくては」と必死に抵抗しようとします.しかし,これらがストレスの増大に拍車をかけ,「我慢の連続」を永遠に続かせているというのです.だからこそキラーストレス対策では,この我慢からの開放がカギになります.我慢からの開放の際に必要なのが, 頑張らない・あきらめる・空気を読まない であると著者は薦めています.

「頑張る」は,脳内麻薬の中毒

きっとあなたは,生まれて幼少期から「頑張れ」という言葉をシャワーのように浴び続けてきているでしょう.学校で,スポーツで,芸術で,社会人となってからは仕事や子育てなど,さまざまな場面で「頑張る」ことを求められます.そして成果が出れば「よくやったね」と褒められる,褒められるから,また頑張る…そんなサイクルを繰り返してきました.しかし,頑張り続けることで,いつしか脳がフリーズしてしまう恐れがあるのです.

そもそも,あなたが緊張感を高め,周りが見えなくなるほど集中する,つまり「頑張る」とき,脳内では神経伝達物質「ノルアドレナリン」が放出されています.ノルアドレナリンが放出されると,呼吸が速くなり,心拍数が増加し,血圧が上昇します.筋肉の緊張が高まり,生命の危機に際して“闘うか,逃げるか”を決断し行動する準備を整えます.本来は,野生動物が生き延びる術として備えてきた機能なのです.

頑張った結果,いざ仕事を完成させ,周囲から褒められると,今度は「ドーパミン」という神経伝達物質が放出されます.ドーパミンは幸福感や快楽を得たときに放出され,目標を達成したり,欲しかったものを手に入れたときの「やったー!」という感覚を生み出します.ドーパミンのもたらす快感は,一度体験すると「もう一度体感したい,もっと欲しい」と欲するようになります.仕事でいえば,「もっと褒めてもらえるような良い仕事をしよう,結果を出そう」と思えるのです.

しかし,神経伝達物質の働きによる,頑張る→快感を得る→もっと頑張る→快感を得る,というサイクルは長くは続かないといいます.

神経伝達物質が正常な量を超えて分泌され続けると,脳内の神経回路では異常事態が起こります.脳がノルアドレナリンの作用に慣れてきてしまうのです.

本来は死の恐怖を感じるほどの危険に対応するために大量放出されるノルアドレナリンを次々に使ったことで,脳が麻痺してきます.それまではノルアドレナリン回路が猛スピードで信号を送り続けていたのに,突然回路の動きが緩慢になり,前頭前野に刺激が届きにくくなってしまいます.(92ページより)

前頭前野は脳内で高度な思考や計算,意志,理性などを司る部位です.そのため前頭前野が十分に機能しなくなると,急速にパフォーマンスが落ちたり,気力を失ってしまったりする弊害が生じるといいます.

脳の混乱

ノルアドレナリンの異常放出によって,脳がフリーズしてしまします.

キラーストレス対策①頑張らないススメ

もちろん目標を達成したり,欲しいものを手に入れるためには,集中してものごとに取り組む必要があるでしょう.しかし脳のフリーズを避けるために,そのペース配分を考える必要があります.

確かに,頑張ることは必要です.ただし,頑張り続けることは避けなければなりません.(101ページ)

脳がフリーズするほどの状況は,あなたが周囲からの過度な期待に応えようとしたり,日常のささいなことにも「勝ち負け」にこだわったり,到底無理なことやできるはずもないことを頑張り続けたときだといいます.周囲から止められても,「もっとできる」「まだやれるはずだ」と頑張り続けてしまいます.そんな状況では脳の機能が低下し,ミスをしたり,人間関係がギクシャクしたりしてしまいます.本書ではこのような負のスパイラルを,“頑張りの悪循環”と表現されています.

頑張ろうと思ってやり始めたことであっても,やり続けるうちに困難だ,大変だ,到底無理だと感じたら,勇気をもって頑張ることを辞める選択をする必要があります.

キラーストレス対策②あきらめる

著者のいう「あきらめる」とは,次のような心の持ち方をいいます.

  • 過去にあきらめたことを,あきらめる
  • 「いい人」になることをあきらめる
  • 「〜ねばならない」の呪縛をあきらめる

「本当は別の会社に就職したかった」「別の憧れの女性がいた」「資格試験に受からなかった」など,過去にあきらめたことを今もひきずっていると,いつまでも後味の悪さを残したまま生きなければなりません.そうではなくて,“過去の自分があきらめたことを,あきらめる.現在の自分を受け入れる”ことが大切だといいます.そして,今,そのとき,そのときの出来事にだけ注視するクセをつけるのです.

著者が“いい人”と表現するのは,“いい人に思われたい人”,“その場その場で「感謝されたい」「褒めてもらいたい」と願う気持ちの現れ”と言い換えられます.周りの困っている人のために自分を犠牲にしたり,無理をしてまで頑張っていると,やがてそのツケが自分自身の負荷となって戻ってきます.

人間関係がストレッサーになっている人は,「〜だから,・・・ねばならない」と考える傾向にあるといいます.例えば,「大人だから,我慢しなければならない」「良い夫(妻),良い父(母)でなければならない」「新入社員なのだから,残業をしなければならない」「チーム力結束のために,気の乗らない飲み会にも参加しなければならない」など.しかし「ねばらない」という思考は,自分に強迫観念を課したり,他人を受容できなくなったりして,心をとても苦しめます.

こうでなければならないという呪縛から解き放たれ,どんなやり方でも,「それなりの結果が出れば良い」としましょう(129ページ)

我慢からの開放

ストレスに悩むあなたには「連続した我慢からの開放」が必要です.

キラーストレス対策③あえて空気を読まない

いつも“空気を読ん”で,自分の意見を押し殺したり,人の気持ちに同調しようとしがちではないでしょうか.それでは仕事が進まなかったり,自分の作業に集中できなくて成果が出なかったり,決して人のためにもならないといいます.著者は「共感」と「同調」をはき違えないように,共感を求めすぎないようにと,次のように指摘しています.

人は,他人の苦しみや悲しい気持ちを理解することはできても,本当に同じ気持ちになることはできません.苦しみや悲しみを抱えている人もそれをわかっているので,「一緒に悲しんであげる」「一緒に苦しんであげる」と同調されてもなぐさめにはなりません.

ただ,つらい気持ちをわかって,寄り添ってあげるだけで充分なのです.それが本来の共感するという気持ちです.(141ページ)

チームで仕事をする場合にも「同調圧力」を避けて,空気を読みすぎず,違った意見を言い合える風通しのよい組織作りが適しています.

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結びに

ときに人の命を危険にさらす「キラーストレス」について読書評をまとめました.キラーストレスの真因は,「我慢の連続」であり,「心が抑圧された」状態といえます.そのためキラーストレスを避けるには,「我慢からの開放」が大事です.我慢からの開放について,本書では頑張らない・あきらめる・空気を読まないことが薦められています.

「頑張る」ことは,目標を達成したり,欲しいものを手に入れたりするために必要ですが,「頑張り続ける」ことには注意が必要です.「頑張り続ける」ことで脳内の神経伝達物質の働きが異常をきたし,脳がフリーズしてしまいます.結果的にミスが増えたり,パフォーマンスが落ちたりしてしまっては,本末転倒です.メンタルヘルスのために,ときには勇気をもって頑張ることを辞める.現在の自分を受け入れる.相手の気持ちに共感はしても,同調しない,などの対策があります.

最後に「目標の設定」について,著者は次のように述べています.

小さな目標であれば,何度も成功体験を味わえますし,たとえ一度くらい目標に手が届かなくても,次の目標に向かってリスタートを切ることができます.(129ページ)

目標を持つことは大切ですが,あまりに高い目標ではストレスが溜まります.小さな目標の設定と,その達成を積み重ねることで喜びや幸福感,達成感が生まれ,自己肯定感が高まります.また高い目標であっても,“達成することが目標ではなく,日々,何をするかの「道しるべ」と認識し”ておくことがよいといいます.目標を生き方の道しるべとし,今日一日を楽しんでお過ごしいただければと思います.

 

 

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