こころとからだの健康掲示板

こころとからだの関連性(心身一如)から「真の健康」を目指します!!

人口減少の日本で,家族・仕事・暮らしはこう変わる!<読書評>

calendar

Pocket

“職場や地域社会,家庭といったどの生活シーンにおいても少子高齢化や人口減少の影響を避けられない”,というのは未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること(河合雅司著,講談社現代新書)』の著者.この問題を真に理解し,うまく対処していくためには,それぞれの住まいや家族,仕事,地域,暮らしなどに起きる事態を,“自分自身の問題”としてイメージすることが必要だといいます.

今回は本書のなかで具体的に示されるシーンとして,「家族に起きること」,「仕事に起きること」,「暮らしに起きること」の例をピックアップします.

スポンサーリンク

あなたの家族に起きること

食卓から野菜が消え,健康被害へ

2018年冬,日本のスーパーでは野菜の価格が高騰し,例年と比べて2〜3倍となるような異常な高値がつきました.台風や長雨,冷夏などの天候不順によって農産物の生産量が減れば,価格の高騰が生じます.しかし著者は,野菜の高騰化には天候だけでなく,人口問題が深く関わっているといいます.

少子高齢化こそ,高騰の“主犯格”と言っても過言ではない

どういうことなのか.農業従事者の高齢化が関係しているといいます.農業従事者の平均年齢は,59.6歳(1995年)→64.2歳(2005年)→67.0歳(2015年)と年々上昇し,65歳以上が全体の65%(60歳以上で80%)を占めるようになっています.

*参考:農林業センサス(農林水産省)

しかも,高齢化した農業従事者が稲作に偏っていることを問題視しています(稲作従事者における65歳以上の割合は,50.9%(1995年)→76.5%(2015年)に増加している).

そもそも野菜の栽培は農産物のなかでも手間がかかるうえ,コメと比べて農機具の機械化も遅れているといいます.人手に頼って一つずつ収穫されるのです.機械化が進まなければ,高齢者にとって手間のかかる野菜栽培は,体力的にきつくなります.人口減少の進んだ地域では,収穫作業などに応援を頼むのも難しくなります.そうして,機械化の進んだ稲作に偏るようになり,野菜の生産量がますます減っていきます.

機械化による大規模農業ができないうえに,新規就農がなかなか進まず,既存農家の高齢化も進んできた.物流は複雑で,しかも生産者の高齢化,予期せぬ天候不順への対応を難しくさせている.要するに日本の野菜生産は,求められる消費量に対して,精一杯の生産力で何とかこなしているという,“ギリギリの状況”に置かれている.生産量に余裕がない分,コストを吸収する「ゆとり」もなくなる.これでは,少しでも天候不順などがあると,たちまち品薄となり,即座に価格に反映してしまうのも当然である.(71ページより)

野菜の生産量が減って価格が高騰すれば,健康にも少なくない影響を及ぼしそうです.家計を気にして,充分な野菜を食べるのを避けるようになれば,栄養バランスが崩れ,病気につながりやすくなります.とくに糖尿病や心筋梗塞,生活習慣病などのリスクが高まると予想されます.

少子高齢化が野菜の生産量減少,価格の高騰を招き,健康をおびやかす.こんなストーリーが進行しています.

野菜の高騰

あなたの仕事に起きること

中小企業の後継者不足が地域経済を脅かす

日本経済を下支えしてきた中小企業.今,中小企業の経営者が高齢化し,企業活動にも影響を及ぼしてきているといいます.中小企業経営者の年齢構成は,2006年と2015年の比較で次のように推移しています.70歳代:12.1%→19.1%,60歳代:29.9%→37.0%,50歳代:36.2%→23.1%,40歳代以下:19.4%→15.8% (「中小企業白書(中小企業庁,2017年度)」より).

経営者の高齢化がもたらす問題として著者は,高齢化するほど売り上げが落ち込むことと,後継者不足を指摘しています.直近3年間で売上高の増加した企業を経営者の年齢層で比較すると,30代が経営者の企業では51.2%,60代では21.8%,70代では14.4%となっています(中小企業庁,2016年).

後継者不足が深刻なのは,休廃業・解散前に黒字や高収益だった企業が少なくない,という点だといい,その実態を次のように語っています.

高収益ながら廃業した企業の約96%は従業員20人以下だ.経営者の年齢では60歳以上が約7割を占めており,黒字経営をしていながら後継者不足によって廃業せざるを得なかったことを物語る.これは極めて異常な事態だといえよう.(105ページより)

これは潰れる企業だけの問題にとどまりません.休廃業・解散をきっかけに,熟練した技能を持つ従業員が引退や転職を迫られれば,特許技術や優良技術は途絶えてしまうのです.技術が海外に流出すれば,日本の国際競争力が落ち込みます.さらに地域生活にとって欠かせない業種の休廃業は,地域の存続をも脅かすのです.

日本経済の成長分野に資する技術力やノウハウを持つ中小企業の廃業は,それこそ日本全体の「衰退」へとつながりかねない.(109ページより)

経営者の高齢化,後継者不足

あなたの暮らしに起きること

ドライバー不足によって,救命率が低下する

一刻を争う病状や怪我の患者にとって命綱となる救急車.今,救急車が要請(119番通報)を受けてから現場に到着するまでの時間(現場到着所要時間),および要請を受けてから病院に収容されるまでの時間(病院収容所要時間)が延びているといいます.現場到着所要時間は,平均で6.6分(2006年)→8.5分(2016年)へ1.9分伸びている.病院収容所要時間は,平均で39.3分(2006年)→32.0分(2006年)へ7.3分伸びている.

時間がかかるようになった原因について著者は,搬送人員の増加救急隊員の不足を挙げています.救急車で搬送された人のうち,高齢者が6割近くを占めます.社会の高齢化が進むにつれて利用者の高齢化も進んでいるといいます.また救急車を呼んだ理由も問題となっています.ほぼ半数は入院加療を必要としない軽症者(外来診療で済む人)や,医師の診断のない人だったのです.

安易な利用が減らない一方で,高齢化による需要が拡大すると,救急出動件数は今後さらに増大が見込まれる.結果として,本当に緊急性が伴う患者への到着所要時間がさらに延び,救命率に影響が生じるおそれがあるというわけだ.(146ページより)

救急車間に合わない

宅配便が届かない,自動販売機が補充されない

ドライバー不足は救急車だけではありません.この春には引っ越しシーズンにもかかわらず,ドライバー不足により引っ越しできない,というニュースが大きく報じられました.物流の現場が危機的状況に陥っているのです.ドライバー数は顕著な高齢化や,長時間労働・低賃金などで新規参入が少ないなどの理由で,従事者が減っているのです.その結果,2020年には10万6000人,2030年には8万6000人が不足するといわれています(「大型トラックドライバー需給の中・長期見通しに関する調査研究」,公益社団法人鉄道貨物協会,2014年)

ドライバー不足が深刻化する背景には宅配需要の伸びがあり,実際に宅配便の数はここ28年で約5倍に激増しています.その要因としてネット通販の凄まじい成長「買い物弱者」の増加が挙げられています.これらは人口規模の縮小と無縁ではありません.人口規模の縮小により,地域の身近な店舗やサービスの廃業や撤退が進みます.するとマイカーを運転できない高齢者は行動範囲が狭くなり,日常生活に支障をきたします.このような「買い物弱者」にとってネット通販は頼みの綱となります.ところが,これが諸刃の剣のようです.

「買い物弱者」に対策の切り札としてネット通販への期待は高まっている.インターネットを自在に使いこなす世代が高齢になれば,そのニーズに合った商品も充実することだろう.そうなればさらに利用を考える人は増えることになる.ところが,ネット通販の利用の伸びに合わせてドライバー不足が解決されるわけではない.むしろ切り札としての期待が膨らむほど,物流の破綻に拍車をかけることになりかねない.ネット通販への依存度が高まるにつれて,店舗やサービスが縮小・撤退し,ドライバー不足の解消がさらに困難になるという悪循環が続くことになる.(150ページより)

ただし著者は,ネット通販を否定しているわけではない,といいます.少子化で働き世代が減り,ドライバーの確保も難しくなるなかで,ネット通販のような便利すぎる仕組みに過度に依存することに警鐘を鳴らしているのです.便利なサービスに過度に依存すれば,いずれどこかで成り立たなくなることを,私たちに理解するよう促しています.

結びに

著者によれば日本の高齢化の特徴は,①高齢者の「高齢化」,②一人暮らしの高齢者,③女性高齢者,④低年金・無年金の貧しい高齢者−の増加にあるといいます.さらに出生数の低下(過去の少子化による母親世代の女性の減少)による少子化の著しい進行が,人口動態の変化を加速させます.

人口動態が変化すれば,それまで当然あったサービスや生活スタイルも変えるよう余儀なくされます.その問題を真に理解し,今から備えておくためにも,これからの社会で起きる(現在進行形の!)事象をイメージすることは不可欠です.それは決してネガティブなものばかりではありません.高齢顧客への支援サービスの隆盛など,時代にあったビジネスや暮らしを展開するヒントともなりえます.他人事ではなく,あなたに降りかかる問題として理解するのに最適な一冊です.

*人口減少する社会を考えるのにコチラもご参考ください→人口減少するニッポンで私たちの生活はどう変わるのか,「人口減少するニッポンで私たちの生活はどう変わるのか⁉︎(その2)高齢化について」

 

 

この記事をシェアする

コメント

コメントはありません。

down コメントを残す




folder 「免疫系」を知る

免疫力を高めるストレス解消法
免疫力をアップさせる運動のコツ
“免疫系の暴走”を抑えるのも,食事から!〜食物繊維の役割〜
more...

folder こころを整える

「怒り」と上手に付き合えば,ストレス解消される
「キラーストレス」の対処法−“頑張らない”ススメ−<読書評>
一切唯心造.川端知義さんの講義から
more...

folder コミュニケーション

想いを伝える力(伝達力)は,マインドから学ぶ.<読書評>
more...

folder 季節ごとの快適な過ごし方

お正月の過ごし方で年始のスタートダッシュが決まる!
痛みの原因は「冷え」と「乾燥」?この時期に気を付けたい冷え対策
残暑こそ夏バテ・冷え症に要注意!
more...

folder 未分類

医療・介護報酬改定に応じたリハビリテーション部門強化のために
成長期における適切なスポーツ活動量
早く治るための“患者の心がけ”とは⁉︎
more...

folder 療法士向け

学生のやる気を引き出す(理学療法士臨床実習指導者の心構え)
理学療法士のための臨床実習を乗り切る3つの心構え
股関節疾患の理学療法に必要な局所的・全身的視点
more...

folder 脳の働きを知る

「心」とは?
人の行動は脳内物質に支配されている⁉︎
愛着と嫉妬は紙一重⁉︎ “愛情ホルモン”オキシトシンの意外な一面.
more...