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“ぬけぬけ病”の正体は⁉︎ 自律神経から考える

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“ぬけぬけ病”の正体は⁉︎ 自律神経から考える
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前回の記事で、長距離ランナーに蔓延する“ぬけぬけ病”を例に挙げ、足に力が入らなくなる原因を考えました。

「“ぬけぬけ病”の正体は⁉︎力の伝達障害から考える」

ひとの運動を力学的観点から次の様にまとめました。

ひとの運動は、体幹を力の源として、中枢部から末端部(手足先)へと力を伝達することで成り立つ。

身体が力を発揮するとき、同等量の力を受け止め吸収している。

力を受け止められるキャパシティ(=柔軟性)が低下すると、発揮できる力も低下する。

発揮できる力の低下は、関節の安定性や駆動性を低下させ、思い通りのパフォーマンスをできなくなる可能性がある。

そして身体の柔軟性は、「体幹」の担うところが大きいということでした。

今回は、体幹の柔軟性に関わる理由を考えていきます。

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運動における体幹の役割

力の力源、エンジン

ひとの運動は体幹を力源として、中枢部(体幹)から末端部(手足先)へと力を伝達することで成り立ちます。運動する物体の仕事量「運動エネルギー」は、質量をm、速度をvとするとmv2/2で表されます。体幹は身体の質量の6割超を持ち、運動エネルギーの発生に大きく貢献します。

体幹機能が低下すると、末端へ上手く力を伝達できなくなり、上下肢(腕、脚)の関節コントロールが拙劣になります。ある地点(起点)から目的の地点(到達点)へ直線で向かおうとしている場面をイメージします。起点でのほんの少しのズレは、到達点では当初意図したところよりもはるかに大きなズレとなって現れます。運動の中枢である体幹のちょっとした狂いは、末端部へ向かうほどより大きなズレとなって関節への負担となります。

動作の力源

衝撃緩衝の主役

身体が力を発揮するとき、同等量の力を受け止め吸収しています。この力の吸収を多く担うのが、体幹です。体幹の骨格は、骨盤・脊柱・胸郭から成り、ひとの大まかな形態を維持します。その内部には、心臓や肺、消化器、内分泌系、泌尿器、生殖器などの大事な臓器を内包しています。

身体に返ってくる力の緩衝に関わるのは、脊柱の弯曲構造(背骨を側面からみるとSカーブを描きます)や、椎間板、体幹筋などです。このうちコントロール可能なのは、体幹筋です。体幹には約60個の筋が付着し、姿勢の保持や呼吸、力の発揮、衝撃緩衝に重要な働きを担います。

体幹筋の働きには、運動神経の支配(運動指令)はもちろん、自律神経による調整も受けています。細かな機序は後ほど追記いたしますが、とにかく呼吸や血液循環、消化、代謝などに関わる自律神経が、体幹筋の収縮状態(筋緊張状態)にも影響を及ぼしているという事実を考慮する必要があります。自律神経に過度な負担がかかった場合、交感神経と副交感神経の活動のバランスが崩れます(多くは交感神経の活動が過剰となります)。過剰な交感神経の活動が持続すると、体幹筋の緊張も亢進します。筋肉は本来、適度なリラックス状態(触ると、つきたてのお餅のような柔らかさをしています)のときに充分な筋力を発揮できます。

例えばボクサーで、はじめからガチガチに力を込めている選手が鋭いパンチを繰り出せるでしょうか。否です。だらーっとしたところから、ここぞというタイミングで力のこもった一閃を放つことができます。普段はリラックスしているからこそ、筋肉が本来の力を発揮し、最高のパフォーマンスを発揮できるのです。

疾走中のランナーに何が起きたのか

話を“ぬけぬけ病”に戻します。走行中のランナーが、脚に力が入らなくなりバランスを崩した際に、体内で何が生じていたのでしょうか。

1つは、前述した体幹の柔軟性低下によって、脚へ上手く力を伝達できなくなった(=力の伝達障害)。力を伝達できなければ、筋力で関節をコントロールすることができず、思い通りに脚を運ぶことができなくなった。

さらに力の伝達障害の背景には、自律神経が関与する可能性も考えられます。自律神経のうち交感神経の活動が過剰に亢進していたのではないでしょうか。

交感神経活動の過剰な亢進が生体に及ぼす影響

過剰な交感神経活動の亢進により、全身の筋緊張は高まるうえ、血管も収縮する(血液の通り道が狭くなる)ので末端への血流が滞ります。血流の障害は組織の代謝を下げるので、運動に伴い発生する活性酸素や乳酸を代謝できず、運動(筋肉の収縮と弛緩)を継続することが困難となります。

交感神経活動の過剰な亢進は、体幹筋へも重大な影響を及ぼします。

横隔膜や胸郭に付着する呼吸筋の緊張を高め、胸郭の柔軟性が低下します。胸郭の柔軟性低下により呼吸機能に影響し、ガス交換(体内に酸素を取り込み、体内の二酸化炭素を排出する)に支障が生じます。ガス交換の効率が落ちると身体のすみずみまで酸素を運ぶことができず、正常な組織の代謝が損なわれます。さらに胸郭は体幹のうちでも大きな質量割合を占めるため、体幹柔軟性への寄与が大きくなります。胸郭の柔軟性低下は、体幹の柔軟性低下に大きく影響します。

体幹、とくに背部筋の緊張亢進によって脊柱の弯曲構造が変化し、衝撃緩衝機能が低下します。脊柱のように、腰椎前弯、胸椎後弯、頸椎前弯という3つの弯曲をもつ構造の抵抗力(軸圧に対する抵抗力)は、まっすぐな円柱の10倍となります。この弯曲構造の変化は、脊柱全体の抵抗力、つまり衝撃緩衝能力に直結します。

*自律神経の詳細はコチラ→「自律神経とは何か」

走行中のランナーに生じた変化

走行中に襲ったアクシデントに際して、体内では上記のような全身状態の変化が生じていたのではないでしょうか。

箱根駅伝という大舞台に到達するまで、選手は過酷なトレーニングを積んで極限まで身体を絞り込んできます。過度な運動をするスポーツ選手は、免疫力の低下した状態にあります。免疫と自律神経も密接に関連します。

周囲からの注目や期待、代表に選ばれた責任、緊張感など精神的なプレッシャーも相当なものでしょう。精神的なストレスも交感神経活動の亢進を招く一因です。

これまでの生活習慣の影響も看過できません。睡眠時間や食習慣はどうだったのでしょうか。

さらに当日は寒さと乾いた環境によって、体内では冷えと乾燥(脱水)による交感神経活動の亢進が生じます。冷えと乾燥によって血管が収縮し、血液ドロドロ状態となります。

姿勢筋緊張の亢進

まとめ

  • 力の伝達障害が生じる機序に、体幹の役割が重要である。
  • 自律神経が体幹筋の緊張状態に影響を及ぼす。とくに交感神経活動の過剰な亢進によって、体幹機能をはじめ、全身状態が大きく変化する。
  • 当日のランナーには、交感神経活動が過剰となりやすい条件が揃っていた。交感神経活動が過剰に亢進した状態では、筋肉の活動のみならず、全身組織の代謝も変化し、正常な運動の継続が困難となった可能性がある。

最後までお読みいただきありがとうございます。

今回は理学療法士としての臨床経験から、疾走中のランナーを襲った症状について考えました。今後は、そのような状況に陥るのを防ぐため、普段からどう対処していけばよいのかを考えていきます。

原因不明といわれる症状に苦しむ選手の一助となれば幸いです。

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