前回のブログで,“背骨を力源(エンジン)として,背骨から末端の手足へ力を伝達することで動作が成り立つ” と書きました(*動作における背骨の動き).このように中枢部から末端部へ力を伝達できるのも,背骨を含めた体幹部が土台として安定しているからこそです.
今回は,手足を自由に動かすための“土台”となる背骨の役割について,さらに安定性と柔軟性の両方を兼ね備えた背骨の機能についてまとめます.
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ボディとアームの関係
まず,背骨と手足の関係を分かりやすくするために,工事現場で使うクレーンのような,「ボディ」と「アーム」からなる物体をイメージしてください(下図).本稿では便宜上,ボディ:“土台”として安定している部分で,アーム:さまざまに動いて目的を遂行する(物を掴む,運ぶなど)部分と表現します.

ボディが土台として安定してこそ,アームが機能する.
今,静止しているアームを目的地点まで動かそうとしています(図左).土台となるボディが安定していれば,アームは自由に動くことができます(図右上).一方,ボディが不安定であれば,アームが機能しないどころか,アームに連れられてボディから総崩れになりかねません(図右下).
このようなボディとアームの関係を,運動学の用語でテンタクル活動(tentacle activity)といいます. テンタクルとは“触手”を意味し,要するに,土台となるボディが安定してこそ,アームが機能する,ということです.
土台となる背骨
人の動きにおいても同様で,ボディが安定してこそ,手足を使った目的の運動(歩く,ボールを投げる,道具を使うなど)を遂行できます.そして人の身体において手足の土台となるのが,背骨を含む体幹であると考えられます.
前述したテンタクル活動は,身体でいえば,手足を空間移動させたり,寝返り,起き上がりのような動作を指します.
ボディにも,アームにもなる背骨
「体幹はボディ,手足はアーム」と前述しましたが,背骨の機能はそれだけにとどまりません.背骨はボディにも,アームにもなり得るのです!
お祭りの屋台で,こんなヘビのおもちゃを見たことがないでしょうか?胴体を持つ手の位置によって動く分節(節目節目で分割された区画)が変わり,頭の動く範囲が異なります.
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背骨は小さな積み木(椎骨)の重なりであり,頸椎,胸椎,腰椎に区分されます.とっている姿勢や目的とする動作によって,ボディとアームが変化していきます.
例えば,立っているときは,足から腰椎までをボディとし,胸椎から腕までがアームとなります.椅子に座っていれば,足から骨盤までがボディとなって,腰椎から胸椎,腕,手先を柔軟に使うことで目的とする動作を遂行します.もし逆立ちでのパフォーマンスをしていれば,手から胸部までをボディとし,腰椎から足先をうまく使っていくことになります.
人の動作は,一瞬一瞬,一コマ一コマの姿勢変化の連続ととらえることができます.その瞬間の姿勢において,背骨は,分節的にボディとなったり,アームの一部となったりして,円滑な動作に貢献しているのです.
背骨がボディとしてもアームとしても機能するためには,固い棒のような形態では用立ちません.背骨が柔軟に,しなやかに動けることが大前提となります.
まとめ
手足を目的に沿って動かすためには,その土台となる背骨を含む体幹が空間上で安定しておく必要があります.また背骨のどの部分を土台とするかは,そのときの姿勢や動作の瞬間瞬間で変化しており,分節的に動ける背骨の柔軟性が求められます.
現代では,座り時間の長いデスクワークや,スマホやパソコンの連続使用による不良姿勢,生活習慣の乱れなどにより,背骨が固くなりやすい状況があります.普段から意識して背骨を動かすのを習慣とし,安定性と柔軟性を兼ね備えたしなやかな身体作りをしていくのが肝要です.
最後までお読みいただきありがとうございます.
*背骨の形態については,こちらもご参考ください→「背骨の形態の意義」
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