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腰痛の臨床推論-見逃せないレッドフラッグと神経症状-

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腰痛は、多くの人が訴える臨床的にも頻繁に遭遇する症状です。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、わが国の有訴者率では男女とも第1,2位を占めています。

腰痛の定義や原因、治療法にはさまざまあり、症状の改善に難渋することも少なくありません。その一方で、深刻な病気が潜んでいる可能性もあり、初めの評価に注意が必要です。

今回は、腰痛を訴える患者に対する初期対応として考えるべきことをまとめます。

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腰痛の診断的トリアージ

1 重篤な脊椎疾患が潜んでいないか

脊髄

腰痛を訴える患者において、まずは重篤な脊椎疾患(腫瘍、炎症、骨折など)や非脊椎疾患(内蔵由来、血管由来、心因性)を見逃さないことが大切です。

そこで初回の評価で、病歴の聴取や理学的検査により、次の3つの診断的トリアージを行います。

  1. 重篤な脊椎疾患の合併が疑われる腰痛
  2. 神経症状を伴う腰痛
  3. 非特異的腰痛

例えば、腰痛以外に次のような症状や既往歴が危険信号(レッドフラッグ red flag)として指摘されています

  • 20 歳未満または 55歳を超えて症状出現
  • 最近の激しい外傷歴
  • 一定で進行性の非機械的な疼痛(安静時に軽減しない)
  • 胸部痛
  • 悪性腫瘍の既往歴
  • ステロイド剤の長期使用
  • 薬物乱用
  • 免疫抑制
  • ヒト免疫不全ウイルス
  • 全身的な体調不良
  • 原因不明な体重減少
  • 広範な神経学的症状(馬尾症候群を含む)
  • 構造的変形
  • 発熱など

*Royal College of General Practitioners, Chartered Society of Physiotherapy, Osteopathic Association of Great Brain, British Chiropractic Association, National Back Pain Association: Clinical Guidelines for the Management of Acute Low Back Pain. Royal College of General Practitioners, London, 1996 and 1999. より

これらの項目にあてはまる患者であれば、「その可能性もあるかも…」と頭に置きながら慎重に評価を進めます。場合によっては、医師の判断を仰ぐ必要があるかもしれません。

2 神経症状はないか

次に神経症状では、急速に進行する明らかな筋力低下を伴う神経脱落症状膀胱直腸機能障害の有無を確認します。

以下の点があれば神経根障害を疑います

  • 片側の下肢痛が腰痛よりも強い
  • 足部や足趾に放散する疼痛
  • 髄節レベルに一致する痺れと感覚麻痺
  • 下肢伸展挙上テスト陽性

腰痛診療ガイドライン2012 より

腰痛診療ガイドライン2012

原因の明らかな腰痛(特異的腰痛)の種類(腰痛診療ガイドライン2012より)

3 腰痛の85%は原因不明

上記したような重篤な脊椎疾患が疑われるレッドフラッグや神経根障害を有していない腰痛は、非特異的腰痛とされ(明らかな原因が不明)、全腰痛のなかで約85%を占めるといわれています。

非特異的腰痛には、身体的要因(筋・筋膜性、椎間板性、椎間関節性、仙腸関節性など)に加え、心理・社会的要因精神的要因などが複雑に絡んで症状を形成しているといわれます。

そこで腰痛の治療には、運動療法や徒手療法、薬物療法、認知行動療法、カウンセリングなどさまざまな方法を組み合わせた集学的アプローチが行われます。

まとめ

腰痛を訴える患者に対峙したとき、まずは非脊椎疾患や重篤な脊椎疾患が潜んでいないかを確認するために、病歴やレッドフラッグに注意を払います。

次に構造的問題(退行変性、脊柱管狭窄、椎間板ヘルニア、分離症など)の有無と、
その構造的問題が現在の症状にどの程度影響しているのかを考えます。

そのうえで、セラピストによる対応によりどこまでの改善が見込めるのか(機能的問題がどの程度症状に影響しているのか?)、
あるいは服薬や外科的処置が優先されるべきなのかを判断します。

セラピストの立てた仮説と、その検証作業によって、すこしでも「アレ?なんかおかしい…」と思うことがあれば、いつでもレッドフラッグの可能性に立ち戻ることが大切です。

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