今回のセミナーでは、迫田哲平(迫田病院 大腸肛門センター外科部長)様より、
「朝からなんですが、お尻は健康ですか?」と題するご講演をお聞きしました。
主に次のような内容でした。
- 情報にだまされない
- 健診、人間ドックの活用法
- 便秘とお尻のいい関係
私たちはふだん、病気や治療に関するさまざまな情報に触れていますが、それらは必ずしもエビデンス(医学的な根拠)が明らかにされているものばかりではありません。
情報を正しく活用する〜検診の心がけ〜
自分で自分の健康を守っていくためには、正しい情報を集め、積極的に活用していく心がけが大切です。
それは検診や人間ドックといった予防医学においても同様です。
検査の結果は、100%正しいというわけではありません。
なぜなら「本当は陰性なのに、誤って陽性と判定してしまう=偽陽性(ぎようせい)」や、
反対に「本当は陽性なのに、誤って陰性と判定してしまう=偽陰性(ぎいんせい)」の
可能性もゼロではないからです。
また結果を知っても、生活習慣の改善が伴わなければ、検査を受けるメリットは少なくなります。
迫田先生いわく、
どの疾患とリスク因子に対して、何を用いて検査するかによって、利益と不利益のバランスが異なる
ということを理解して臨むのが大切とのことでした。
たしかに、「自分のどんな体調変化や潜在的なリスクがあるのかを知ろう」、「結果をもとに生活習慣を見直していこう」とする積極的な姿勢が必要ということですね。
そうすると、「自身の健康指標として積極的に活用する」、
「生活習慣の改善もあわせて行う」、
「検診専門医の診察を受けて助言を仰ぐ」 などのアクションを起こすことができます。
便秘とお尻のいい関係
「便秘」の事実
お尻の健康を考えるうえで、「便秘」のことは外せません。今回の講話では次のような事実を学びました。
- 便秘の傾向として、男性よりも女性で多く、高齢者で多くなる
- 便秘があると、痔になりやすい
- 下肢静脈瘤を生じやすい
- 生命予後が悪化しやすい
- 大腸がんと関係する
- 「便秘がある」という自覚があるだけで、大腸がんの危険因子になる
- 子どもの便秘は成人の便秘に移行しやすいため、早めに適切な介入をするのが望ましい
- 機能性便秘のなかに過敏性腸症候群(IBS)が含まれる
正しく知っていると、ふだんの生活習慣に気をつけたり、日頃の体調変化時に早めに病院受診したりすることができますね!
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)
一般の人の10〜15%程度がそうだといわれるIBSは、機能性便秘(大腸の働きの異常が原因で起こるもの)の多くを占めています。
IBSは、
お腹の痛みや調子がわるく、それと関連して便秘や下痢などのお通じの異常(排便回数や便の形の異常)が数ヵ月以上続く状態のときに最も考えられる病気です。
もちろん、大腸に腫瘍や炎症などの病気がないことが前提になります。(日本消化器病学会ガイドラインより)
不安や緊張といったストレスがかかると、腸の収縮運動が激しくなったり、痛みを感じやすい知覚過敏状態になったりします。
そのため強いストレスがかかる場面、例えば、仕事中、会議中、面接中、授業中、テスト中、出社中、登校中などに症状が出やすいとされます。
また真面目な人や内向的で気が弱い人、情緒不安定な人、うつ傾向の人、20代の若い女性または30~40代の働き盛りの人などがかかりやすいとされています(すこやかネットより)。
IBSの種類には、下痢型・便秘型・交代型があり、診断基準として以下のような「ローマⅢ基準」があります。
- 最近3ヵ月の間に、月に3日以上にわたってお腹の痛みや不快感が繰り返し起こり、次のうち2項目以上に該当する
- 1)排便によって症状がやわらぐ
- 2)症状とともに排便の回数が変わる(増えたり減ったりする)
- 3)症状とともに便の形状(外観)が変わる(柔らかくなったり硬くなったりする)
「便秘くらいで…」と放置せずに、きちんとした診断をうけ、必要な治療や生活習慣の改善を行うのが大切ですね。
また自身の腸内フローラを検査する方法−Mykinso(マイキンソー)もあり、健康生活に役立てられます!
本日は健康生活に大切なお腹やお尻のお話でした。迫田先生、ありがとうございました。
*本記事内容は、3月27日宮崎市倫理法人会モーニングセミナーでのご講演内容を参考にしています。