人生最高の時期を引き伸ばし、年齢を重ねても明晰な頭脳と疲れ知らずの肉体を保てる。
生活の質を最大限に高め、幸福度を増し、慢性疾患の発症リスクを下げられる。
自らの内なるスパークを活用することが、身体的・知的・精神的な潜在能力を引き出す鍵となる
そう言うのは、『脳と身体を最適化せよ!「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』の著者であるモリー・マルーフ医学博士です。
ここで呼ばれる「スパーク」とは、体を動かす電気エネルギーであり、それは一つひとつの細胞から生み出されます。
明晰な頭脳、疲れない肉体、若々しさは「ミトコンドリア」を活性化させることで得られる
クリアな思考や集中力を発揮する頭脳、活力ある毎日を過ごす疲れ知らずの肉体、そして病気知らずで長生きする。
誰もがそんな理想の自分を手に入れたいと思いますよね。
でも実際は、こなさなければいけないタスクや家事、時間に追われる日々のなかで、身体は疲れ、精神的にもストレスを抱え続けているのが現状ではないでしょうか。
ではどうすれば、脳の身体のパフォーマンスを最大限に発揮して、健康長寿を全うできるのでしょう?
その鍵は、細胞の「エネルギー」にあります。
細胞レベルで生み出される「エネルギー容量」が十分であれば、日々の仕事や家事、遊びなどの生活に高いパフォーマンスを発揮できます。
一方で、エネルギーが不足すれば、“いつも疲れている”、“集中力が欠けている”、“孤独感が増し、幸せを感じられない”、“慢性疾患を患いやすい”などのリスクが高まります。
そうした私たちの脳と身体の活動の源となるエネルギーは、「ミトコンドリア」で生み出されます。
ミトコンドリアは、細胞の中に存在する小さな器官の一つで、エネルギーを産生し蓄える、いわば“バッテリー”であり、また全身の筋肉や臓器にエネルギーを受け渡す“コンデンサー”の役割も果たしています。
ミトコンドリアの機能を高め、エネルギー容量を満たすことが、脳と身体のパフォーマンスを高め、健康長寿を実現させます。
そこで今回は、『脳と身体を最適化せよ!「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』より、生理学や生化学にもとづいた「ライフスタイルの最適化(=バイオハック)」についてご紹介します。
中でも著者が“これが最強のバイオハックだ”という「身体活動」、「運動」の章をピックアップします。
こんな方にオススメ
- 疲れ知らずの身体で、仕事やプライベートを充実させたい。
- アイデアや集中力を発揮して、クリエイティブに活動したい。
- 忙しい毎日でも効率よく疲れやストレスを解消したい。
- いつまでも若々しく、健康的に長生きしたい。
脳と身体、長寿に効く!運動のすごいメリット
“運動はまさに奇跡のツール”であり、“運動こそ最も安上がりで、最も効果的なバイオハックだ”と著者はいいます。
実際に、運動はストレスを軽減し、筋肉や骨を強化し、可動性を高め、エネルギーを増やす。定期的な運動によって身体的健康はもちろん、気分の向上から社会的関係、自信、感情コントロールの改善まで多くの効果があると明らかにされています。
というのも、筋肉にはミトコンドリアが豊富に存在しているため、運動して筋肉を強化すると、バッテリーパックを再充電しながら、新しいバッテリーパックを作っているような状態になるから。
さらに運動によってオートファジー(死んだ細胞の除去)やマイトファジー(損傷したミトコンドリアの除去)が活性化し、老廃物の排出が促されます。
そうすることで新しい細胞に生まれ変わる新陳代謝が盛んになり、見た目にも、身体機能にも若々しさが保たれます。
しかも運動は、脳の働きも良くします。
運動することで、脳内で神経細胞のネットワークを強化する「脳由来神経栄養因子(BDNF)」の放出が増え、認知力が高まります。
また記憶や認知を司る「海馬」への血流が増え、記憶力や学習力が高まる、気分が安定しストレスに抗う、認知症を発症するリスクが低下するといった脳の若さを保ってくれるのです。
いかがでしょうか。
そんな数多くのメリットを聞くと、体を動かしたくなってきませんか?
“体力に自信がないから”、“何から始めたらいいかわからない”と躊躇する必要はありません。
今のあなたの運動能力や経験のレベルがどうであれ、何かしらできることがあるはず。
例えばまず10分間歩く、自室で腹筋運動や腕立てふせといった基本的な運動でも十分。
とにかく「体を動かす」ことで、誰でも、先にあげたような身体と脳へのすばらしい恩恵を得られるのです!
続いて、どのような運動をするのがより効果的なのかを詳しくみていきます。
ミトコンドリアの機能を高め、エネルギーあふれる身体をつくる「運動」の3ステップ
運動による心身の活力や長寿効果を十分に得るために、米国ガイドラインでは以下の3点が推奨されています。
- 1日を通してもっと身体を動かし、座っている時間を減らす
- 週に最低150分から300分、中強度の有酸素運動をする
- 週に2日以上、すべての主要筋肉群を使う中強度以上の筋力トレーニングを行う
それぞれ詳しくみていきましょう。
1日を通してもっと体を動かし、座っている時間を減らす。少しの身体活動であっても、まったくしないよりは絶対に良い。
これから運動を始めようと思ったら、わざわざジムに通わなくとも、すぐに身体を動かすメリットを得る方法があります。
まずは、ふだんの生活で座っている時間を短くし、せかせかと動き回ることです。
デスクワークをしたり、テレビや動画を見たりすると、あっという間に1時間、2時間と経過してしまいますよね。
しかし「座りっぱなし」の生活は、肥満やメタボリックシンドローム、糖尿病、うつや不安症、心疾患、がんなどのリスクを確実に高めます。
座りっぱなしによる悪循環を断ち切り、体を動かすメリットを享受する。それが、「非運動性活動熱産生(NEAT:Non-Exercise Activity Thermogenesis、ニート)」です。
NEATとは、スポーツやランニング、ウェイトトレーニングなどの目的をもった運動を除いた、日常のあらゆる活動に費やされるエネルギーのことを指します。
NEATはただ歩き回ったり、バスを捕まえるために走ったり、庭仕事をしたり、掃除したり、子どもと遊んだりなど、とにかくせかせかと体を動かすだけで達成されます。
こうした活動は、“チリも積もれば〜”のごとく、1日を通してかなり積み上がっていきます。
あなたがどれくらい“活動的な”一日を過ごしているか(1日にどれくらい動きまわっているか)を正確に把握するために、活動量計などを使って、「歩数」をモニタリングするのがオススメです。
歩数からみた活動レベルの目安として、著者は以下のような分類を示されています。
・座りっぱなし:1日5,000歩未満
・活動が少ない:1日5,000〜7,500歩
・活動的:1日7,500〜1万1,000歩
・非常に活動的:1日1万1,000歩以上
NEATの効果をさらに高めるコツとして、家事や移動のために歩くことを「これは運動だ」と考えるようにしましょう。
いつも同じようにやっている行動であっても、なんとなくこなしているのか、「これは運動だ」と認識してやるのかによって、実際により高い効果が得られます。
今日の生活から、ぜひ意識してみてくださいね!
週に最低150分から300分(5時間)の中強度の有酸素運動を行う
活動的な生活が板についてきたら、運動時間を伸ばしていきましょう。
「週に150分の運動」をするだけで、まったく運動しない人と比べて早死にするリスクを31%低減できることがわかっています。
週に最低150分(2時間30分)から300分(5時間)の中強度の有酸素運動、または週に75分(1時間15分)から150分(2時間30分)の高強度の有酸素運動を取り入れたいところ。
さらに、1週間を通して強度が異なる運動を組み合わせると望ましいとされます。
ミトコンドリアを強化し、健康増進につながる運動のオススメは「有酸素運動」です。
有酸素運動は、ウォーキングやジョギング、エアロビクス、サイクリング、水泳など、長時間継続して行う運動のこと。
持続的に体を動かすことで、心肺機能が活発に働き、適度なストレスによってミトコンドリアの活性化につながります。
さらに健康効果を高めるには、週に2日以上、すべての主要筋肉群を使う中強度以上の筋力トレーニングを行う
活動的な生活を送り、有酸素運動が習慣になってきたら、より筋肉や骨格に負荷をかける「ウェイトトレーニング」にも挑戦してみましょう。
重りや抵抗を用いて行うウェイトトレーニングは、骨格や筋肉に負荷をかけ、最大筋力や俊敏性、筋持久力などの体力要素を向上させます。
また筋肥大や骨密度の増加により体組成を変化させる効果も高いです。
筋肉にはミトコンドリアが豊富に存在します。ウェイトトレーニングで筋肉に適度なストレスを加えることで、ミトコンドリアの機能が活性化し、全身にエネルギーが満ち溢れます。
身体を支える骨格や筋肉を強く維持することで、「フレイル」や「サルコペニア」「ロコモティブ・シンドローム」といった加齢に伴う体力低下や筋萎縮、移動能力の低下を予防することができます。
とくに女性は、男性と比べて筋肉量の割合が低いうえに、骨粗鬆症のリスクも高まります。ですので、できるだけ早くから骨密度や筋肉量を維持するトレーニングに積極的に取り組むのが肝心です。
この先、人生の晩年に、自分の脚で立ち上がり、好きなように行き来できるかどうかが、あなたの筋肉、今のトレーニングにかかっています。
いまは自宅にいながら、都合のよい時間にオンラインで受けられるレッスンも豊富なので、そちらを活用するのもいいですね。
最適な“運動の激しさ”を把握する
運動による健康効果を高めるには、“どれくらい激しく運動したか(=運動強度)”にも気を配る必要があります。
適切な強度を把握しながら運動を行うことで、より効果的に、運動による恩恵を得ることができます。
運動強度の目安には、以下の表が参考になります。
心拍数から運動強度を把握する方法
より正確に運動強度を把握するには、スマートウォッチなどを使って運動中の「心拍数」をモニタリングするのがオススメです。
心拍数を基準にして、運動強度を把握する方法には、まず「220ー年齢(歳)」の式より、あなたの「予測される最大心拍数」を算出します。
次に、最大心拍数の割合によって、運動強度を導きます。
- 中強度の運動:最大心拍数の50〜70%
- 高強度の運動:最大心拍数の70〜85%
あなたが35歳なら、予測最大心拍数は185。最大心拍数の50%は92、同じく70%は129、85%は157となります。
心肺機能の向上やメンタルヘルス、長寿効果を十分に得るには、最大心拍数の少なくとも50〜75%にまで心拍数が上がる運動を目指しましょう。
運動を習慣化する秘訣は「気持ちよさ」
ここまでお読みいただき、運動が肉体のエネルギーを高め、メンタルヘルスや脳機能、健康寿命の改善に効果的だとかはわかっていても、なかなかそれを継続するのが難しいと思われる方もいるでしょう。
とくに運動を始めたばかりの時期は、それほど気分も上がらず、むしろ疲れや筋肉痛、体力の消耗を感じるかもしれません。
しかし運動を続けることには、それだけの大きな価値があります。
自分のペースでかまわない。まったく運動しないよりは少しでも運動する方が良いと肝に銘じよう。
運動は、目先の効果だけにとどまらず、健康寿命を伸ばし、エネルギー・体力・可動性を高め、健康寿命を伸ばすといった先々の効果も期待できる素晴らしいバイオハックだ
と、著者は締めくくっています。
運動を習慣化するには、とくにやり始めには、トレーニングのつらさだけではなくて、トレーニングした後の「気持ちよさ」にも目を向けるようにしましょう。
- 好きな音楽を聞きながら歩く
- 自分が楽しめるエクササイズから始める
- 一緒にトレーニングする仲間を見つける
- 自宅から通いやすいジムのクラスに参加する
など運動するハードルをグッと下げる(自宅のまわりを1周歩くでもOK)。そしてそれをできた自分を自分で褒めてあげましょう。
運動によって筋肉や心肺・血管系に負担をかけた後は、適切な栄養と休息によるリカバリーを確保。とくに筋肉や臓器の材料となる「タンパク質」を豊富に摂取し、十分な睡眠をとるように心がけましょう。
むすびに(感想とアクションプラン)
今回は、『脳と身体を最適化せよ!「明晰な頭脳」「疲れない肉体」「不老長寿」を実現する科学的健康法』より、生理学にもとづいたライフスタイルの最適化(=バイオハック)。なかでも「身体活動」「運動」にスポットをあててご紹介しました。
「運動が体にいい」のは重々承知のうえでしたが、本書を読んで改めて、元気に動ける肉体・体力(心肺機能と筋力)と、脳の若さと認知症予防、そして健康長寿のために、運動が果たす偉大なメリットを再認識しました。
仕事や子育て、その他もろもろの生活であっという間に一日が過ぎていくのですが、その土台となる身体が損なわれてしまっては、元も子もありません。
いま抱えている課題をこなす、将来のために備える、そして今やれる楽しさを味わう。
いずれにしても、身体が健やかで、メンタルが落ち着いていてこそ、賢明な判断ができ、フットワーク軽く行動できます。
そうした「エネルギー」は、外から与えられるものではなく、私たちの細胞に備わる「ミトコンドリア」を活性化させることで可能になります。
やりたいこと、好きなことを長く続けるために、何としても体を動かす時間を確保したいと思える内容でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
今回ご紹介した内容にご興味あれば、ぜひ実際に本書を手にとってすべての内容をご確認ください!