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脊柱の機能解剖・運動学まとめ|「生理的わん曲」の真意|理学療法士が解説

こんにちは、大山ふみあき(@ThanksDailylife)です!

 

加齢や運動不足、生活様式の変化(座位時間が長い)に伴って、腰痛症状や脊柱病変をもつ患者が増えています。

リハビリの現場でも以下のような疾患で痛みや運動能力の低下、日常生活の制限などの問題に対峙しています。

  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 腰椎圧迫骨折
  • 脊柱管狭窄症
  • 変形性腰椎症
  • 腰椎分離症
  • 腰椎すべり症

 

この記事は、脊柱の機能解剖・運動学

とくに「生理的わん曲」について、その形態と運動機能の関わりについてまとめます

 

若手の理学療法士やこれから理学療法士を目指す方、専門的なことを知りたいという一般の方に読んでいただければ嬉しいです。

*一般の方でも読みやすいように、ここでは脊柱を「背骨」と表記しています。

 

  • なぜ背骨はS字に曲がっているのか?
  • 背骨がひとの動きにどれほど重要な働きをしているのか?

がわかると、腰痛解消や効率のよい体の使い方を身につけるのに役立ちます。

またスポーツをする方は、全身をうまく使えるようになりパフォーマンスアップにつながります。

【要点】ひとの姿勢・動作における背骨の働き

ひとが姿勢を保ち、目的とする動作をおこなううえで、背骨は次のような重要な役割を果たしています。

  1. 姿勢の「屋台骨」を支える
  2. 動作に必要な「チカラの源(エンジン)」となる
  3. 「固定源」として手足の土台となる
  4. 反作用力を緩衝し、外力から身体を保護している

では、それぞれ順にみていきます。

Part 1:姿勢の屋台骨を支える

「生理的わん曲」が超重要

背骨は頭からお尻まで体の中心を貫き、姿勢の形態を決めるのに重要な要素となっています。

背骨の形状は正面からみると直線ですが、側面からみるとアルファベットの「S字カーブ」をしています(下図)。

このS字カーブは「生理的わん曲」と呼ばれる、背骨の働きを理解するキーポイント。

 

生理的わん曲は、生まれてから成長にともなって徐々に完成されていきます。

赤ちゃんは丸まった姿勢をとり、大きな一つだけのカーブ(アルファベットの「C」)ですが、立って歩くころにはS字カーブができあがります。

 

生理的わん曲は、次の3つから構成されます。

  • 頸椎の前弯
  • 胸椎の後弯
  • 腰椎の前弯
背骨は正面からみると直線、側面からみるとS字カーブの形状をしている。S字カーブは、頸椎前弯、胸椎後弯、腰椎前弯という3つの生理的わん曲で構成される。

そもそも背骨は一本の棒ではなく、24個の椎骨(ついこつ)ー頸椎7つ、胸椎12個、腰椎5つーが連なった構造をしています。

それぞれの椎骨がつながる箇所には椎間関節(ついかん かんせつ)があり、この関節のおかげで自由に形を変えることができます。

今のあなたの姿勢は“努力の賜もの”

ひとの体は、頭と胴体だけで全体の6割超の重量があり、これを支えなければいけません。

そこで背骨の生理的わん曲によって体重をうまく分散し、体の1ヶ所に負担が集中しないようにしているのです。

 

つまり今のあなたの姿勢は、“背骨がどのように体重を受け止めてきたか”という努力の賜もの。

 

また重力に抗して姿勢を保つうえでも、背骨が重要な働きをしています。

3つの生理的わん曲があることで、直線形の場合と比べて、10倍の抗力(圧力に対して原型を保つ働き)を発揮。

わたしたちが地球上の重力に負けずに生活できているのは、まさしく背骨の弯曲のおかげです。

ふだんの姿勢が「動きやすさ」を決める

動きだしの姿勢(開始肢位)によって、パフォーマンスがまったく変わります。

例えば、ダラッとした立位姿勢から歩き出すのと、しっかり姿勢を整えてから歩き出すのとでは、その後の脚の運びやすさや歩行スピードが随分と違ってきます。

これは、姿勢によって全身の筋肉の発揮する力(筋出力)や、細やかさ・円滑さ(巧緻性・敏捷性)が変化することによります。

開始肢位
動作を始める前の姿勢(開始肢位)によって、その後の動作の質が左右される。

姿勢が変化する意義

  • 猫背
  • 腰が曲がった
  • 側弯

このような背骨の変化をよく耳にすると思います。

ひとの体は普段の生活スタイルや動きのクセ、環境などに応じて最適なものに順応していきます

なので、“姿勢(見た目のかたち)がわるいからダメ”とは一概に言えません

 

実際、姿勢が変わって痛みを訴える方もいれば、そうでない方もいるのが事実。

ここが肝心!

かたち(形態)ではなく、働き(柔軟性や筋力、バランス保持能力などの機能)に注目。

体が本来の動きをしているかどうかが重要なんです。

 

例えば、こんなお腹を突き出して歩いているひとを見ることがあります。

これはお腹の重みによって体の前方の重量が増すのに対して、上半身を後方へ偏位させることで、前後の重量バランスをとった(重心を補正した)結果です。

腹部重量過多による上半身重心の後方偏位
腹部重量が過多になると、姿勢を変化させて(上半身重心の後方偏位)、前後方向の質量バランスを維持しようとする反応がみられる。

この方が本来の姿勢を取り戻すには、まずお腹の重みを軽くしてあげる(痩せる)ことを指導します。

背骨の左右の変化である「側弯」についても、原因がハッキリと解明されてはいませんが、左右の重量バランスをとろうとした何らかの変化と考えれます。

 

声を大にして言いたいのは、「姿勢が悪いから悪い(痛みの原因だ)!背スジを伸ばせ!」というのはナンセンス

姿勢変化は体が「順応した結果」です。

なぜそのような姿勢変化が生じたのか、その原因を突きとめて解消していきましょう

Part.1のまとめ

  • 背骨は、頚椎・胸椎・腰椎の3つの「生理的わん曲」をもつ
  • 生理的わん曲によって重心のバランスをとったり、重力に抗して姿勢を保ったりしている
  • 姿勢の変化は、効率よく運動するために体が順応した結果である
  • なぜその姿勢になったのか、原因を探るのが重要

Part 2:動作に必要な力の源となる

背骨から手足へ力を伝えることで動作が成り立つ

ひとの動作が成り立つには、力」が必要です。力とはエネルギー」。

物体が移動するとき、そこにエネルギー(力学的エネルギー)が働いています。

力学的エネルギーは、速さを持って運動している物体がもつ運動エネルギーと、高さなど物体の位置で決まる位置エネルギーからなります。

人も例外ではありません。

力(エネルギー)をいかにコントロールするかが、わたしたちの運動にとても重要。

そして力のコントロールに大きく貢献しているのが、背骨なんです

動作のカギは重心コントロールにあり!

「体幹トレーニング」って、最近よく耳にしますよね。

しかし体幹トレーニングとして代表的な、“ある一定の姿勢をキープする”のは不十分です。

 

カギは、重心のコントロール

効率のよい動作には、スムースな重心移動が不可欠です。

 

重心とは物体の各所に働く重力の中心点(質量中心)のこと。

ひとの立位姿勢では、重心は骨盤内に位置しています。

重心の位置

 

そして安定した姿勢から重心が支持基底面を外れることで、人は動き出すことができます

*「支持基底面」とは、体重を支えて姿勢を保持するために必要な床面積(立位姿勢では、足の裏で囲まれた範囲)のこと。
支持基底面が広いほど、物体は安定する。
同一姿勢で安定しているとき、身体重心を床面に垂直に下ろした点(足圧中心)は支持基底面の範囲内に存在する。

姿勢が変化するのにともなって、身体の各関節には関節モーメント(トルク)が発生することで筋活動が生じ、目的動作が遂行されます

つまり大前提として、こちらを押さえておきましょう。

動作=重心移動にともなう「姿勢変化の連続」

 

重心コントロールにおける背骨の貢献

さて、ここからがPart.2の本題。

重心移動をスムースにおこなうには、背骨が柔軟に動くことが必要不可欠です

なぜなら、先ほど書いたように、重心をコントロールするには、姿勢を崩しながら、かつバランスをとらないといけないから。

絶妙な姿勢制御が求められるわけです。

しなやかに形を変えられる背骨があってこそ。

 

止まったところから動き出すには、次のステップをふんでいきます。

  1. 背骨が緻密に形を変えながら重心を動かす
  2. 重心の動きに合わせて、全身の筋肉が収縮する
  3. 筋肉の収縮によって、手足の関節が動く

 

イメージしていただくと、

背骨を「力源(エンジン)」として、背骨から手足末端へ向けて“力を伝達”していく

ことで動作が成り立つということ。

 

決して腕っぷしが強いから速いボールを投げられたり、太ももを鍛えたら速く走られる、というわけではありません。

背骨をしなやかに使って手足へ力を伝えているからこそ、高いパフォーマンスが発揮されるのです。

これは、あらゆる人の動きにあてはまる大原則。

 

また指先を器用につかうような細かな動きほど、背骨の精緻な動き(姿勢制御)が必要となります。

ミリ単位の動きには、ミリ単位の姿勢制御が求められるわけです。

 

歳を重ねるにつれて、「指先がかなわなくなった(細かい作業が苦手になった)」という訴えをよく聞きます。

これは加齢によって背骨が固くなり、精緻な姿勢制御が難しくなるのが原因です。

ぼくたちのグループでは、高齢者に対して背骨の柔軟性を回復することによって、手指の敏捷性・巧緻性が改善することを確認しました。

岩下耕太朗, 大山史朗, 桑畑慶輔ほか:慢性疼痛疾患患者における体幹治療が上肢敏捷性へ及ぼす影響。臨床と理学療法 3:44-44, 2016.

 

それほど背骨での重心コントロール(姿勢制御)が動作に与える影響が大きいのです。

エネルギーを生み出すための体幹

もう一つ、背骨の働きとセットで考えないといけないことに、体幹の筋量・筋力があげられます。

 

物理の法則(力学的エネルギー保存則)でみるとよくわかるので、順に説明しますね。

力学的エネルギー = 位置エネルギー + 運動エネルギー

*位置エネルギー:質量(m)×重力加速度(g)×高さ(h):mgh
*運動エネルギー:1/2×質量(m)×速さ(v)2:1/2mv2

つまり、“より重いものが、より高いところから、より速く動くときに大きなエネルギーが発生する”ということ。

 

そこで大きなエネルギーを生み出すために「質量の多い体幹の筋量」と、「重心を素早く動かすための体幹の筋力発揮」が必要となるのです。

これが、体幹トレーニングの本質。

アスリートが認める体幹トレーニング【FLOWIN】

Part 2のまとめ

  • ひとの動きを理解するには、「力(エネルギー)」の伝達に注目すべし
  • 力は「重心」の移動から生まれる
  • 背骨がしなやかに変形することで重心をコントロールできる
  • よりこまかな動きほど、精緻な姿勢制御が必要
  • 体幹の筋量・筋力が充実しているほど、より大きなエネルギーを生み出せる

ヨガ

Part 3:「土台」として安定する

ボディとアームの関係

まず、背骨と手足の相互関係を分かりやすくするために、工事現場のクレーンのような、「ボディ」と「アーム」からなる物体をイメージしてください。

専門的には、ボディ=固定源、アーム=駆動源と呼びます。

クレーン

ここではイメージしやすいように、次のように表現します。

  • ボディ:土台として安定している部分
  • アーム:さまざまに動いて目的を遂行する部分部分(物をつかむ、運ぶ、動くなど)

 

今、止まっているアームを目的地点まで動かそうとしています(下図)。

土台となるボディが安定していれば、アームは自由に動くことができます(下図の右上)。

一方、ボディが不安定であれば目的を達せないどころか、アームの動きに耐えきれず、ボディからくずれてしまいます(下図の右下)。

 

固定源と駆動源
ボディが土台として安定してこそ、アームが機能する。

土台となる背骨

このようなボディとアームの関係を、運動学の用語でテンタクル活動(tentacle activity)といいます。

*テンタクルとは「触手」の意味

ひとの身体において手足の土台となるのは、背骨をふくむ「体幹」。

つまり、固定源(体幹)が安定してこそ、駆動源(手足)が目的の動作をなすことができる(歩く、ボールを投げる、道具を使うなど)というわけです。

テンタクル活動

ボディにも、アームにもなる背骨

「体幹はボディ、手足はアーム」と前述しましたが、背骨の機能はそれだけにとどまりません。

背骨はボディにも、アームにもなり得るのです!

 

お祭りの屋台で、こんなヘビのおもちゃを見たことがないでしょうか?

胴体を持つ手の位置によって動く分節(節目節目で分割された区画)が変わります。

 

似たように、背骨も椎骨という立方体の連なりであり、そのときの姿勢や目的動作によって、固定源(ボディ)と駆動源(アーム)が刻々と変化していきます。

例えば、立位と座位では次のような関係になります。

【立位姿勢】

  • 固定源:下肢〜骨盤・腰椎
  • 駆動源:胸椎〜上肢

【イス座位姿勢】

  • 固定源:下肢〜骨盤
  • 駆動源:腰椎・胸椎〜上肢

 

もし逆立ちでのパフォーマンスをしていれば、手から胸部までをボディとし、腰椎から足先をうまく使っていくことになります。

 

ひとの動作は、“一瞬一瞬、一コマ一コマの姿勢変化の連続”。

その一瞬の姿勢において、背骨は分節的に固定源となったり、駆動源の一部となったりしてスムースな運動を実現しているのです。

このように背骨が刻々と役割を変えるためには、固い棒のような形態では用立ちません。

背骨が柔軟に、しなやかに動けることが絶対もって不可欠なんです。

Part 3まとめ

  • 手足を自由に動かすためには、その土台となる体幹が空間上で安定している必要がある
  • 背骨が固定源になったり、駆動源になったりしながらスムースに動くことができる
  • ひとの動作において、背骨の柔軟性が超重要

 

Part 4:反作用力の緩衝機能に優れる

力を発揮するとともに、力を受け止めている

身体に働く「作用反作用の法則」

Part.2で、ひとの動作が成り立つには「力(エネルギー)」が必要だと書きました。

物理学では、体に力が働く(「作用する」)ことで、その物体が移動する(「仕事をする」ことになります。

 

ここがポイント。

物体に作用力が働くとき、物体には必ず反対方向の力(反作用力)も働いているんです。  

作用反作用の法則

これをひとの体でみると、

身体が発揮する力(作用力)=身体が受け止める力(反作用力)

言い換えると、

身体で受け止められる力の分だけ、身体は力を発揮できる

 

この力関係は、ひとのあらゆる動作ー歩く、走る、箸を使う、ボールを投げる…ーで成り立ちます。

ぼくたちが動いている以上、常に力を発揮しながら、同時に力を受け止めているのです。

 

では、体はどうやって反作用を受け止めているのか?

まともに受け続けていれば、いつか体が壊れてしまいます。

 

そこで大きく貢献しているのが、背骨なんです。

体に加わる反作用力の9割を背骨で緩衝していると言っても過言ではありません。

生理的わん曲による柔軟性が効いてくるんです。

*厳密にいえば、全身のあらゆる組織がすこしずつ緩衝している

背骨という“バネ”

生理的わん曲は、大きなバネ(コイルバネ、スプリング)を体の中心に抱えているようなイメージ。

背骨のバネ

バネには次のような「3大特性」があります。

  1. 復元力をもつ
  2. 弾性を利用してエネルギーの蓄積と放出ができる
  3. 固有振動数をもつ

*コトバンクより

 

バネの特性はまさしく、力を発揮&吸収する背骨の働きにもあてはまります。

体重を分散したり、着地の衝撃を和らげ、腕を振ったときの慣性力を受け止めたりしているのです。

背骨の緩衝機能が低下すると「痛み」がおこる

もし、この背骨の優れた緩衝機能が制限されたとしたら…

背骨が固くなって緩衝機能の低下した状態は、“バネがさびついて弾性が低下した状態”と同じ。

 

次のような機序で痛みが発生します。

  1. 何らかの原因で背骨の柔軟性が損なわれる
  2. 動作時に体に加わる反作用を完全に緩衝できない
  3. 緩衝できなかった一部の反作用力は行き場を無くす
  4. 反作用力が身体のあちこちで暴発
  5. 痛み(関節の荷重痛、筋の動作時痛)

 

実際にリハビリの現場では、姿勢の変化や背骨の固さによって緩衝機能が低下し、歩いたり階段を上り下りしたときの足腰の痛みと関係しているというケースが多々あります。

そういうケースに対応するには、患部のケアをしつつ、大元の背骨の緩衝機能を取り戻すアプローチが必要になります。

“感覚”を司る背骨

背骨が緩衝機能を果たすもう一つの要素は、背骨にはたくさんの関節(骨と骨の連結)がある、ということです。

そして背骨の関節には、姿勢を制御するためのセンサー(固有感覚受容器、レセプター)が豊富に存在しています。

 

このセンサーが姿勢制御に不可欠。

センサーがまわりの情報を得て、身体に加わるさまざまな外力(重力や反作用力)に対して、筋肉の緊張感(筋緊張)や身体バランスを調節し、適切に姿勢制御しているのです。

 

このセンサーの機能を正しくチューニングするために必要なのが、背骨を動かす体操

うまく姿勢制御がなされるので、バランスを崩したり足を躓いたりしにくくなり、転倒予防にも役立ちます。

例えばこんな感じで、背骨を中心に動かしていきます🔽

Part 4 まとめ

  • ひとの動作では、常に作用力と反作用力が働いている
  • 体に加わる反作用力を緩衝するのが背骨の働き
  • 背骨の柔軟性が低下すると、反作用力を緩衝しきれず、痛みにつながる
  • 背骨を柔らかく保つことで、痛み防止や転倒予防につながる

 

 

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