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『ホスピタリティが生まれる瞬間(林田正光 著)』書評

一流のサービスを誇るのは、なにもホテルや航空会社だけではありません。

病院も、患者さまに対しての心配りやご要望にお応えすることなどを通してサービスを向上させ、患者さまに喜んでいただくことができます。

今回ご紹介する『ホスピタリティが生まれる瞬間(林田正光著、あさ出版)は、実際に著者がコンサルタントを務めた病院で、職員と一丸となってホスピタリティを作りあげていった軌跡がつづられたものです。関わった職員の生の言葉や豊富な事例もあるので、医療関係者はもちろん、一般企業に勤める方でもサービスを向上させたいすべての働く方にオススメの一冊です。

病院でできる「ホスピタリティ」とは

「ホスピタリティhospitality」とは、狭義では

人が人に対して行なういわゆる「もてなし」の行動や考え方について触れていて、これは接客・接遇の場面でも使われるホスピタリティのことである。 主人と客人の間でホスピタリティが行き交うが、それは一方通行のものではなく、主人が客人のために行なう行動に対して、それを受ける客人も感謝の気持ちを持ち、客人が喜びを感じていることが主人に伝わることで、共に喜びを共有するという関係が成立することが必要だ。すなわち、ホスピタリティは両者の間に「相互満足」があってこそ成立する。

といわれます。さらに広義では、

社会全体に対して、その構成員である人々が、ホスピタリティの精神を発揮することで、相互に満足感を得たり、助け合ったり、共に何かを創りあげることができ、それによって社会が豊かになっていくという大きな意味でもホスピタリティは重要である。(日本ホスピタリティ推進協会ホームページより)

といわれています。

つまり、「サービスを提供する側」から「サービスを受ける側」への一方通行ではなく、双方の心が通じ合い、お互いに喜びや満足度が高まること。さらに、組織や社会にホスピタリティが波及することで、よりよい組織・社会作りにつながっていくという広がりがあるのです。

そういう意味でホスピタリティは、人の関わるすべての仕事で大切にしたい心持ちではないでしょうか。

手当て

もともと著者は、大阪にある五つ星ホテル、ザ・リッツ・カールトン大阪で営業総括支配人を務めていました。そこで、本書の主役である病院の理事長とのご縁で、コンサルタントに関わるようになりました。

始めは、職員からの抵抗や不満の声があったそうです。このときの苦心やそれを乗り切っていた過程には、胸を熱くせずして読めません。

 

著者が本書の中心で語る実践法は、「クレド」を作っていったことです。

クレド(credo)とは、

「信条」「志」「約束」を意味するラテン語で、企業活動の拠り所となる価値観や行動規範を簡潔に表現した文言、あるいはそれを記したツール

を指します(Weblio辞書より)。簡潔かつ具体的な表現を用いる点、作成や改訂に従業員が関与できる点、実務に直結する点などが、経営理念や社訓などと異なります。

この病院ではクレドを作りあげるのに、なんと13ヵ月を要しました。しかし、職員が主体となって作りあげた行動指針だからこそ、従業員の一人ひとりに浸透し、それぞれの現場で実践できるものになったといいます。

多職種

病院の収益は中央社会保険医療協議会(厚生労働省の諮問機関)によって決められた医療報酬であり、検査や治療法ごとにその値段が決まっています。そのため、質の良いサービスをしたからといって、収益に直結するわけではありません。

それでも病院がサービス向上に努めるのは、著者によると次の4つの効果が期待できるからだそうです。

  1. ブランドができる
  2. いい人材が集まり、離職者が減る
  3. 集客につながる
  4. 価格競争に巻き込まれなくなる

ブランドができると、「リッツに泊まった」という体験が人生の喜びとなり、ブランド価値が人を惹きつけるようになります。病院の場合も同じで、「私はあそこの病院にかかっている」ということを喜びに感じられれば、その気持ちが治療やリハビリにも好影響をもたらす可能性があるといいます。

業界全体として離職率が高いと言われる医療の世界ですが、サービスが向上するほど病院の理念に賛同する職員が増え、離職者が減っていきます。さらに理念が求人の際のフィルターとなって、モチベーションの高い人材が集まりやすいというのです。

口コミは集客にとって大きな影響力があります。「あそこで、こんな良いサービスをしてもらった」「あそこは、いつも良い気分にさせてくれる」といった口コミが広がることで、人が人を呼ぶ集客効果が高まります。

一般企業でいえば、質の高いサービスに対してお客様は、「あそこは高くても仕方がない」という気になります。サービスの価値がお客様に認められれば、値引き競争に巻き込まれなくなるといわれます。

コンシェルジュ

病院がホスピタリティを高める秘訣は、“(患者様や利用者様の)一つひとつのご要望に応える”ことから始まるといいます。例えば、次のようにサービス展開していったようです。

  • 「看護師さんに来てもらいたい」 →訪問看護サービス
  • 「家事みたいなことをしてくれる人がほしい」→ヘルパー
  • 「家に食事があれば」→配食サービス
  • 「おじいちゃん、おばあちゃんが昼間過ごしてくれる場所があればいいのに」→デイケア、デイサービス

ご要望に対して「それは無理です」と言ってしまえば、それまでです。しかし、患者さまが求めているのは、“肉体を治してくれる医療ではなく、心まで癒やしてくれる医療”だと思えたら、何とかしたいという気持ちになってきます。次の一文に、本書で伝えたかった著者や経営者の想いが込められているように感じました。

一人ひとりの患者さんの声に耳を傾け、無理なご要望と思えることでも、「それは無理です」と言わずに、なんとか叶えようとしてきた努力が「患者様の求める手作りの医療」につながりました(42ページより)

医療従事者と患者さまの心の交流や従業員の主体的な取り組みによって、双方が喜びを感じる「ホスピタリティ」に、心が温かくなるすてきな一冊です。

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