防げる死を防ぐ (はじめに より)
【健康の結論】本書の意図
僕の役割は玉石混淆の情報の中から医師の側が持っている科学的根拠のある正しい情報をピックアップし、一般の人にもわかりやすく提示して普及させていくことだと思っている。医療分野に足りていないPRやシステムを構築するような活動を、あえて僕のような医療の専門家ではない立場から担うことで日本の医療情報の格差を埋めていきたいのだ。(8ページ)
【心停止】7.5分に一人が心臓突然死している
突然倒れた場合は、たまたま見かけた一般の人がAEDを用いることが、心室細動を止める第一の治療法といえる。(85ページ)
わが国では、毎年約7万人(毎日200人、7.5分に一人)が「心臓突然死」しており、この数は年々増えているとのこと(総務省消防庁「平成28年版救急・救助の概況」より)。
突然の心停止の多くは、「心室細動」と呼ばれる不整脈が生じています。
心室細動とは心臓が非常に速く、かつ無秩序に震えている状態で、心臓のポンプ機能を果たさないため全身に血液を送り出せなくなります。
心室細動を起こした場合、数秒で意識を失い、迅速に治療しなければ死に至ります(MSDマニュアル家庭版「心室細動」より)。
*参考:日本AED財団ホームページ
心臓突然死を防ぐためにできること
突然の心停止から一般の人が救命のためにできることは、次の3つ⏬
- 119番通報(救急車を呼ぶ)
- 胸骨圧迫(心臓マッサージ)
- AEDによる電気ショック
このうち、119番通報をして救急隊の到着を待っていたのでは9.2%の人しか救命できません。
しかし「胸骨圧迫」をすることで16.1%、さらに「AED」を用いた電気ショックが行われることで54.0%の救命率となります。
つまりAEDを利用することで、半数以上の人の命を救うことができるとのこと。
「AED」とは automated external defibrillator(自動体外式除細動器)のことで、全国の街に60万台以上が設置されています。
あなたの街のAED設置場所は「日本全国AEDマップ」から調べることができます。
電気ショックが1分遅れるごとに救命率は10%ダウン。
とにかく時間との勝負。その場に居合わせた“あなた”の行動力が求められます。
そうはいっても、人の命に関わる緊張感や上手くできなかったときの恐怖が先立って、アクションを起こすことに躊躇しますよね。
著者は次のように背中を押してくれています。
AEDによる救命は、みんな不安をもって当たり前だし、それでも行動を起こすことに価値がある。
リスクをとっても、命が助かる確率を増やす行動は素晴らしい。(88ページ)
AEDの使い方もふくめた救急処置法は一般向けに講習なども行われているので、日ごろから受けておきたいですね。
【脳卒中】「6時間以内」に治療できるかどうかがカギ。初期症状を見逃さない!
がんや心臓病に次いで、死因の第3位にあがるのが「脳卒中」です。
「脳卒中」は主に脳の血管が詰まる「脳梗塞(のうこうそく)」、血管が破れて出血する「脳出血」や「くも膜下出血(くもまくかしゅっけつ)」の総称。
わが国の脳卒中患者数は約150万人であり、高齢化や生活習慣病の影響で2025年までに300万人を超すと推計されています。
さらに命が助かったとしても、「寝たきり」の原因の約3割が脳卒中の後遺症によるものだとされます。
初期症状の発見・早期治療が脳卒中を防ぐカギ
脳卒中による突然死や後遺症を防ぐには、いかに初期症状を見逃さず、早い段階で治療に着手できるかが勝負。
脳梗塞は発症後4時間半以内に血栓を強力に溶かす「t-PA」を投与できれば、回復する可能性がある。
それでよくならない場合は、6時間以内であれば、血栓をカテーテルで直接取り除く血栓回収療法が行える。(136ページ)
注意が必要なのは脳梗塞の場合、一過性脳虚血発作(TIA)といって、一時的に症状が現れて消えることがあります。
しかし原因となる血管の病変は残ったまま。
次のような初期症状がみられたら脳卒中が疑われるため、速やかに病院を受診しましょう⏬
- 頭痛・・・突然の激しい頭痛。嘔吐を伴うこともある。
- 手足の異常・・・突然の半身の脱力、しびれ
- 視野の異常・・・片目が見えない、視野が半分になる
- バランスの異常・・・バランスがとれず、うまく歩けない
- 言葉の異常・・・ろれつが回らない、言いたいことが言えない、書けない。見聞きした言葉が理解できない。
今すぐ「脳卒中予備軍」から抜け出そう!
多くの脳卒中は生活習慣が大きく影響しているため、普段から健康な人には起こりにくい。
「脳卒中予備軍」といわれる人の危険因子が明らかになっているので、自分が該当するものを減らしていけばある程度予防できる。(142ページ)
脳卒中の引き金には生活習慣があるため、「脳卒中予備軍(脳卒中になりやすい人)」の傾向=危険因子を把握して、それらを取り除いておくことで対策できるといいます。
脳卒中の危険因子には次のようなものが明らかにされており、実際に発症する人はこれら複数の危険因子を持ち合わせている人が多い。
「高血圧」「糖尿病」「高脂血症」「心疾患」「たばこ」「過度な飲酒」「肥満やメタボリックシンドローム」「家族や親戚に脳卒中の病歴がある」(144ページ)
「くも膜下出血」は働き盛りの30歳台、40歳代の人にも起こりえるので、「自分はまだまだ若いから大丈夫」などと安心はできません。
健康な人でもMRI検査をすると約3%に脳動脈瘤が見つかるとされ、家族や親戚に動脈瘤やくも膜下出血の経験者がいて不安だという人には「脳ドック」を受けておくのもよいといいます。
むすびに
いかがでしょうか?
「突然死」や「寝たきり」と聞くと、恐ろしい病気だと認識されるでしょう。
しかし医学の発展や情報の普及によって、心停止後の救命率が向上したり、予防策が明らかとなったりしています。
今回は「心臓突然死」と「脳卒中」を取り上げましたが、その他にも「メンタル不調と自殺」「大腸がん」「子宮頸がん」「歯周病」など、正しい知識と検診、予防法を知るのに最適な一冊です。
本書で書かれている病気と対策法は、正しく知っていれば予防できる、というものがほとんど。
自分自身やまわりの大切な人を守り、健康寿命をまっとうするためにも、情報を見極める意識と行動(生活習慣)を大事にしたいですね。
本記事が、あなたのより良い生き方に貢献できれば幸いです。
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