「死んでしまいたい」と思うほど自分を責めるのは、君が正しい生き方を強く求めているからだ。
人間ってものの、あるべき姿を信じているからからだ。(文中)
本書を読んでまず思い出したのは、自分がこれまで生きてきた中での苦い思い出の数々でした。
嘘をついたこと、本当のことを正直に告白しなかったこと、人を泣かせたこと、裏切ったこと、誤らなかったこと、勇気を出して行動しなかったこと、主張せずに多勢に流れてしまったこと…解決されずに心に仕舞ったままのこともあります。
それでも、だからこそ、前に進むこと、次の一歩を踏み出す勇気を奮い立たせてくれました。
原作は、吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』で、1937年に出版された歴史的名著です。
今年になり漫画版が出たことで、改めて注目されました。
ストーリーは、戦前の旧制中学生の物語を通して、叔父さんとの対話(手紙のやり取り)で進みます。主人公は、“コペルニクス的転回”をしたことで、叔父さんから「コペル君」と呼ばれます。
大勢の人間社会の中でみれば1人の人間は小さな存在ですが、誰1人として欠けることなく連綿とつながっています。(コペル君に言わせると、「人間分子の関係、網目の法則」。その後叔父さんから「生産関係」と教えられますが^^)
それでも人はよく、自分中心で物事を考えがちです。行動する前に損得を計算したり、人からどう見られるだろうと躊躇したり、自分の考えが正しいと思い込んでいたり…そんなときは、心の痛みや苦しさを味わうのかもしれません。
文中で、体の痛みを例に挙げ、風邪をひいたり、体のケガを負ったりしたとき、初めて健康の有り難さを痛感します。それまでの自分の不摂生を反省したりもします。同じように心が感じる苦しさも、私に正しく歩く道を示してくれているのかもしれません。
ではここまで書いてきたような心の葛藤や決心は、自分の中だけで完結してよいのでしょうか。文中では、フランス革命後の混乱を鎮め、皇帝にまで君臨した軍人ナポレオン(コトバンク)を取り上げて、「偉大な人間」について次のように語られています。
人類の進歩と結びつかない英雄的精神も空しいが、英雄的な気魄を欠いた善良さも、同じように空しいことが多いのだ。
自身の心が善良であるだけではなく、自らの行動を世間に役立てる、社会に貢献することで進歩があると言われている気がします。
「すべての悩みは人間関係の悩みである」と提唱する心理学者アドラーの教えとも通ずるところがあるように思います。
岸見 一郎,古賀 史健 ダイヤモンド社 2013-12-13
人間関係の悩みの背景にはまず、私がどう生きるのか、どう在りたいのかという自分の考えが存在しているのではないでしょうか。
己の中心を貫く一本の軸があるのかどうか。
どんな社会貢献と自己実現を果たしていくのか。
一度考えるのをやめてごらんよ。
変えられないことを考えるのをやめれば、
余計な感情に足をとらわれない。
いま自分がしなければならないことに、
真っ直ぐ向かっていける。
同じ間違いを二度繰り返しちゃいけないよ。
今自分が感じていること、考えていることに正直になる、行動に移す。
苦しさから目を背けずに、その奥にある真実を探求していこうと思えます。
君たちはどう生きるか。
自分の生き方を決定できるのは自分だけだ。
あなたも私も、自らの人生から問いかけられています。
漫画版では、コペル君の表情を通して心の動きがありありと想像されるので、読み始めやすいですよ!
最後までお読みいただきありがとうございます。