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リーダーとして悩んだら読みたい!『育てる力 栗山英樹「論語と算盤」の教え』<読書評>

本書は、プロ野球日本ハムファイターズの栗山英樹監督が、歴史的名著『論語と算盤』の教えを生かして強いチーム作りや選手育成をしていく考えが書かれています。紹介される『論語と算盤』の教えは、「論語(=道徳)と算盤(=利益)は一致すべきである」という方針を軸として、つまりは「どう生きるか」を問う指南書となっています。この教えが強い組織作りや活躍する人材育成に最適であると理解できます。

異色の経歴でプロ野球選手になり、病気と戦いながら選手生活を送った栗山監督。その現役時代のエピソードや葛藤の過程を読むと、野球への一途な想い、並々ならぬ努力が伺えます。きっと読んだあなたの胸を、明日への希望で熱くする一冊です。

あなたに読んでほしい!

あなたが次のような立場や考えにあれば、本書を読むと、自分の進む道やリーダーとしての決断を後押ししてくれるものと思います。

  • チームを率いるリーダーや部署を預かる管理職
  • 新年度となり、新入職員や若手の教育や指導法に悩む方
  • 社会に出たばかりで、これからどう志を立て、自分の道を歩いていこうかと模索している方
  • 歳を重ねても、自分を磨き続けたいと意気込む方

こんな本!

栗山監督は指揮をとるチームの選手一人一人に『論語と算盤』を手渡し、読むように奨められています。栗山監督の言葉を借りれば、“本を読むことは、すなわち自分を作ることだ。そこにある哲学や経験を自己の行動に反映することができる”からです。厳しいプロの世界で結果を出すために、いかに自分の肉体、精神、知識、知恵を磨いていくのか。そして何より野球選手である前に、一人の人間として成功してほしいという願いが込められています。

チームとして結果を出すためには、やはり選手一人一人がプロフェッショナルとして強みを発揮しながら、チームに貢献する役割を果たしていくことが大事です。一人一人が強みを発揮するために、リーダーは各自の特徴を把握したうえで、その本領を引き出すコミュニケーションや決断が求められます。

本書ではリーダーが大切にすべきこととして、選手とどうコミュニケーションをとり、一人一人の人格形成を促すのか。チームの勝利へ向けて頭を絞り、“決断”をくだすのか。具体的なエピソードをあげながら語られています。とくにメジャーリーグで二刀流で活躍する大谷昇平選手と栗山監督のやり取りには、魂の交流が感じられます。勝利という結果にこだわりつつ、道理にそった正しい道を歩くためにどう考えるのか、その道のりを感じて読み応えがあります。

『論語と算盤』の教え

『論語と算盤』は、明治から大正時代に約500の企業や団体の育成に関わり、「日本資本主義の父」と称される実業家・渋沢栄一の代表作です。本書で渋沢は、「経済と道徳を一致させようと、常に論語と算盤を調和させること」が大切と説きます。一見相反するような「道徳」と「利益」は一致するもので、正しい富でなければ、その富は永続することができないというのです。チームや組織においても、勝利や利益を求めるのはもちろんですが、その背景に道徳を守り、道理に沿ったスタイルでなければ永続する組織作りはできないということなのでしょう。

『論語と算盤』の教えをチーム作り、人材育成に生かす

栗山監督が選手に言葉をかけるとき、次のように心がけているそうです。

(選手と話すときに)フラットな心で語り掛けることが、物事の核心をストレートに伝える秘訣だと考えている。〜 私がどう思われているのかもたいした問題ではない。好かれていようが、嫌われていようが、そんなことはどっちでもいい。大切なのは、向き合った相手に真摯であり、ごまかさずに伝えるべきことを伝える、ということ。言葉で、選手たちに戦うため、戦う自分を築くための覚悟を強いることができる。

“語る言葉が未来を創る”といいます。だからこそ向き合う相手には、心を開いた言葉で、物事の核心を伝えたいと思うのです。私はこれまで、思うこと言いたいことの半分も伝えられていませんでした。それを口にしたときの相手の反応や心情、自分が嫌われることへの恐れから、率直に意見を述べることを避けていました。しかし、それでは真に相手と心からぶつかり合って、意志疎通を図ることはできません。チームとして目指す境地がある。そのために上辺の付き合いではなく、心と心でぶつかることで、強い絆や繋がりを築いていきたい。栗山監督の魂の込められた言葉の数々で、そう思い至りました。

野球や選手に対する愛情溢れる私が本書でもっとも感銘を受けた箇所がこちらです。

野球は生業だと思うが、お金を稼ぐだけの手段ではない。観衆に夢を与え、社会を活気付ける。選手のプレー、勝利によってもたらされる人々の歓喜は、さまざまな人の人生を刺激し、華やいだものにする。同時に、スタジアムという夢の舞台にあってスポットライトを浴びる選手は、ときに出口を見失い、孤独の中で悩み続けることもある。
けれどもユニフォームを着て、プレイボールの号令を受けたなら、そこから逃げることはできない。「やると決めたのなら、やるしかない」のだ。一日一日を後戻りせず、歩んでいくしかない。野球のゲームには、人の世と人生の機微がある。その一景ごとには論語の教えを準えるような事柄で溢れている。

いかがでしょうか。少なからず、あなたの置かれた立場と重なる状況もあるのではないでしょうか。「人に喜んでほしい」と願って働きながらも、自身の能力の未熟さや先行きの不透明さで不安になることもあります。しかしこの舞台に立ったからには、もがきながらも自分を奮い立たせ、社会に貢献しようと、決断し、行動し続けたいものです。

野球評論家の野村克也さんも“人間的成長なくして技術的進歩なし”と著書で強く述べられています。スポーツやビジネスで成功し、長く続けていくためには、やはり人間力の向上が欠かせないと考えさせられます。さまざまな分野で共通する教えとして胸に留めておくことではないでしょうか。

 

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