こんにちは、大山ふみあき(@ThanksDailylife)です。
「我が子に精一杯スポーツをしてほしい」と願う親は多いと思います。
実際、ケガ(スポーツ外傷・スポーツ障害)をしてリハビリに来られる子の親御さんからも、次の様な声をよく聞きます。
「1週間後の試合に間に合わせてほしい」「レギュラーだから、休むわけにいかない」「人数がギリギリで、ポジションを変えて毎試合出ている」「一日3、4試合することもある」
しかし、今ここで無理をするのが本当にその子のためになるのか、一度じっくりと考える必要があります。
成長期に身体を酷使することはさまざまな弊害をきたすリスクがあります。
成長期のスポーツ外傷において、「オーバーユース」を改めることは予想以上に重要です。骨的にも完成していない身体を酷使すると、必ず将来のツケになります。保護者や指導者の期待を受けて子どもは頑張ってしまいます。 気合いと根性の美談ではなくて、何がその子の将来につながるのか、考えないと!
— ふみ (@ThanksDailylife) 2018年5月7日
今回は、成長期におけるスポーツ活動の行き過ぎについて考えます。
*成長期とは、ここでは主に、身長が急激に伸びる「第二次成長期」を指します。性差や個人差がありますが、概ね10歳前後から10代半ば頃までに該当します。この時期の骨は未熟な完成度で、レントゲンで撮影すると関節付近に「骨端線」がみられます。
健やかな成長のために適切な運動量を守る
「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(スポーツ庁、2018)」によれば、ジュニア期における運動時間について、「適切な休養日等の設定」が示されています。
- 学期中は、週当たり2日以上の休養日を設ける(平日は少なくとも1日、土日は少なくとも1日以上を休養日とする。週末に大会参加などで活動した場合は、休養日を他の日に振り替える)
- 長期休業中には、ある程度長期の休養期間(オフシーズン)を設ける。
- 一日の活動時間は、長くとも平日では2時間程度、休日では3時間程度とする
これらの指針は、成長期にある選手が運動、食事、休養と睡眠のバランスのとれた生活を送るために重要なものです。またスポーツ外傷・障害の発生の予防とも関連します。
「スポーツ医・科学の観点からのジュニア期におけるスポーツ活動時間について(日本体育協会、2017)」において、スポーツ活動時間に関する文献研究の結果が次のようにまとめられています。
行き過ぎたスポーツ活動を行うことは、スポーツ外傷・障害やバーンアウトのリスクが高まり、体力・運 動能力の向上につながらず、具体的には、休養日を少なくとも1週間に1~2日設けること、さらに、週あたりの活動時間における上限は、16時間未満とすることが望ましいということが示されている。
スポーツ活動時間が長いほどスポーツ外傷・障害の発生率が高くなり、とくに週当たり16時間を超えるとより高くなることが明らかになっています。
「青少年の野球障害に対する提言(日本臨床スポーツ医学会)」では、野球の投球数について以下のように制限することを推奨しています。
- 全力投球数は、小学生では1日50球以内、試合を含めて週200球を超えないこと。
- 中学生では1日70球以内、週350球を超えないこと。
- 高校生では1日100球以内、週500球をこえないこと。
健全な生活習慣の構築やスポーツ外傷・障害の発生を防ぐためにも、適切な運動量を守ることが重要です。
行き過ぎたスポーツ活動の弊害
行き過ぎたスポーツ活動にはさまざまな弊害が考えられます。
- スポーツ外傷・障害が発生しやすい
- 運動と休養・睡眠、勉学、趣味活動などのバランスが崩れる
- 単一種目への打ち込みによって身体局所へ負荷が集中し、疲労骨折や変形など、成長へ弊害をきたす
- 精神的にも追い込まれやすく、バーンアウト症候群のリスクが高まる
スポーツが将来の夢や目標と結びついている場合もあるかと思います。ただその場合も、できるだけ短時間に、合理的でかつ効率的・効果的な活動を行うことが望ましいです。
子どもは多忙⁉︎ 塾や習い事との兼ね合い
最近は、小学生から塾やその他習い事に通うことも珍しくなくなっています。そうすると、学校(勉強、学校行事)にスポーツ、塾、習い事で1週間のスケジュールが埋まってしまいます。
しかも、毎日の帰りが遅くなるため、夕食や睡眠の時間が後ろ倒しになり、生活習慣を崩しやすいのです。食事の時間が遅くなると、就寝までの時間が短くなるため、胃腸の消化機能に負担をかけます。
スポーツ外傷・障害を発症してリハビリに通う子たちで、過密スケジュールの生活を送っている場合が少なくないのです。
小学生で既に、部活に塾にとスケジュールの詰まった生活をしている子にも会います。当然、睡眠時間も削られます。夕食時間が遅くなるので、消化や代謝にも良くありません。「両立」と言えば聞こえはいいけど、時期をずらしながら優先事項を変えていってもいいのでは⁈
— ふみ (@ThanksDailylife) 2018年5月7日
結びに
成長期におけるスポーツの活動時間のガイドラインをご紹介し、行き過ぎた活動による弊害を考えました。
スポーツと聞くと、「豊富な練習量で体力と精神力を鍛える、身体に覚え込ませるまで数をこなす」印象があります。
しかしパフォーマンス向上は、練習量のみで作られるわけではありません。
トレーニングに加えて身体作りとなる栄養、休養が欠かせません。発育時期に応じてトレーニング内容を変えたり、負荷と疲労度を考慮してトレーニング計画を立てていくことが推奨されています。
上手な身のこなしをするコーディネーション能力や、鍛えた力を発揮するためのコンディショニング、メンタルトレーニングも重要です。
しかも身体は、トレーニングをしたら、その後の休養期間により成長が進みます(超回復)。
メジャーリーグで二刀流として活躍する大谷選手は、子ども時代から高校生までは骨端線に負荷をかけないように運動量をセーブされていたそうです。さまざまな種目に取り込んで、楽しんで行っていました。その頃に無理をしなかったことで、その後の成長につながったと語られていました。
まずは保護者や指導者が、適切なスポーツ活動量やオーバーユース(使い過ぎ)によるスポーツ外傷・障害のリスクを知っておき、子どもにセーブをかけることが必要ではないでしょうか。
余談:「スポーツ」の語源は、ラテン語の「deportare」で、日々の生活から離れること、すなわち、気晴らしをする、休養する、楽しむ、遊ぶなどを意味しました(語源由来辞典)。楽しんで、スポーツに取り組みたいですね♪
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