こんにちは、大山ふみあき(@ThanksDailylife)です。
現場一筋でやってきたセラピストが、経験を積み、「マネジメント」する立場になったときの考え方や方法を学ぶ待望の一冊が出版されました!
なぜ、リハビリ部門管理者がマネジメントを学ぶべきなのか?
従来より療法士の本業は、目の前にくる日常生活に困っている対象者に対して、最適な療法を提供し生活の質(QOL)を上げていただけるよう働きかけることです。
しかし現在は、マンツーマンのやり取りだけしていては十分でない状況になってきたといいます。
療法士を取り巻く状況の変化に合わせて、ふさわしい働き方や社会に貢献するやり方を探求していくことが求められます。
まず、リハビリ業界を取り巻く外部環境要因を知りましょう。
外部環境要因とは、「時代の変化」。
リハビリ業界に影響を及ぼす時代の変化として、以下のようなことがあります。
- 療法士の過剰供給
- 多職種協働が不可欠
- テクノロジーの発達
- 療法士に求められる役割の変化
毎年新たに、12,000人以上の理学療法士と4,000人以上の作業療法士、1,500人以上の言語聴覚士が誕生しています。
すると10年後には35万人の療法士が働いていることになります。
高齢者人口が急増しているうちはまだ需要があるかもしれませんが、まもなく少子化をうけて全人口が減っていきます。
そうなると療法士の供給過剰になることが予測されます。
そこで療法士を取り巻く環境が次のように変わってきたといいます。
かつての「リハビリセラピストが少ない状態で、どのように効率的・効果的にリハビリを提供するか」という時代ではなく、「今、働いている“たくさんの”リハビリセラピストで、どのように効率的・効果的にリハビリを提供するか」という考え方に変わってきています。
つまり、少人数では必要なかったリハビリ管理者のマネジメントの知識や技術が、この大量生産時代には、必要になってきているのです。(9ページより)
さらに、医療も介護も「多職種協働」が求められる時代。
リハビリ部門はリハビリだけ提供すればよいのではなく、対象者のADL支援や在宅復帰を進めるうえでは、多職種とのコミュニケーションが不可欠であり、マネジメント能力が求められるというのです。
療法士に求められる役割も変化しており、マンツーマンで機能改善や能力回復に努めるだけでなく、対象者の“「活動と参加」を促すための「教育・指導」的役割”が求められるようになってきました。
国が進める地域包括ケアシステムの構想において、医療機関や介護施設は“地域のインフラ”として機能。
療法士はその専門性を地域において幅広く役立てられるような体制作りや業務改善を実践していくのが使命です。
「リーダーシップ」と「フォロワーシップ」を使いこなす
自分が経営者でない限り、誰しもが「フォロワー」です。
一方、少なからず部下がいれば、「リーダー」でもあります。
つまり、ほとんどの療法士がフォロワーであり、リーダーでもあるという構造。
リーダーのリーダーたる行動「リーダーシップ」があるように、フォロワーのフォロワーたる行動を「フォロワーシップ」と呼びます。
組織のメンバーがまとまって、効率よく成果を上げていくために、療法士は「リーダーシップ」と「フォロワーシップ」の両方を使いこなしていかなければなりません。
リーダーとフォロワーの関係について本書では、次のように書かれています。
組織運営や改革の旗振り役は最高リーダーである経営者ですが、その組織運営や改革を完成に導くのはリーダーではなく、フォロワーなのです。
(中略)実際に経営者から指示が出た場合、その階層に応じて、階層ごとのリーダーがフォロワーに対して具体的な指示を出して形にしていきます。(39ページより)
具体的には、経営者の旗振りにもとづき、「いつまでに」「どのくらいの規模で」「どの程度の予算で」「どのくらいのマンパワーを使って」などを、階層ごと(部長→課長→主任→リーダー→スタッフ)に一つずつ落とし込んで実行していきます。
協働して事業を成し遂げていくリーダーとフォロワーの関係性には、“相互依存性(互いに相手に頼りつつ目標へ向かっていく)”があり、その関係には“信頼関係の強さ”が大きな影響を与えるといいます。
信頼関係を築き、チームとして成果を出していくには、リーダーシップとフォロワーシップの両方を学ぶのが不可欠。
理想のフォロワーシップとは?
ここではあまり聞きなじみのない、「フォロワーシップ」のとり方についてピックアップ。
フォロワーシップの提唱者であるロバート・ケリー教授(カーネギーメロン大学)が示す模範的なフォロワーの3つのスキルが紹介されています。
この3つのスキルを磨いていくことで、理想的なフォロワーシップを築くことができます。
1.仕事において付加価値を生み出す
自分の関わる業務において「これまでこうだったから、これからもそうしよう」「先輩がそう言うから、その通りにしよう」「新しいやり方へ面倒くさいし、言われたことだけやっていよう」という考えでは、決して今よりよい状況にはならないでしょう。
仕事に付加価値を生み出すには、“これまでのやり方に疑問を持ち、新しいやり方を模索する”ことから始まるといいます。
その際、これまでの組織の過去や歴史を理解したうえで、業務改善を提案する配慮が大事です。
2.組織において人間関係を育む
組織における人間関係には3つの種類があります。
- (所属する)チームにおける人間関係
- (多職種との)横断的ネットワークにおける人間関係
- リーダーとの人間関係
それぞれのレベルで良好な人間関係を築くことで、スムースな組織運営や目標達成に近づくことができます。
3.人間関係を円滑に運ぶ「勇気ある良心」を身につける
ときとしてリーダーの間違いに異を唱えることも必要でしょう(勇気ある良心)。
組織内で自分の目的を成し遂げていくには、リーダーの立場を十分に理解したうえで、配慮ある伝え方を学びましょう。
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セラピストはどのようにキャリアを築いていけばよいのか?
キャリアを「デザイン」する
毎年2万人以上のリハビリ専門職が誕生していますが、働き方に関してさまざまな問題も浮き彫りになっています。
例えば、以下のような↓
- 働く領域のかたより
- 給与水準の低下
- 需給バランスの崩れ
- 療法士が働く地域のばらつき など
このように療法士を取り巻く環境の変化は激しく、過去のロールモデルに従って働いていれば安泰と考えるのは危険だと、著者はいいます。
そこで能動的に自らの働き方や生き方を実現していくために生まれたのが、“自分のキャリアは自分で作る”という「キャリアデザイン」の考え方。
キャリアデザインとは、
将来のなりたい姿やありたい自分を実現するために、自分の職業人生を主体的に設計し、実現していくこと(カオナビ人事用語集より)
つまり、いまの上司や先輩がひいてくれたレールの上を進むのではありません。
どこを目指して、どのレールを進むのかを自分で考えて、決めていくのです。
あえて「流される」のもあり
キャリアデザインを考えるときには、もちろん自分の意思が重要なのですが、あわせて「キャリアドリフト」も頭に置いておくとよいです。
*ドリフトdriftとは、「漂流する」の意
キャリアドリフトの考え方はこちら↓
キャリアドリフトは、『自分のキャリアについて大きな方向づけさえできていれば、人生の節目ごとに次のステップをしっかりとデザインするだけでよく、節目と節目の間は「偶然の出会い」や「予期せぬ出来事」をチャンスとして柔軟に受け止めるため、あえて状況に“流されるまま”でいることも必要だ』という考え方 (189ページより)
え? 流されるままでいいの?
と思われるかもしれません。
ぼくも初めはそう思いました。
ただキャリアドリフトは、「計画された偶発性理論(ジョン・D・クランボルツ)」が背景にあります。
これは、“キャリアの80%は偶然に支配されている”という理論。
たしかに、異動を命じられた先や、指示されていった研修会で思わぬ出会いやチャンスにめぐり合うことがありますよね!
そして偶然に訪れたチャンスを生かすのに大事なのは、“オープンマインドの姿勢”でいること。
「こうでなければならない」「〜あるべきだ」というこだわりは、せっかく新しい世界に出会うとびらを閉じてしまいます。
自分の持っている考え方や信念のほかにも、心を開いて受け止めることも必要でしょう。
3つの軸でキャリア形成する
自分の好きなこと/やりたいこと、貢献できることから大まかなキャリアの方向性を決め(=キャリアデザイン)、行動していきます。
でもキャリアの節目においては、「自分は本当は何をやりたかったのだろう」という疑問も出てくるでしょう。
その節目ではオープンマインドの姿勢をもって、偶然のイベントも取り入れながら柔軟に対応(=キャリアドリフト)することで道が拓けます。
そんなデザインとドリフトを繰り返すのがキャリア形成のプロセス。
自らの専門性を磨きながら、組織において欠かせない存在になるために、3つの視点(軸)で考えるのが有効です。
3つの視点とはこちら↓
- スペシャリティ
- ジェネラリティ
- オリジナリティ
専門的な知識・技術を高めつつ、それを活用し広げていくためのマネジメントやリーダーシップを学ぶ。
そのバランスが、あなたの希少価値をつくります。
むすびに
マネジメントやリーダーシップに関する書籍は多々あるなかで、こんなにリハビリ部門へ向けたわかりやすい内容のものは初めてでした!
管理者はもちろん、リーダーシップやフォロワーシップに悩んだり、キャリア形成に不安を感じているすべての療法士に役立つ一冊。
各章の冒頭と末尾に書かれた「Before story」「After story」の秀逸さに驚きました。
まさしく自分のちょうど考えていた、悩んできた状況が紹介されているんです。
きっとキャリア形成やマネジメントに悩むあなたにも、療法士として働く背中を強く押してくれるでしょう。
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