高齢者にみられる無意識の手脚や首の震え症状。
手指の震えによって書字や細かな動作がうまくできなくなり、就労や日常生活に支障をきたすことが少なくありません。
これまで明らかな原因は不明であり、「歳のせいだから」と、半ば諦められていた方がほとんどではないでしょうか。
今回、世界で初めて、高齢者の震えの原因を明らかにしたと、群馬大大学院医学系研究科の定方哲史准教授と細井延武講師の研究グループが発表。
*高齢者らの手脚の震え 群馬大大学院研究グループが原因解明 就労一助へ「根本的な治療」目指す(6月12日ヤフーニュース)
今回は、この記事を深掘りしていきます。
高齢者の手脚の震えの原因
無意識に手脚が震える現象は「振戦」と呼ばれます。
とくに明らかな原因が不明で加齢によって現れる症状は、「本態性振戦」と呼ばれ、高齢者の7人に1人にみられるといいます。
今回の発表によると本態性振戦の原因は、小脳での神経シナプス伝達を担っているタンパク質の一つ、「Nav(ナブ)1.6」の欠損。
そもそも小脳には、脳の神経細胞の大部分が集まり(その数、なんと1,000億個以上)、体の平衡感覚(バランス保持)や、筋肉の緊張感、随意運動(手足の意識的な動き)の調節などに働いています。
そのため小脳がダメージを受けると、運動や平衡感覚に異常をきたし、細かで素早い運動がうまくできなくなってしまいます(運動失調)。
加齢に伴ってNav1.6が欠損し、神経伝達が阻害されると、精密な運動の制御が困難に。
今回の研究が今後、私たちの生活にどう役立つのか。
まずは、これまで対処療法だった高齢者の震えに対して、根治療法の開発。
震えが鎮まることで、手指の緻密な動きが取り戻されれば、就労や趣味、日常生活の自立度が向上し、より快適な生活につながります。
根治療法が確立されるまでは、リハビリテーションにも応用できます。
例えば、従来行われてきた小脳の病変(脊髄小脳変性症など)に対する、重りや包帯を巻くことで手脚の運動を制御するなどの方法。そうした療法による改善度を脳機能レベルで判断できます。
また小脳の神経伝達に異常があるとすれば、その代替手段をどう構築するのか。
脳や身体は常に、体外からのさまざまな刺激に対して反応し、神経ネットワークをつないでいきます。そうであれば、小脳のネットワークを意図した感覚入力の工夫。
あるいは、より末梢レベルである体幹や手脚でバランスを保持できるようなトレーニングを行います。
筋肉の緊張感の調節は、体幹の関節受容器によってもなされます。なので、ここを重点的に刺激するなど。
具体的な方法はまだまだ模索段階ですが、リハビリテーション領域においても、神経細胞レベル、遺伝子レベルで考えることが、ますます重要になってくる時代です。
むすびに
いかがだったでしょうか?
高齢者にみられる手脚の震えの原因解明というニュース記事を深掘りしていきました。
震えは、加齢によるものだけでなく、パーキンソン病やアルコール依存症などによってもみられます。
これらの震えがおきるメカニズムの解明や、根治療法の開発に今後も注目。
*病気やケガの予防は、ふだんの生活習慣を整えることが第一!また定期的な健診によって異常の早期発見&早期治療につなげましょう。