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運動・スポーツを継続する自信−“運動セルフ・エフィカシー”と行動変容の関係

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健康で活き活きとした生活を送るうえで,定期的な運動・スポーツの実施ふだんの生活における身体活動量の増加は重要なカギとなります.定期的な運動・スポーツや身体活動量を増やすうえでは,個々人の運動継続の意思をどう高めていくかが重要です.

人の行動変容に関する概念としてトランスセオレティカル・モデルがあります.

トランスセオレティカル・モデルは,次の4つの要素(変容ステージ,セルフ・エフィカシー,意思決定のバランス,変容プロセス)から統合されたモデルです.

*トランスセオレティカル・モデルについて詳しくはこちらもご参照ください→『「行動変容」のステージモデルをリハビリに生かす』

なかでも変容ステージは中核概念であり,特定健康診査や保健指導の介入指標などにも利用されています.

今回は,運動・スポーツにおける行動変容の段階と,その段階を前に進むためのセルフ・エフィカシーについてご紹介します.

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運動・スポーツにおける行動変容の段階

行動変容の段階は,定期的な運動・スポーツや身体活動を実施するまでの過程においてもあてはまり(「運動ステージ」),対象者の準備性(readiness)と実践の程度から評価されます.

つまり,「現在,運動をしているのかどうか」「(現在やっていなければ)これから先,運動を始めようと思っているのかどうか」によって5段階(無関心期・関心期・準備期・実行期・維持期)に分けられます.

運動行動に関する変容段階

運動 ・スポーツにおけるセルフ・エフィカシー

運動ステージを前に進んでいくために,セルフ・エフィカシー[自己効力感](Bandura,1977)がカギとなります.

(セルフ・エフィカシーとは)目標とする行動をどの程度うまく達成することができるかについての見込み感

運動・スポーツに関するセルフ・エフィカシー(運動セルフ・エフィカシー)は,「運動・スポーツをどれくらいの頻度でやれるか,どのくらい続けられるか,楽しくやれるかなどについての自信」であり,岡(2002)は,以下のように定義しています.

個人が定期的に運動を行う場合,多様に異なる障害や状況におかれても,逆戻りすることなくその運動を継続して行うことができる見込み感

運動セルフ・エフィカシーは運動習慣の獲得や運動継続における重要な因子であるとされており,運動ステージが進んだ人ほど運動セルフ・エフィカシーが高かったことが報告されています.

*行動変容におけるセルフ・エフィカシーでは「効力予期」と「結果予期」という下位概念から成り立ちます.とくに「効力予期(ある結果を生み出すために必要な行動をどの程度うまくできるかという予期)」が重視され,個人が感じる「遂行可能性自分自身がやりたいと思っていることの実現可能性に関する知識や,自分にはこのようなことができるのだという確信)」と定められます.

運動セルフ・エフィカシーを測定する尺度

では,その人がどの程度の運動セルフ・エフィカシーを有しているのか?を評価するのに,岡(2003)の開発した運動セルフ・エフィカシー尺度があります.この尺度では,「本人が運動を実施する際に,それを妨げる状況においても中断することなく運動を継続する見込み(自信)の程度」が問われます.

「運動の継続を妨げる状況」とは過去の研究をもとに,肉体的疲労・精神的ストレス・時間のなさ・悪天候の4つが設定されています.

このような状況であっても,自分は運動を継続できるという自信をもっているほど,運動セルフ・エフィカシーが高いとみなされます.

運動セルフ・エフィカシーに影響を与える資源

セルフ・エフィカシーは自然発生的に生じるものではなく,次の4つの情報源から影響を受けて作り上げられます.これは運動セルフ・エフィカシーにおいても同様です.

  1. 遂行行動の達成
  2. 代理的経験
  3. 言語的説得
  4. 生理的・情動的喚起

遂行行動の達成とは,目標行動について個人がもつ実際の成功・失敗の体験であり,例えば「小さい頃からよく運動するほうだった」「ふだんから運動するほうだ」などがあります.

代理的経験とは,他者が目標行動を実践するのを観察することであり,「新聞やテレビで運動して元気になった人を見ると,自分も運動しようと思う」「知り合いが自分よりも運動しているのを見ると,自分ももっとやろうと思う」などがあります.

言語的説得とは,目標行動に関連する言語的情報を得ることであり,「よく運動するので,まわりの人が私を見習いたいといっている」「まわりの人から,運動の才能があるといわれる」などがあります.

生理的・情動的喚起とは,目標行動に伴う身体的・感情的な変化に気づくことであり,「運動することを考えると憂鬱になる」「体を動かしているとすぐに疲れるほうだ」などがあります.

これらの情報源をうまく活用することで,セルフ・エフィカシーを高められる可能性があると見込まれています.

結びに

セルフ・エフィカシーは主に学習心理学の分野で研究されてきましたが,現在では医療や教育分野,スポーツ,高齢者の運動などさまざまな場面で注目されています.

運動セルフ・エフィカシーの程度は,性差やニーズ,生活背景によっても異なります.また,現在どの運動ステージにいるのかを知ることによって,どのような情報源を提供するのが適当かを考えるヒントともなります.

健康につながる定期的な運動・スポーツや身体活動の増加を促すうえでは,これらの情報源を活用して運動介入する戦略も有効ではないでしょうか.

参考文献

  • 岡 浩一朗:行動変容のトランスセオレティカル・モデルに基づく運動アドヒレンス研究の動向.体育学研究45:543-561,2000.
  • 岡 浩一朗:中年者における運動行動の変容段階と運動セルフ・エフィカシーの関係.日本公衛誌50:208-214,2003.
  • 長ヶ原 誠:中高齢者の身体活動参加の研究動向.体育学研究48:245-268.
  • 常行泰子 他:高齢者の運動ステージと運動セルフ・エフィカシーに影響を及ぼす健康要因と社会心理的要因に関する研究.体育学研究56:325-341,2011.

 

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コメント

  • 過去の作品群をAIに学習させれば、抽象的な感性のなかにも法則性を見出せる らしい。 2045年に待ち受ける革命「シンギュラリティ」 こうした“人工知能フィーバー”の先に待ち受けるのは、2045年に起こるといわれる「 シンギュラリティ 」だ。 https://jamedbook.com/13944-2/ ■消化性潰瘍の内視鏡治療 近年の内視鏡技術の進歩は消化管疾患の診断ばかりでなく、治療においても大きな恩恵をもたらしています。

    by SilviaGoed 2018年11月19日 7:25 PM

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