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“ぬけぬけ病”の正体は⁉︎「力の伝達障害」から考える.

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“ぬけぬけ病”の正体は⁉︎「力の伝達障害」から考える.
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今年の箱根駅伝で疾走中のランナーが突如、脚の動きを失しバランスを崩しながら走る様子がみられました。

メディアでも取り上げられ、“ぬけぬけ病”と表現されるなど話題になりました。

今回はこの“ぬけぬけ病”について、私の理学療法経験から考えます。

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ぬけぬけ病とは

ぬけぬけ病と表現される症状は、走っているときに突如脚の力が抜けて、地面を蹴られない状態になります。

医学的な診断名は明確でなく、原因や治療法も不明とされています。

陸上競技界では20年ほど前から注目されており、同じような症状を「ローリング病」や「カックン病」と呼ばれることもあるそうです。

スポーツ界では似た症状として「イップス」が挙げられます。やはり、これまで普通にできていたスポーツ動作が、突如できなくなり、思い通りにプレーできなくなってしまいます。イップスが原因で引退を余儀なくされた選手も数知れず存在します。例えば、野球選手があるときから突然ボールを投げられなくなる症状などです。ボールを投げる肩や肘に問題がみつからないケースも多々あります。

原因について一説では、偏った筋肉の使い過ぎによる脳の生化学的変化や、局所性ジストニア(中枢神経系の障害による不随意で持続的な筋収縮をきたす運動障害の総称)、過度な精神的プレッシャーなどが関係するとも言われています。しかし決め手に欠けるのが現状です。

「力の伝達障害」という視点

ひとの運動を力学的な観点(キネティクス kinetics)からみると、体幹を力の源として、中枢部から末端部(手足先)へと力を伝達することで動作が成り立つ と考えます。力とは、物理学的な仕事をするエネルギーと同義です。

また体幹から末端の手足へ力を伝達すると同時に、末端部では同等量の衝撃を受けています。衝撃は、床反力(着地に際して、地面から返ってくる力)や慣性モーメント(関節を引き離そうとする力)などがあります。

このとき、[体幹から末端へ伝達される力(身体が発揮する力)]と[末端から体幹へ返ってくる力(身体が受け止める力)]はイコールの関係にあります。なぜなら、作用反作用の法則(ニュートンによる運動の第3法則)に則るからです。

身体が発揮する力(作用力)=身体で受け止める力(反作用力)

作用反作用の法則

2人の押し合いが均衡しているとき、左の選手(背番号10)にとって、相手を押す力(作用力)と同等量の力(反作用力)を受け止めている。

換言すると、身体で受け止められる力の分だけ、身体は力を発揮できることになります。力を受け止められるキャパシティが少なくなると、発揮できる力もパワーダウンしてしまいます。力を受け止められるキャパシティとは、「柔軟性」です。

動作を成り立たせる力は、重力による位置エネルギーと、運動に伴う運動エネルギーから成ります。生体において運動エネルギーは、筋肉の収縮による張力(=筋力)によって発生します。

筋力によって、関節を安定させ(空間における位置関係を保ち)、同時に関節を駆動させることで、ひとの動作が成り立ちます。

ここでいう筋力は、最大筋力(どれだけ大きな力を出せるか)だけでなく、敏捷性(どれだけ素早く動けるか)や巧緻性(どれだけ器用にこなせるか)までも含みます。

何らかの理由で発揮できる筋力が低下してしまうと、関節の安定性が損なわれ、思い通りに手脚を動かせなくなってしまいます。力強さやスピード、器用さがバラバラになった状態です。

今回取り上げた「ぬけぬけ病」も、筋による関節のコントロール(安定性、駆動性)を失った状態と考えられないでしょうか。言わば、動作を成り立たせる力を調整できない「力の伝達障害」です。

力の伝達障害

体幹から末端へ上手く力を伝えられなければ、関節のコントロールを失う。

なぜ関節のコントロールを失ったのか

発揮できる筋力が低下することで、関節を安定させたり、思い通りに動かしたりできなくなってしまうと述べました。

では発揮できる筋力が低下する原因はどこにあるのでしょうか。

先ほど、「身体で受け止められる力の分だけ、身体は力を発揮できる」と書きました。力を発揮できないということは、力を受け止められない状態にある、つまり柔軟性の低下がうかがわれます。

力を受け止める(=柔軟性を発揮する)役割は全身で担いますが、とくに「体幹」の役割は極めて重要です。

体幹は、ひとの上下肢を除いた胴体部分をいい、身体の質量の6割を占め、多くの筋肉が付着しています。さらに心臓や肺、内臓諸器官を含むため、身体の中心的存在です。また姿勢を左右する脊柱(背骨)が、体幹の屋台骨を支えます。

体幹での力を受け止めるキャパシティ(=柔軟性)が低下すると、発揮できる力も低下します。体幹の柔軟性低下に力の伝達障害の真意があると仮説立てています。

体幹

普段から激しいトレーニングで鍛えている選手に限って、筋力低下などあるはずがない!とお思いかもしれません。

ここでの「発揮できる筋力の低下」とは、その人が本来持っている100%の機能を発揮できない状態、いわば抑制のかかった状態といえます。実際に臨床現場でも、柔軟性の低下から筋力の発揮が制限され、痛みや動作不良につながっている方を多々お見受けします。

まとめ

  • ひとの運動は、体幹を力の源として、中枢部から末端部(手足先)へと力を伝達することで成り立つ。
  • 身体が力を発揮するとき、同等量の力を受け止め吸収している。
  • 力を受け止められるキャパシティ(=柔軟性)が低下すると、発揮できる力も低下する。
  • 発揮できる力の低下は、関節の安定性や駆動性を低下させ、思い通りのパフォーマンスをできなくなる可能性がある。

最後までお読みいただきありがとうございます。

今回は、体幹の柔軟性低下から力の伝達障害を招き、思い通りのパフォーマンスができなくなる機序を考えました。では、なぜ体幹の柔軟性低下をきたすのか、次回以降引き続き考えていきます。

原因不明といわれる症状に苦しむ選手の一助となれば幸いです。

 

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