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【完全解説】行動変容ステージ(トランスセオレティカルモデル;TTM)|リハビリ患者の自立を促す評価とアプローチ

こんにちは、大山ふみあき(@ThanksDailylife)です。

 

  • 言ったとおりの自主トレをやってくれない
  • 回復のための十分な睡眠時間をとってくれない
  • まじめに通院してくれない…

療法士として働くあなたは、対象者のこんな行動に悩むことはありませんか?

 

私もそうでした。

理学療法士として働き始めてしばらくは、いろんな勉強をして、患者さんにもそれをやってもらおうとしていました。

自分の言ったとおりに患者が自主トレをやってくれなかったり、やり方が間違っていたりしたら、「どうしてちゃんとやってくれないんだろう」と内心イライラしていたものです。

 

しかし翻って自分はどうでしょうか?

会って間もない他人から、一方的にやるべきこと・止めることを指示されたらどうでしょうか。すんなり行動を改めるでしょうか。

人は、良くも悪くも現状を変えるのに抵抗を覚えます。

これは行動経済学の分野で「現状維持バイアス」と呼ばれる、思考の“クセ”。

人が現状の行動を変える(望ましい行動を始める、または望ましくない行動を止める)には、段階を追っていく必要があります

 

その変化を求める私たち療法士には行動変容の過程を見守り、その時期に応じた適切なサポートをすることを求められています。

今回は、次の2点から患者の行動変容を引き出す方法を紹介します。

  1. 行動変容のステージモデル(トランスセオレティカルモデル)を理解する
  2. 各ステージに応じたサポート方法



【トランスセオレティカルモデル】行動変容のステージモデル

ステップアップ

人が行動を変える過程を示したのが、Prochaskaの提唱した「トランスセオレティカル・モデル(transtheoretical model:TTM)」

TTMでは次の2つの観点から、その人の変容段階が5つに分けられます。

  • これまで(または現在)に変化の行動を起こしているか?
  • 行動を起こす意思(動機づけ、レディネス)を持っているか?


1。前熟考ステージ(無関心期)

今から6ヶ月以内に行動を変えようようとする意図を持っていない状態。

現在の行動にリスクがあると認識していない、あるいは認識していても、その行動を変える必要性を感じていない。

2。熟考ステージ(関心期)

今から6ヶ月以内に行動を変化させる意図を持っている状態。

このステージにある人は、現在の行動の成り行き(生涯に起こりうる短期的長期的な結果)を調べたり、質問したりするという行動がみられる。

3。準備ステージ

今から1ヶ月以内に行動を変化させようという意図を持っている状態。

このステージある人は行動変容に役立つ戦略を積極的に考え始めているが、実際の行動にはまだ移されてはいない。

4。実行ステージ

すでに行動変容のための行為を行っている状態。

ただ行動を始めて6ヶ月未満と日が浅く、新しい健康行動による成果がすぐに見られないと、逆戻りする危険性が高い。

5。維持ステージ

健康的な行動を6ヶ月以上にわたって維持している状態。

維持ステージにある人でも逆戻りする可能性はあり、元の問題行動に戻る誘惑と戦っている。

変化のスパイラルモデル

人の行動変容の過程は、前熟考ステージから5つの段階を経て進んでいきます。

しかし患者は、5つの変容ステージを順番にたどるとは限らないのが実情。

行動変容に取り組んでいても、元の問題行動に戻ることもあります。

これは維持ステージにある人においても同様です。

 

実際には変容のステージを進んだり、後退したりする場合が多く、「変化のスパイラルモデルと呼ばれます。

ただ維持ステージにいる時間が長くなるほど、ステージを逆戻りする可能性は低くなります。

行動変容ステージの前進と後退を繰り返す患者に対して、私たち療法士は適切なサポートを求められます。

行動変容を支援するためには、対象者がどのステージにあるのかを把握し、そのステージに合ったサポートを提供することが大事。

【行動変容】各ステージにおいてセラピストがサポートすべきこと

患者が今いるステージから次のステージ進むために、次のようなサポートが有効です。

1。前熟考ステージ → 熟考ステージ

前熟考ステージにいる人はそもそも、「行動を改めよう」という意思をもっていません。

なのでまずは、行動変容の必要性を自覚してもらう(意識高揚ことから始めます。

行動変容の必要性を自覚してもらうには、病気や健康行動に関する知識を増やす必要があります。

また「現在の行動を続けることの障害リスク」や、「健康行動に改めたときのメリット」を認識してもらうのも有効。

 

ただ知識の提供やリスクの認識で注意すべきは、医療者からの一方的な情報提供とならないようにしましょう。

病気や健康行動に対して、本人はどのように認識しているのか、その考えや気持ちを表してもらうのです。

いったん気持ちを表す(感情的経験)ことで、その後に気持ちを切り替えやすくなります。

 

そもそも「本人が現状のままでよいと考えている理由」が何かあるのではないでしょうか。

本人の置かれた状況・環境を見直してみる(環境の再評価と気づけることがあります。

例えば育ってきた環境や付き合いのある人たち、いまの職場の様子など。

いつもテーブルにはお菓子が置かれていて、同僚がなんの躊躇もなく口にしていたら、自分だけお菓子を食べないという選択肢は生まれにくいですね。

 

本人と関係のある周りへの影響を考える手もあります。

自宅でタバコを吸えば、一緒にいる家族の健康被害につながるリスクが高まります。

タバコの健康被害によって自分が体調を崩して働けなくなったら、家族が路頭に迷ってしまう…

いわば、「このままではマズイ(>_<。)!」と思ってもらえるかどうかがカギになります。

2。熟考ステージ → 準備ステージ

熟考ステージにいる人は今すぐにではないけれども、「行動を改めようかな」と興味を持ち始めています。

この人に対しては、動機付けを明らかにすることが重要。

今の自分を見つめ直し(自己の再評価)、“何のために、誰のために”行動を変えるのかが明確であれば、継続しやすくなります。

「かわいい孫と一緒に旅行に行きたいから、半年後までに観光地を1時間歩ける体力をつけたい!」とおっしゃったご婦人は、とても熱心に運動に取り組んでくださいました。

 

動機付けを明らかにした後は、「自分ならきっとできる(行動変容に成功する)」という自信を育てていきましょう。

自信をもってもらうには、「運動不足の自分をネガティブに、運動している自分をポジティブにイメージする」などの方法があります。

誰でも運動を継続、習慣化できる!「運動セルフ・エフィカシー」を高めるコツ

今いる環境が行動変容の障害となっている場合もあります(いつも目の届くところにお菓子が置かれている、など)。

行動変容の障害となっている環境を改善することで、自然と望ましい行動が導かれることもあります。

熟考ステージの特徴として行動変容に関わる情報を調べたり質問したりするので、継続的な情報提供によってモチベーションを維持するのに有用です。

3。準備ステージ → 実行ステージ

準備ステージにいる人は近々、行動変容を起こそうという意思があり、その方法を探っています。

この人に対しては、具体的な行動計画を立てられるような支援を行っていきます。

「椅子からの立ち上がり運動を、一日に20回3セット、隔日で行い、それを12週間続けましょう」など、運動処方は療法士の得意とするところではないでしょうか。

 

行動変容への意思を固めてもらうために、本人自ら周りに意思表明してもらうのもよいかもしれません。

周りに表明することで自らの動機付けを確かにし、協力も得られやすくなります。

4。実行ステージ → 維持ステージ

すでに行動変容を始めて間もない実行ステージにいる人に対しては行動変容の決意が揺るがないようフォローしていくのが大事です。

望ましい行動がみられたとき即座に外的・内的報酬が得られるように工夫します。

【たったこれだけ】意欲を高め、リハビリ成果を上げる!患者を“ほめる”極意

運動を自己管理できる(セルフ・モニタリングような工夫も有効です。

例えば、理想の行動ができたらカレンダーに花丸をつける、今日一日の行動実践度を点数化するなどの方法があります。

 

行動変容を長期に継続していくには、周りからの協力も欠かせません。

運動サークルに入る、患者会に参加するなどの、ソーシャルサポートによる支援(援助関係の利用も利用できます。

5。維持ステージ

「変化のスパイラル・モデル」でも紹介したように、維持ステージにいる人であっても行動変容の段階を逆戻りしてしまう可能性も捨てきれません。

「ふだんは禁煙していても、飲み会の場になって吸ってしまった」などもよくあることです。

行動変容の段階を逆戻りしないように、たとえ逆戻りしても本人で再度前進できるように、再発予防のための問題解決の方法を伝えましょう。

また社会的・環境的支援、モニタリングの維持、継続的なソーシャルサポートによる支援を継続していく必要があります。

 

結びに

行動変容における療法士の役割は、本人が“気づく”ためのきっかけを提供することです。

運動療法によって痛みが減る、動作がスムースになる、日常生活を自分でできるようになるなど、

「こうやったら、自分はもっと生活しやすくなる(目標が達成できる!)」という“きざし”がみえたら、チャレンジを続けていけます

 

「経時的な評価」をするのも継続のコツ。

がんばっている成果が目に見えてわかるのは、誰にとっても嬉しいものです。

療法士は評価しながら、見守っている立場といえますね。

 

最後に人材育成にも通じる、山本五十六(1884年- 1943年。大日本帝国海軍 第26、27代連合艦隊司令長官)の明言がこちら。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。

話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。

やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。



オススメ書籍

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合わせてお読みいただくと、運動療法や生活習慣の定着がスムーズに進みます。

 

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