これからの日本が直面する、人口減少による危機を明らかにしたベストセラー『未来の年表』シリーズ。
その著者が今度は、20年後、日本国内の都道府県や市町村において、どんな人口変化が起きるのかをデータにもとづいて予測しながら、今とるべき対策を明らかにしているのが、『未来の地図帳(河合雅司著、講談社現代新書)』。
人類史上かつてない激しさで人口減少が進む日本ですが、私たち一人ひとりが考えるべき重要な示唆に富んでいます。多くの方に読んでいただきたいと思います。
本書を読む目的
- 自分の住んでいる地域の20年後がわかる
- 急激な人口動態に伴って、社会や生活がどのように変容するのかを知る
- 人口減少した地域でも豊かな暮らしを続けるための方法を考える
本書を読んでの学び・気づき
- 現在の日本は、過去の出生数減少の影響で出産可能な年齢の女性数が減っている。出生数減少による少子化と多死化による人口減少は避けられない。
- 人口減少は2段階で進む…①[〜2042年]若者が減る・高齢者数は増え続ける(→高齢者対策)、②[2043年〜]高齢者が減り、若者はますます減る(→人口急落、社会の担い手不足)
- 人口動態の地域差が際立ってくる…大都市圏や政令指定都市からも、東京への人口流入が進み、東京一極集中が続く。各道府県内でみても、県庁所在地や中心都市に人が集まってくる。将来的には人口激減により、現在の都道府県や市区町村の形態を維持できない地域も現れると予測される。
- 東京でも急速な高齢化が進み、社会を支える構造が大きく変わる。
- 今後の日本は、人口減少を前提として、それでも豊かな生活を維持できるような産業構造の転換が求められる(著者は、“戦略的に縮む”と表現する)
- “戦略的に縮む”とは、都道府県や市区町村の区画に縛られず、“少人数でも高い利益を上げられるビジネスが存在し、高齢者が歩ける範囲で日常生活を完結できる”ような「ドット型国家」への移行をさす。
本書では、2040年における全国の都道府県、市区町村ごとの人口動態や起こるであろう社会や生活の変化を赤裸々に述べています。しかし著者は本来、人口動態を地域で比較したり、自分の住まうエリアのことだけ考えるのはナンセンスだと述べています。
いまは、人口が激減していく「国難」に対し、日本の総力を挙げて立ち向かうことが求められるときにある。そんな状況下で、どこの市区町村の人口が何人増えたとか減ったとかを競い合っている暇はない。
何度もいうが、日本という国は、日本列島のあらゆる地域が固く結びつきながら営まれている。この国でこれから起こる「不都合な真実」は、現在を生きる人々共通の課題だ。
日本列島から人口が大きく減っても、各地で大きな差が開くことなく豊かな暮らしを送り続けられるようにする術を、生活している地域を超えて、みんなで考えていかなければならない。 (221ページより)
本書を読むことで、“どこの地域が、いつ頃、どのように変貌するのか”をかなりリアルな数字で知ることができます。その社会では、政治、ビジネス、街づくりも従来の拡大路線では立ち行かないことは明白。
コンパクトな社会を受け入れたうえで、豊かさを享受できるような仕組みや生産性向上が不可欠だと思われます。
ただそれは、遅かれ早かれどの地域にも起こりうる現象。しかも現代はネットワークや交通網の発展によって、地域が密接につながり合っています。
つまり、人口減少によって生じうる社会の変化や問題に対して“自分ごと”、“日本中で共通する課題”ととらえて考えていくことが肝要です。
☆巻末付録では、2040年に全国の各市区町村の人口がどう変わるのか(2015年からの人口増減率)を知ることができます。
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