こんにちは、ふみあき(@ThanksDailylife)です。
「腰椎圧迫骨折」がニュースをにぎわせていて、誰しも起こりうると吹聴されているのを聞いて、不安になった方も多いのではないでしょうか。
しかしその実態について正しく知っていれば、落ち着いて対処できますし、今から予防しておくこともできます。
そこで今回は、腰椎圧迫骨折の実態とその治療について、リハビリテーションの専門職である理学療法士の視点から解説します。
腰椎圧迫骨折とは?
腰椎圧迫骨折とは、カラダの中心軸である背骨(脊柱)を構築する「椎体(ついたい)」が、グシャッと潰れてしまった状態で、脊椎圧迫骨折の一種です。
骨折がおきる場所は、背骨のなかでも第12胸椎、第1腰椎に好発。ここは胸椎と腰椎の移行部(境界)であり、背骨の圧迫力がかかりやすいためです。
☆背骨の基本的な構造や働きについては、こちらをご参照ください→“背骨”を動かして健康になる。Part 1:背骨の形態の意義
どんな人がなりやすいの?
とくに高齢の女性で骨粗しょう症になった方は骨がもろくなり、圧迫骨折を生じやすくなります。
骨粗しょう症になりやすいリスクとして、ステロイド剤の長期服用や喫煙、過度な飲酒、運動不足、ストレス、遺伝、日光浴不足などがあり、ふだんの生活習慣が影響します。
まれに悪性腫瘍(がん)の骨転移により病的骨折を生じることもあるので、胃がん・乳がん・子宮がんなどの既往があり、背中の激烈な痛みを現れた場合には要注意。
圧迫骨折をおこす原因は?
尻もちをつくような転倒、物を持ち上げる動作、くしゃみなどによって、背骨に上下の圧迫力(圧縮ストレス)が加わることで骨折が生じます。
骨のもろくなった高齢の方では、自覚症状がないうちに徐々に骨折が進行していく「いつの間にか骨折」が起きている場合も少なくありません。
徐々に骨折が進行していくタイプは、「物を持ったり歩いたときに背中が痛い」「背中が丸くなる」「身長が低くなってきた」などの症状がでた場合には圧迫骨折が疑われます。
どんな症状が出るの?
実際にはほとんど自覚症状がない患者さんも多くいますが、およそ3人に1人は骨折時に背中や腰に激しい痛みを感じるといわれています。
痛みは安静・治療によって治まりますが、つぶれた椎体は元の形には戻りません。すると背骨全体のバランスが崩れていき、1年以内に次の骨折が発生しやすいという研究報告もあるので、きちんとリハビリに取り組むのが大事。
治療法、リハビリは?
脊椎圧迫骨折の治療、リハビリテーションでは、おもに次の3つを目的とします。
- 痛みの緩和
- 起居動作、基本動作の再獲得
- 日常生活への早期復帰と再発予防
そのための身体機能として重要なのは以下。
- 背骨の運動性(しなやかで自在な動き)
- 体幹や下肢の筋力増強
- 心肺機能の向上
通常、1〜2週間の安静臥位で痛みが和らいできたら、早期にベッド上のギャッジアップ、寝返り、起き上がり、座位、立位、歩行運動の再獲得を進めます。背骨を保護するため、コルセットを着用して行う場合もあります。
治療・リハビリの注意点は、椎体への圧迫力を軽減するため、脊椎伸展位(背骨を伸ばした姿勢)を保持すること。そして腰椎への負担を避けるために、胸椎や骨盤・股関節の可動性・筋力を引き出すのも重要です。
また再発予防のためには、体力・運動量を維持する心肺機能(有酸素性運動)や、転倒予防のためのバランス能力などを合わせてトレーニングしていく必要があります。
むすびに
世間をにぎわせている腰椎圧迫骨折について、その正体と原因、治療・リハビリテーションについてまとめました。
病気やケガとの付き合い方として、むやみに不安にならず、正しい知識をもって対処することが大事。
次回は腰椎圧迫骨折を予防するために、今からできる方法をご紹介します。
参考
本記事は以下の図書を参考に執筆しています。一般の方でも読みやすい。
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