こんにちは、大山ふみあき(@ThanksDailylife)です!
ご存じでしたか?
母子の間で分泌され、“愛情ホルモン”や”絆ホルモン”としてよく耳にする「オキシトシン」が、実は嫉妬(しっと、ねたみそねみ)心を生んだり、他人を攻撃・排除したりすることにも関わっていたことを。
ぼくもこの事実を初めて知ったときには、まさか⁉︎と裏切られたような驚きでした。
しかし、オキシトシンと嫉妬の関係を知っておかないと、身近な人間関係で摩擦やトラブルにつながります。
親子関係はもちろん、友人やご近所といったあらゆる対人関係に関わるホルモンの秘密を解説いたします。
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愛情ホルモン「オキシトシン」の働き
オキシトシンは脳の下垂体後葉から分泌され、主に次のような働きをします。
- 子宮筋の収縮を促し、分娩を進める
- 胎盤がはがれ出た後の止血を促す
- 乳汁分泌を促す(射乳反射)
他にも、オキシトシンは心地よい刺激(お風呂やマッサージなど、あたたかい環境でリズミカルな刺激に触れるなど)によって分泌が促されます。
その結果、セロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンといった脳内の神経伝達物質とも関連して、以下のような生理機能に影響を与えます。
- 血圧が下がる
- 心拍がゆっくりになる
- 皮膚や粘膜の血流量が増える
- 筋肉の血流量が減る
- ストレスホルモンであるコルチゾール濃度が低下する
- 消化・吸収が良くなり、エネルギーが貯えられる
このようなオキシトシンの働きを一言でいえば、「愛と絆」、「安らぎと癒し」。
母と子の愛情、親密なパートナーとの親愛、気の置けない友人との信頼関係、尊敬する師を慕う気持ちなどに関わっています。
出産直後におこる女性の心の変化
出産直後には、女性の体内でオキシトシンの分泌が増加します。
そうして出産で受けた体のダメージの回復し、生まれた赤ちゃんに愛着をもつようになります。
しかしその一方で、精神的に不安定になりがち。
イライラする、涙もろくなる、気分がしずみやすいなど、人によってひどくなると「産後うつ」にも注意が必要です。
精神的にも、肉体的にもハードな状態でがんばるのは大変です。
自分を休ませるために、ときにはベビーシッターや家事代行のサービスを利用するのもよいでしょう。
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愛情が「嫉妬」に変わるとき
では、この愛情ホルモン オキシトシンが「嫉妬」をも生み出すというのは、どういうことでしょうか?
まず、嫉妬の意味はこちら
「自分より他人の方が優れている」とか「自分より他人の方に愛情が向けられている」といった認識に伴って生じるネガティブな感情。
一般的には、羨望と憎悪が含まれる攻撃的な感情ととらえられる (Weblio辞書より)
英語でいえば、「jealousy(ジェラシー)」ですね。
さて、ここからが本題。
”人の不幸は蜜の味”とは、よく言ったものです。
他人の失敗を目にしたとき思わず、「よしっ」とほくそ笑んだことがないでしょうか?
ぼくもあります。
これは「シャーデンフロイデ」という人間がいだく感情の一つ。
ねたましいと思っていた人間が何か失敗したときに、思わず湧き起こってしまう「喜び」の感情をいいます。
シャーデンフロイデとはドイツ語(Schadenfreude)で、「Schaden(損害、毒)」+「 Freude(喜び)」からきています。
そしてシャーデンフロイデが生じるとき、同時にオキシトシンの分泌も高まっているというのです。
ここまで知って、ちょっとした恐ろしさも感じます。
愛着を生み出すオキシトシンが、同時にねたみや他人をこき下ろす快感をも生じさせるのですから。
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【オキシトシンの事実】「愛着形成」も「嫉妬」も、人類としての生存戦略
オキシトシンが愛着と同時に、嫉妬をも生じさせる背景には、人類の生存戦略が関わっています。
人間の赤ちゃんはとても未熟な状態で生まれ、おっぱいをくれる母親を主とする養育者の庇護なしには生きていけません。
もし母親にそっぽを向かれたら、すぐに命の危機が訪れます。
そこで、
母親は子どもから離れると強い不安を感じるように、オキシトシンによって脳を変化させられている (『シャーデンフロイデ(中野信子)』より)
と考えられます。
母親(もちろん父親も)の脳内では、子どもが幼い頃はしっかりと愛着を形成し、養育していくように働きます。
そして通常は、子どもが成長し親元を離れていくと同時に、親の「子離れ」も徐々に受容されていきます。
しかし、愛着形成の仕方が不安定(過剰や未熟)な親では、この「子離れ」を受容できず、強い不安を感じる場合があります。
「あなた(子ども)のことを思って〜」「良かれと思って〜」とった行動が、子どもにとっては過干渉や嫌悪を感じる対象となってしまうんですね。
そうした嫌悪感を示す子どもの態度をみた親は、「こんなに思っているのに…(# ゚Д゚)、(TдT)」というネガティブな感情が湧きおこってきます。
これは恋人や配偶者、親密な誰かに対しても同様。
以上がオキシトシンが「愛着」と「ねたみ」という、一見相反するような感情を同時に引き起こすメカニズムです。
スポーツや芸能の世界で、熱い師弟関係と思われていた指導者と教え子(弟子)の間でパワハラ問題が取り沙汰されることがあります。
これもオキシトシンによる愛情とねたみの裏返しだとみることができます。
関係しはじめた当初はたしかに、お互いの愛着にもとづく強い絆があったはず。
しかし、ときが経つにつれて愛情がねたみに変わっていった。
教え子(弟子)が成長して、指導者に意見したり、独り立ちしたりするようになります。
そのとき自分のもとを離れていく寂しさや不安から、苛立ちとして現れてしまうのでしょう。
「正義感」の正体もシャーデンフロイデ
シャーデンフロイデは、「正義感」とも関連しています。
例えば、このようなシーンを目にしたことがないでしょうか。
- インターネット上で特定の誰かを攻撃して「炎上」させる
- 飛行機内で泣く赤ちゃんをあやす親への暴言
- 道路を並んで歩く中高生への激しい叱責
- …
恐らく、言う本人に悪気はありません。
むしろ「悪いやつを注意して、正しいことをしている」という認識のほうが多いようです。
実はこのとき脳内では、快楽物質のドーパミンが放出されていることが明らかにされています。
ドーパミンとオキシトシンは関連していると先述しました。
このような感情の背景にシャーデンフロイデが関わっています。
つまり、特定の(自分にとって親密な)個人や所属する集団への愛着・帰属意識が強いほど、その親密さや組織秩序から外れようとする者に対して、嫉妬するのです。
そして秩序を乱す者を攻撃・排除することで、自分はドーパミン分泌による快感というメリットを得ている。
これが「正義感」の正体。
このように「自分は正しくて、悪いことをしている奴を罰する行動は許される」という心理にもとづく行動を「サンクション」と呼びます。
“出る杭は打たれる”という言葉がありますよね。
これも組織の横ならび状態から飛び出そうとする者に対して、「おれたちの秩序(平穏)を乱そうとするヤツは許さん!!」という攻撃・排除のあらわれ。
しかも加齢などによって前頭前野のブレーキが弱まってくると、シャーデンフロイデにもとづく他者への攻撃は度を超したものになります。
テストステロンの優位な男性により顕著だというので、いわゆる“親父の小言”みたいなのも、ホルモンの影響かもしれません。
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オキシトシンの働きを知って、対人関係に活かせること
ここまでの内容をまとめると、
オキシトシンが愛着や親密な感情を生みだすと同時に、嫉妬や正義感という攻撃性につながることもある。
そこには、ドーパミンによる快楽感情も関わっている。
ではこれを普段の対人関係にどのように活かせるでしょうか?
あなたが誰かを注意したとき
組織の和を乱す人を注意しようとしたとき(または注意した後)、それは100%相手のことを思ってのことだったのか。
あるいは脳内でドーパミンの働きによる快楽(自己満足)を得た結果ではなかったか。
自分を内省するきっかけにする。
自分が誰かに注意されたり、中傷されたとき
一方で、自分が注意されたり、中傷されたとき、「どうして、(あなたに)そんなこと言われないといけないの⁉︎(言われる筋合いはない!)」と落ち込んだり、怒ったりするかもしれません。
そんなとき、「もしかしたらあの人は、脳内でオキシトシンの働きによって、正義感を発揮して快感を得ている。悪人ではなくて、脳内ホルモンに影響されているのかも」
と考えられれば、イラッとするよりもちょっとだけ気持ちが軽くなりませんか。
シャーデンフロイデが、人間の種としての生存戦略や個体の発育に必要であったととらえれば、一概に攻撃・排除行動をとる者を性悪だと決めつけられません。
むすびに
いかがでしょうか。
オキシトシンが愛着形成に働く一方で、嫉妬や攻撃性という一面もあることをご紹介しました。
脳の働きを知ることで、あなたの家族や大切な人と良好な関係を築き、幸せな人生をつくるのにお役立てください。
最後までお読みいただきありがとうございます。
参考書籍
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