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安定性と可動性-相反する機能を担う脊柱

ひとが重力下で姿勢を保ち、運動するうえで、脊柱(脊椎)はとても重要な役割(機能)を果たしています。脊柱の果たす主な機能には、次の3つがあります。

  1. 身体を支え、動かす【安定性(支持性と自動運動性)】
  2. 身体に加わる外力の衝撃を緩衝する【可動性(柔軟性)】
  3. 脊髄などの神経を保護する

今回は、「身体を支える、動かす」「外力の緩衝を緩衝する」について、その機能を担う構造についてお話しします。これから脊柱について学んだり、復習したりしようとされている療法士に読んでいただければ幸いです。

上肢や下肢の疾患であっても患部だけの治療では奏功しないケースを経験します。そこで脊柱とのつながりを考慮してアプローチすると突破口がみえることも少なくありません。臨床でひとの動きを考える一助となれば。

背骨は、正面からみると直線、側方からみるとS字カーブの形状をしている。S字カーブは、頸椎前弯、胸椎後弯、腰椎前弯という3つの生理的弯曲で構成される。

身体を支え、動かす“エンジン”

地球上でひとは常に、重力に抗って存在しています。重力に抗って思い通りの運動を遂行する「安定性(stability)」を発揮するには、脊柱が貢献しています。脊柱の安定性には、空間でその姿勢を適切に保持する「支持性」と、運動のために自在に変形させる「自動運動性」という能力があります。

姿勢を適切に保持する「支持性」

ひとの脊柱は、3つの生理的な弯曲(頸椎前弯、胸椎後弯、腰椎前弯)を有しています。これらの弯曲は、横から見ると前後にS字カーブを描き、重心のバランスを維持するのに役だっています。3つの生理的弯曲によって、一本の棒状の形態と比べて、10倍の抗力(物体にかかる圧縮応力に対して形態を維持する機能)を発揮することができます。

傾斜した骨盤に対して脊柱が理想的な配列にあるとき、さまざまな動作においても適切に姿勢のバランスを保持できます(compensate sagittal balance)。動作中に姿勢が大きく崩れて(decompensate sagittal balance)しまっては、脊柱を含む体幹が重心線から離れ、身体各関節にかかるモーメントが大きくなります。関節モーメントの増大は、関節への力学的負荷が大きくなり外傷や痛みを招きます。

支持性

思い通りに身体を動かす「自動運動性」

ひとという物体が運動するには、エネルギー(力学的エネルギー)が必要です。力学的エネルギーは位置エネルギーと運動エネルギーの総和であり、運動中に力学的エネルギーは一定に保たれます(力学的エネルギー保存の法則)。物質の運動に漏れず、ひとの運動もニュートンの運動3法則に則って遂行されます。

空間における姿勢保持によって位置エネルギーがあり、運動の際には重心を移動させる(重心が支持基底面を外れる)ことで運動エネルギーを生み出し、移動することができます。あたかも倒立振り子が倒れるイメージです。重心や重心線は脊柱の傍らに存在するため、重心コントロールにおいて脊柱が重要な役割を担います。動作に必要なエネルギーを生み出す脊柱の機能は、まさしくエンジン(動力源)であり、“Spinal Engine(スパイナル・エンジン)”と呼ばれます(The Spinal Engie。Serge Gracovetsky 著)。

脊柱は7 個の頚椎、12 個の胸椎、5 個の腰椎、5 個の 仙椎、3 〜 6 個の尾椎が連結してできています。一本の腸管骨ではなく、あえて椎骨の連結構造をとることで、全体として“しならせる”ように動かすことが可能となっています。

脊柱の安定性を担う構造

生理的弯曲に加えて脊柱の支持性を維持している組織には、次のようなものがあります。

  • 椎間関節
  • 線維輪(椎間板の外層)
  • 靱帯

椎間関節

椎間関節は頭側に位置する椎体の下関節突起と、尾側に位置する椎体の上関節突起で構成され、それぞれの椎骨の後方をつないでいます。椎間関節の形態は頸椎、胸椎、腰椎で異なり、それぞれの形態の違いによって運動の自由度が増し、脊柱全体としての屈曲伸展、側屈、回旋を可能にしています。脊柱の各運動において可動範囲の大きい部位は次の通りです(頸部を除く)。

  • 屈曲伸展運動:腰椎>胸椎。胸椎のなかでも下位>上位。腰椎のなかでも下位>上位。
  • 側屈運動:腰椎≒胸椎。やや胸腰椎移行部で優位。
  • 回旋:腰椎<胸椎。胸椎のなかでも下位<上位

ただし、腰椎は過度な運動によって痛みや機能障害を生じやすいため、いかに胸椎を柔軟に動かせるかが重要だと考えられます。

椎間板の表層を取り巻く線維輪

線維輪は椎間板の外層をなす線維性の組織です。層構造をなし、各層の線維方向は交差していることで、さまざまな運動方向に対して制動が働くようになっています。圧縮応力によって椎間板は変形しましが、線維輪の働きで髄核の脱出を防いでいます。

椎体をつなげる靱帯

頭側-尾側の椎骨は各靱帯(前縦靱帯、後縦靱帯、黄色靱帯、棘間靱帯、棘上靱帯)によって強固に連結されています。これら靱帯は脊柱の構造を支え、過剰な動きのストッパー(制限因子)として働いています。

 

外力の衝撃を緩衝する“サスペンション”

物体が動く際には、進行方向に働く力(作用力)と反対方向の力(反作用力)が働いています(作用-反作用の法則)。ひとの運動も例外ではありません。足を踏み込めば地面からの床反力が身体に加わり、腕を振れば遠心力と反対の向心力(求心力)が身体に加わります。これら身体に向かってくる反作用力を吸収しながら動作は遂行されています。

吸収できなかった力は、身体の各箇所で暴発し、痛みを生じる原因ともなります。エネルギーの暴発と痛みの関係については、別の機会でお話ししたいと思います。

反作用力を吸収する役割(可動性mobility、柔軟性、buffering function)を担う主役が、脊柱です。

脊柱は自動車やバイクで例えると「サスペンション」にあたります。車輌のサスペンションは、地面からの振動や衝撃が車体に伝わらないように緩衝したり、車輪を地面に押さえつけたりして安定した乗り心地を実現させています。サスペンションのへたった車輌では、凹凸ある路面からの振動が伝わり、車輌の破損につながるでしょう。

脊柱の可動性を担う構造

脊柱の柔軟性、可動性を担う組織には、次のようなものがあります。

  • 生理的弯曲
  • 仙腸関節
  • 髄核(椎間板)

椎体の連なり、生理的弯曲

もしも脊柱が一本の棒であれば、自在に曲げたり伸ばしたり、後ろを振り向いたりするのは至難の技でしょう。一つ一つの椎体が積み木のように連なり、連結部が少しずつ動くことで全体としての自由な動きを生み出しています。弯曲構造も柔軟性に貢献しています。例えば、脊柱の屈曲の際には、腰椎前弯を扁平化させます。伸展の際には、胸椎後弯を扁平化させるように動きます。これらの弯曲の動きが妨げられると、隣接する他関節に過剰運動が生じ、椎間関節障害や椎間板ヘルニアの原因ともなります。

体積が大きく、可動性に富んだ脊柱だからこそ、衝撃の緩衝に貢献することができます。

仙腸関節

仙腸関節は、その構造(form closure)と機能(force closure)によって重力と床反力を緩衝するうえでの欠かせない存在です。また豊富な関節受容器(レセプター)が存在することで姿勢のバランス保持や筋緊張制御にも関与しています。

髄核(椎間板)

まさしく椎間板は衝撃を緩衝するクッションのような役割を果たします。重力ストレスの80%を椎間板で支えるともいわれます。椎間板の中心にあるゲル状の組織が髄核です。椎間板ヘルニア(髄核の脱出)は、脊柱の可動性が破綻し、圧縮応力に耐え切れなくなった“結果”として生じると考えられます。

安定性と可動性という相反する機能を担う脊柱

重力下におけるひとの運動には、姿勢を保持し自在に動かすという「安定性(支持性・自動運動性)」と、外力の衝撃を緩衝する「可動性(柔軟性)」の両方の能力が必要とされます。安定性と可動性は、相互に影響し、補完しあいながら役割を果たしています。

脊柱は、安定性と可動性という相反する機能を発揮し、ひとの動作遂行に大きく貢献しています。脊柱の可動性を評価するには、身体各種の柔軟性テストから推察します。安定性を評価するには、体幹や下肢の筋力を測定する方法があります。

今回は脊柱の役割のうち、「身体を支える、運動する」「身体に加わる外力の緩衝を緩衝する」についてお話ししました。ふだんの臨床において、すこしでもお役立ていただければ嬉しいです。

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