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「姿勢・動作に関する二段階制御 -姿勢筋緊張を整え、痛みを解消する-」

セラピストがおこなう痛みに関する臨床推論として、組織学的推論力学的推論があります。

組織学的推論では「どの組織に、どんなメカニカルストレスがかかっているのか」を評価します。一方、力学的推論では「重力環境下における身体応答」に目を向け、「運動力学」から身体機能や動作を評価していきます。

今回は、力学的推論による姿勢と動作の考え方、痛みの発生機序と治療理論についてご紹介します。なお本記事の内容は、Spine Dynamics療法研修会<アドバンス①>の内容を参考にしています。

運動力学からみた身体全体機能

身体機能を「運動力学 (kinetics)」の観点からみると、姿勢を保持し、動作を遂行するのに必要な以下の二つの機能があります。

力学的エネルギーの発揮機能(作用力を発揮する剛性)
 …機能発揮の主体は運動野による運動予測

力学的エネルギーの吸収機能(反作用力を吸収する柔性)
 …機能発揮の主体は軟部組織の物質密度

これは地球上で生活している以上、ひとの運動も力学のルールに従うことから導かれます。

ニュートンの第3法則「作用-反作用の法則」によれば、物体が仕事をする(作用力を発揮する)際には、反対向きで同等の反作用力が働きます。生体は、作用力を発揮しながら、同時に反作用力を吸収することで動作を成り立たせています。つまり、

[力の発揮機能(剛性)]=[力の吸収機能(柔性)]

となります。

作用反作用の法則

もしも何らかの原因で[反作用力の吸収機能(柔性)]が低下すると、それに伴って力の発揮機能(剛性)も低下することになります。また吸収しきれなかった反作用力は、身体のどかかしらで暴発します。そのときの物理的刺激(機械的振動エネルギー)は、骨への荷重痛や筋の動作時痛を生じさせる原因となります。

なお、反作用力の吸収機能が低下した状態は、以降「柔性障害」と表現されています。

機械的振動エネルギーの暴発

姿勢制御の二段階プログラム

すべての運動において姿勢の制御が随伴しており、先行する姿勢制御がない限り、意図する運動を実行できない(高草木、2009)

重力に抗して姿勢を保持し、動作を遂行する、つまり姿勢変化を起こす仕組みは次の2段階制御からなされるといいます。

1。姿勢保持のための重心補正プログラム

2。動作遂行(姿勢変化)のための随意運動プログラム

運動に関する神経機能レベルでは、1。腹内側制御系による体幹近位筋の支配(→姿勢制御)、2。背外側制御系による四肢遠位筋の支配(→上下肢の独立した運動遂行)によって制御されます。

いずれも「筋の緊張(筋緊張)」がカギになっているとわかります。筋緊張は、姿勢制御に不可欠であることから、「姿勢筋緊張」とよばれます。

臨床で対峙することの多い慢性疼痛疾患患者は、健常者と比べて、「立位姿勢における姿勢筋緊張が有意に高い」と報告されています*。

嵩下敏文, 脇元幸一, 渡邉純, 他: 姿勢制御アプローチSpine Dynamics理論による慢性疼痛疾患の捉え方. 静岡理学療法ジャーナル23: 41-44, 2011.

姿勢制御のために筋緊張が高まっている筋では、随意運動指令に対して十分な筋力を発揮することができません。言い換えれば、筋が姿勢を調節するのに精一杯で、動作を遂行するキャパシティが残っていないのです。

姿勢筋緊張の高まった筋の機能的特徴として、「最大出力低下」「敏捷性(収縮スピード)低下」「巧緻性(収縮精度)低下」が現れます。実際に先行研究では、約30%も最大出力が低下していると報告されています*。

嵩下敏文, 脇元幸一, 渡邉純:慢性疼痛疾患患者と健常人における筋質量(%MV)と体重支持指数(WBI)の比較検証。専門リハビリ7:42-45、2008。

治療においては、これらの結果(現象)に対して原因となる姿勢筋緊張を正常化する、つまり柔性障害を解消することが重要です。

柔性障害の評価と治療

ひとの姿勢保持や動作遂行には姿勢筋緊張の調節が前提であり、姿勢筋緊張の亢進(つまり、柔性障害)が荷重痛や動作時痛を招くと書いてきました。では次に、その柔性障害の評価と治療理論についてみていきます。

評価理論

ではなぜ、全身の姿勢筋緊張が亢進するのでしょうか。筋緊張制御は身体内でもっとも質量が大きく、身体重心の存在する「体幹」の状態にゆだねられます。体幹の柔性障害が生じる原因として、大きく以下の二つがあります。

☆呼吸ユニット(胸郭)の柔性障害→胸椎伸展柔軟性低下

☆腰椎骨盤ユニットの柔性障害→腰椎前弯柔軟性低下

呼吸ユニットの柔性障害は交感神経の過活動(交感神経の過活動は、体性-自律神経反射による呼吸筋の緊張亢進を招く)からなり、腰椎骨盤ユニットの柔性障害は筋量不足、体力低下から生じます。

いずれも体幹の柔性障害の結果として、多くの場合「上半身重心の後方偏位、かつ骨盤の前方偏位と後傾」という姿勢変化が現れます。交感神経の過活動や筋量不足によって体幹背部筋の緊張が高まります。体幹背部筋の作用はほとんどが「脊柱を伸展させる」方向に働きます。

つまり矢状面でみたときに背骨が立って、後ろに反り返るようになります。後方偏位した上半身に対して、重心バランスを補正するために骨盤は前方偏位します。いわゆるスウェイバック(sway-back)と呼ばれる姿勢です。

上半身重心の後方偏位

柔性障害を評価するには、[全身柔性の評価][呼吸ユニットの柔性評価][骨盤腰椎ユニットの柔性評価]を行います。

全身柔性の評価として「筋量に見合った筋出力があるか」をみます。柔性評価とはいわば、「身体に加わる反作用力を吸収できる機能を評価する」ことですが、吸収できる機能を客観的に評価するのは困難です。そこで、「作用反作用の法則」を利用して、出力機能を評価することで二次的に吸収機能を推察しているのです。

胸郭ユニットの柔性評価として胸郭拡張性(スパイロメトリーを使った客観的評価が有用)や胸椎柔軟性テストを行います。腰椎・骨盤ユニットの柔性評価として仙腸関節機能テスト(FADIRF、FABEREなど)を行います。

まずは全体柔性として%MVとWBIの関係を評価します(全身の柔性障害が存在するか否かの判断)。次にユニットとして、胸郭、腰椎・骨盤部をみていくという流れです。

*簡易的なWBI評価はコチラをご参考ください→「下半身筋力をセルフチェックする方法-立ち上がり動作からWBIを推定する-」

治療理論

ここまで、「柔性障害によって吸収しきれなかった反作用力(機械的振動エネルギーの暴発)が骨での荷重痛や筋での動作時痛を生じさせる」「柔性障害の原因は、おもに体幹の柔軟性低下にある」と書いてきました。

そこで治療のカギは、柔性障害の解消、つまり体幹柔軟性の回復にあります。十分な柔性によって身体にかかるすべての反作用力を吸収することができれば、荷重痛・動作時痛は生じ得ないことになります。

そもそも体幹の姿勢筋緊張は、各関節受容器(メカノレセプター)からの体性感覚情報が大脳感覚野に入り、その情報にもとづき運動野で調節されます。脳の筋緊張制御はすべて「抑制性」に働くので、感覚情報が粗雑であれば、筋緊張を高めて動作に制限をかけることになります。一方で、レセプターからの精密な情報入力があれば、適度な筋緊張によって動作がスムースに実行されるようになります。

つまり、姿勢筋緊張を緩和するには、体幹各関節から精密な感覚入力がある、ひいてはレセプター(の閾値)を正常化させるということになります。

関節受容器には、タイプⅠ(ルフィニ小体)、タイプⅡ(パチニ小体)、タイプⅢ(ゴルジ腱器官)、タイプⅣ(自由神経終末)があります。

これらのうち筋緊張の緩解に働くのは、タイプ1とⅡの受容器です。そしてタイプⅠ・Ⅱ受容器は、関節の位置と運動方向(ベクトル)の情報を察知し、とても弱い刺激に反応します。治療手技でいえば、関節包内運動が生じないレベル(「ドーゼDOSE 1」といわれる)で十分といえます。むしろ強い刺激は、タイプⅢ・Ⅳ受容器を刺激し、筋緊張を亢進させてしまいます。

タイプⅠ・Ⅱ受容器への刺激によって、次の3つの機序で“反射的に”筋緊張が緩解されます。

  • 高位運動中枢(脳の指令からα運動ニューロンを介して)
  • 脊髄運動中枢(γ運動ニューロンを介して)
  • 軸索反射(局所の血管拡張によって)

治療理論をまとめると、“体幹各関節に存在するタイプⅠ・Ⅱ受容器へドーゼ1の刺激を入れることで全身の姿勢筋緊張を緩解させる、つまり柔性障害を解消させる”ということになります。

結びに

ひとの運動がすべて重力場のルールに従う以上、全身の運動機能を力学的に推論する必要があります。

そしてあらゆる運動に伴い姿勢制御プログラムが先行しており、適切な姿勢筋緊張がなければ円滑な動作を遂行することはできません。

姿勢制御を力学的に推論するには、[作用力の発揮機能(剛性)]と[反作用力の吸収機能(柔性)]に着目するのが有効です。

*剛性と柔性への理解を深めるのにこちらも役立ちます→「安定性と可動性-相反する機能を担う脊柱」“背骨”を動かして健康になる。Part 2(その3):“反作用力の緩衝機能”に優れる

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。臨床推論の一助となれば幸いです。

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