こんにちは、大山ふみあき(@ThanksDailylife)です。
長生きするなら、元気で、自分のやりたいことや好きなことを続けたい!と思いますよね。
「人生100年時代」といわれる現代ですが、平均寿命と健康寿命の隔差が問題となっています。
平均寿命から健康寿命を差し引いた“日常生活に何らかの制限がある期間”は、男性で約9年、女性で約12年間にもなります。
年を重ねても自分のやりたいことをやって、できるだけ元気で過ごせるよう、まずは加齢に伴って私たちのカラダにどんな変化が起きるのかを知っておきましょう。
加齢に伴い、からだのさまざまな機能が衰えていくのは誰しも避けられません。
ですが、その変化のペースをできるだけ緩やかにし、体力低下を予防していくことは充分可能です。
そこで今回は、加齢に伴うカラダの変化としてよく耳にする3つの状態と、それぞれの判定方法を解説します。
その変化を知ったうえで、適切な予防にお役立ていただければ幸いです。
- フレイル
- サルコペニア
- ロコモティブ・シンドローム
フレイル;健康から病気への過渡期
フレイルは英語のfrailty(「弱い」の意味)から名づけられた、「健康と病気のあいだの連続的な変化の過程」で、次のように理解されます。
加齢に伴ってさまざまな身体機能が低下し、ちょっとしたストレスでも健康に支障が出やすい状態
日本人のおよそ300万人がフレイルに該当すると推測されています。
フレイルに該当する高齢者では、日常生活に支障をきたすのに加えて、施設入所や転倒、入院、認知症、死亡などのリスクが高まります。
ただフレイルは、適切な介入により再び健康な状態に戻る可能性(=可逆性)があるため、早期発見&早期介入が肝心です。
フレイルの発症メカニズム
フレイルの発症には、加齢に加えて、各種疾患、免疫異常、神経内分泌異常、栄養(タンパク質やビタミンDの不足など)や薬剤の問題などが影響します。
フレイルの3つのタイプ
フレイルは、次の3タイプに分類されます。
- 身体的フレイル
- 精神・心理的フレイル
- 社会的フレイル
身体的フレイルには、ロコモティブシンドロームやサルコペニアが含まれ、精神・心理的フレイルには、軽度認知障害(MCI)や初期の認知症、老人性うつなどが含まれます。社会的フレイルには、社会的つながりの減少による孤立や貧困などが該当します。
フレイルの判定
フレイルの判定には、Friedら(2011)が提唱した評価基準がよく用いられ、日本人用に改変されたJ-CHS(cardiovascular health study)基準があります(下図)。
わが国での高齢者の総合機能評価には、厚生労働省作成の「基本チェックリスト」がスクリーニングに用いられます。基本チェックリストは、身体的・精神的・社会的フレイルを含む25項目の質問に自己回答する形式。
より簡便な評価として、「簡易フレイル・インデックス」もあります(下図)。
*参考:フレイル(健康長寿ネット。公益財団法人 長寿科学振興財団)
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サルコペニアの実態と原因
「サルコペニア」とは、ギリシャ語で「筋肉」を意味する「sarx」と「喪失」を意味する「penia」を組み合わせた言葉で、加齢に伴う骨格筋量の減少がベースにあります。
ひとの体は、一日のうちに筋肉の合成と分解を繰り返しています。
成長期では合成が分解を上回り、十分な量のタンパク質の摂取により筋肉は増量。
ところが高齢者においては、食事量(とくにタンパク質の摂取量)や運動量の減少により、筋肉の合成量が低下。
結果として、筋肉の合成が分解を下回ることで、筋肉量が減少してしまいます。
70〜80歳代では、20〜30歳代と比べて約30〜40%の骨格筋量が減少するともいわれています。
サルコペニアは当初、「加齢に伴う骨格筋量の減少」とされていましたが、骨格筋量の減少に加えて、握力や歩行速度の低下(予後と密接に関係する)が認識されるようになり、その概念が修正されてきました。
現在ではヨーロッパの研究グループ(The European Working Group on Sarcopenia in Older People:EWGSOP)によって、以下のように定義されています。
筋量と筋力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる症候群で、身体機能障害、生活の質(QOL)低下、死のリスクを伴うもの
サルコペニアの判定
Chenら(2014)は、アジアサルコペニアワーキンググループ(Asian Working Group for Sarcopenia:AWGS)を設立し、アジア人のための診断基準を提唱しました。65歳以上の高齢者において、握力・歩行速度、骨格筋量を指標としてサルコペニアと診断(下図)。
骨格筋量の評価には、デキサ法(dual-energy X-ray absorptioetry:DXA)あるいはバイオインピーダンス法(bioelectrical impedance analysis:BIA)によって求められた四肢骨格筋量を身長の2乗で除した値「骨格筋指数(skeletal muscle index:SMI)」が用いられます。
さらに日本人の高齢者に合わせたサルコペニアの簡易基準案が国立長寿医療研究センターによって作成されています。次の基準に該当する場合に、サルコペニアと判定。
- 65歳以上の高齢者
- 歩行速度が1m/秒未満、もしくは握力が男性25kg未満、女性20kg未満である場合で、
- さらにBMI値が18.5未満、もしくは下腿周囲径が30cm未満
この簡易基準では身長、体重、握力計、メジャー、ストップウォッチがあれば測定可能であり、診断が比較的容易に行えるのが利点です。
*参考:サルコペニア(健康長寿ネット。公益財団法人 長寿科学振興財団)
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ロコモの実態と原因
ロコモティブシンドローム(運動器症候群。通称、ロコモ)は、2007年に日本整形外科学会により提唱された次のような概念。
運動器の障害のために移動能力が低下した状態
進行すると要介護状態に陥る危険が高くなります。
「運動器」とは、骨・関節・靱帯、脊椎・脊髄、筋肉・腱、末梢神経など、からだを支え(支持)、動かす(運動・移動)役割をする器官の総称。
「移動能力の低下した状態」とは、身体機能のなかでも立ったり、歩いたりといった動作に支障をきたした状態であり、日常生活の自立度が著しく低下した状態。
ロコモの原因は、主に以下の2つ。
- 加齢による運動器の機能不全
- 運動器自体の疾患
「加齢による運動器の機能不全」には、運動に関わる筋力や持久力、敏捷性、巧緻性の低下、また反応時間遅延や深部感覚低下などの神経系の要因、バランス能力低下などがあります。これらによって移動能力が低下し、転倒リスクも高まります。
運動器自体の疾患では、膝や股関節の変形性関節症、変形性脊椎症、骨粗しょう症、関節リウマチ、脊柱管狭窄症など体幹や下肢の疾患が強く影響します。
これらの疾患による痛みや関節可動域制限、筋力低下、バランス保持能力低下などが原因で、移動能力低下や活動性低下をきたしやすくなります。
ロコモの判定
ロコモの判定には、移動能力に関わる「立ち上がり動作」と「最大歩幅」が重視されます。
下肢筋力を調べる「高さ40㎝(20㎝)の台からの立ち上がり」と、歩幅を調べる「2ステップテスト」の2つ身体機能テストに加え、身体状態や生活状況に関する25項目の質問紙表「ロコモ25」に答えることで判定。
判定結果は「ロコモ度1」と、より進行した「ロコモ度2」に分けられます(下図)。
*参考:日本整形外科学会公式ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト
フレイル、サルコペニア、ロコモ “負の連鎖”
上記にあげたフレイル、サルコペニア、ロコモの3者はお互いに密接な関係(負のスパイラル)にあることに注目。それぞれの位置関係は下図のようになり、フレイルがより多角的・総合的な概念であることがわかります。
ひとは加齢に伴う生理機能の変化によって、次のような状態が訪れます。
- 食欲の低下
- 活動量の低下(社会交流の減少)
- 筋力低下
- 認知機能低下
- 多くの病気を抱えている
危惧すべきは、これらの悪循環(=「フレイル・サイクル」)が事態をさらに悪化させること。
サルコペニアにより基礎代謝率が低下し活動量が減少すると、エネルギー消費量が減少。加齢による食欲不振もあわさって食事摂取量が減少するので、慢性的な低栄養になります。低栄養によってさらに筋量が減少し、サルコペニアが悪化する、というバッドサイクル。
さらに低栄養やサルコペニアによって筋量が減少すると、疲れやすくなり、日常生活での活動量や外出の機会、対人交流の機会が減少するので、精神・心理的にも不活発となり、引きこもりや孤立に陥ってしまいます。
むすびに
加齢にともなう心身の変化として重要な3つの概念−フレイル、サルコペニア、ロコモティブ・シンドローム−の違いと判定方法についてご説明しました。
平均寿命と健康寿命のギャップを埋めていくには、加齢に伴うさまざまな変化を知り、その予防と早期発見、早期介入に努めていくことが大事!
ぜひあなたやご家族の健康長寿にお役立ていただければ嬉しいです。最後までお読みいただきありがとうございます。