こころとからだの健康掲示板

こころとからだの関連性(心身一如)から「真の健康」を目指します!!

リハビリに役立つ意思決定の仕組み「シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)」

calendar

reload

リハビリに役立つ意思決定の仕組み「シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)」
Pocket

本記事を読んでくださっているあなたが医療者であれば、病気やケガに対する治療・リハビリテーションの方針を決定する際には、エビデンスや治療者の経験をもとに、患者さんとコミュニケーションをとりながら進めていかれていると思います。

行う評価や治療を決める過程を患者と医療者で共有することといった双方向のコミュニケーションとして、
シェアード・ディシジョン・メイキング(Shared Decision Making:SDM)があります。

SDMは、「共有意思決定」や「協働的意思決定」などと訳され、インフォームド・コンセントよりも患者の自己決定権が強くなった概念です。

とくに慢性疾患や進行性疾患など、治療方針や目標が患者の価値観によって変わりうる状態において重要な概念だとされています。
リハビリテーションの場面においてもSDMを知っておくことで、セラピストと患者のコミュニケーションを改善し、目指すゴールへ進みやすなります。

*参考:中山建夫:患者と医療者の協働意思決定と診療ガイドライン.

スポンサーリンク

インフォームド・コンセントからシェアード・ディシジョン・メイキングへ

インフォームド・コンセントの普及によって、「医療者が患者に治療方針を説明し、患者の同意を得たうえで治療をおこなう」という過程は一般化してきています。

しかし、その一方でインフォームド・コンセントに関する問題点も指摘されています。

インフォームド・コンセントに指摘される問題点

  • 医療者が対象者(患者、サービス利用者)に対して一方的に説明し、単に同意の署名を得るだけになっている
  • 患者の意志を反映するという目的が達成されていない可能性
  • 患者に説明して医療を行った証明として、医療者の法的な免責になっている可能性

つまり選択肢が複数ある治療法や予防法について、1つの選択肢のみが提示されるのでは、患者の判断材料が足りません。しかも患者の希望や意向が反映されにくいのです。

対象者と医療者が治療に向かって協同して意思決定を行ううえで、インフォームド・コンセントは十分でない可能性があります。

例えば、リハビリテーションの場面で陥りがちなインフォームド・コンセントの例です(下図)。

ICの問題点

藤本修平、中山建夫:コミュニケーションを中心とした予防理学療法学.予防理学療法学概論(医歯薬出版) より作成。

療法士はエビデンスを参考に筋力トレーニングの必要性を説いているのでしょうが、自分の考えのみを押しつけている印象があります。

もし患者さんが、「そうは言っても、自分はこうしたいのに…」といった不満を抱いていたら、積極的な運動療法をおこなってはくれないでしょう。

SDMは、対象者が自ら参加する過程に不可欠

SDMは、

治療の選択肢(オプション)、益と害、患者の価値観、希望、状況をふまえ、臨床家と患者が一緒に健康に関わる意思決定に参加するプロセス

*Hoffmann TC, Montori VM, Del Mar C:The connection between evidence-based medicine and shared decision making.JAMA. 312(13):1295-6. 2014

と定義されます。

「複数の選択肢と、そのメリット/デメリットが提示される」、
「患者自身の価値観が尊重される」、
「患者と医療者、双方の考えをふまえて、協同で意思決定する」、
「患者の自己決定を促す」

のがポイントだといえます。

先ほどのリハビリテーションの場面でいうと、次のようなコミュニケーションになります(下図)。

SDM

藤本修平、中山建夫:コミュニケーションを中心とした予防理学療法学.予防理学療法学概論(医歯薬出版) より作成。

いかがでしょうか。

先ほどの話し方よりも、必要ないくつかの情報を提示したうえで、患者の意向をふまえ、自己決定を促そうとする様子がわかります。

治療方針の決定に納得した患者は、能動的に取り組み、行動変容を図ってくれるのではないでしょうか。

*「行動変容」の理解と実践方法については、こちらの記事をご参考ください。

まとめ

  • 患者中心の医療を実践するうえで、患者と医療者が検査や治療に関する意思決定の過程を共有するのが大切です。
  • シェアード・ディシジョン・メイキング(Shared Decision Making:SDM)は、患者自身の自己決定を尊重する、ヘルスコミュニケーションの手法の1つです。
  • SDMにおいて医療者は、複数の選択肢を提示し、それぞれのメリットでデメリットを説明します。
  • 医療者は、患者の希望や価値観、大事にしたいと思っている考えなどを聞き取ります。
  • 患者と医療者は、選択肢と目指す目標について話し合います。
  • 医療者の情報(エビデンスや経験)と患者の情報(好みや価値観)の両者をふまえて、選択肢を吟味し、協力して意思決定をおこないます。
  • SDMは、患者を中心としたチーム医療の実践においても、関係者のコミュニケーションをはかるのに役立ちます。
  • 意思決定の過程を共有することで、患者自身の能動的な取り組みや行動変容につながると期待されます。

医療者として、次の言葉は肝に命じておく必要があると実感しました。

SDMのないEBMは、エビデンスによる圧制(evidence tyranny)に転ずる(Hoffmann、2014)

 

この記事をシェアする

コメント

コメントはありません。

down コメントを残す




このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

folder 「免疫系」を知る

免疫力を高めるストレス解消法
免疫力をアップさせる運動のコツ
“免疫系の暴走”を抑えるのも,食事から!〜食物繊維の役割〜
more...

folder からだを整える

『病に好かれる人 病に嫌われる人(小林弘幸 著)』書評
健康寿命の差を生む原因は、「生活習慣」にあり!
『自己医療』のすすめ -痛み不調は体からのシグナル-
more...

folder こころを整える

治る力を引き出す!『病気の原因はチャクラが教えてくれる(橋本典之著)』より
運・ツキを呼ぶ脳の鍛え方ー“唯心所現”の実践
「心身相関」を健康づくりに生かす
more...

folder コミュニケーション

アナウンサーに教わった、「伝わる」話し方
想いを伝える力(伝達力)は,マインドから学ぶ.<読書評>
more...

folder モチベーション

『予祝のススメ 前祝いの法則(ひすいこうたろう・大嶋啓介 著)』書評
「奇跡」を意図的に起こすには!?
「未見の我」を信じて、今に励む
more...

folder 季節ごとの快適な過ごし方

お正月の過ごし方で年始のスタートダッシュが決まる!
痛みの原因は「冷え」と「乾燥」?この時期に気を付けたい冷え対策
残暑こそ夏バテ・冷え症に要注意!
more...

folder 療法士向け

体幹疾患の臨床推論−障害発生プロセスから−
姿勢と動作の成り立ち−筋緊張制御の仕組み−
腰痛の臨床推論-見逃せないレッドフラッグと神経症状-
more...

folder 脳の働きを知る

「心」とは?
人の行動は脳内物質に支配されている⁉︎
愛着と嫉妬は紙一重⁉︎ “愛情ホルモン”オキシトシンの意外な一面.
more...