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リハビリテーションに関わる人が知っておきたい!ホメオスタシスとアロスタシス

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今回は「ホメオスタシス」「アロスタシス」という身体の仕組みについてご紹介します.

これらはリハビリテーションの領域においても重要な概念ですので,知っておくと患者さんの機能回復や疼痛管理が大きく変わってきます.

ホメオスタシスとアロスタシスそれぞれの概要に続き,リハビリテーションとの関わりを考えていきます.

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内部環境を保つ「ホメオスタシス」

私たちの身体は,外部環境が変化してもある一定の状態を保持しようと調節されています.寒い環境にいても体温が急激に変化することはなく,おおよそ36.0〜37.0度に保たれています.

このように

「生体が安定した内部環境を,一定に保とうとする働き」

「生体恒常性(ホメオスタシス)」といいます.

ホメオスタシス(コトバンクより)

ホメオスタシスの代表として体液のpH酸素濃度,血糖値,体温などは生命の維持に関わる重要なものであり,かなり狭い範囲に調節されています

私たちの身体には,生まれながらに自然治癒力が備わっています.風邪を引いても,休養と栄養をとっていれば回復してくる.転んで擦り傷をつくっても,かさぶたができて傷が治ってくる.これらの自然治癒力は「ホメオスタシスの働いた結果」だと考えられています.

自然治癒

ホメオスタシスは次のような仕組みで働きます.

外部環境の変化に対して…五感の感覚器から体性感覚神経を介して,

内部環境の変化に対して…自律神経の求心性線維(内臓求心性神経)や血液によって,

→脳へ情報が伝えられる

→脳から自律神経系や内分泌系,体性運動神経系に指令が伝わり,

→各内臓器官や運動器の機能が調節されて,内部環境は一定の範囲内に維持される

例えば寒い屋外に出たときには,視床下部の体温調節中枢が反応し,四肢末端の血管を収縮させて熱を逃げないようにし,筋肉をふるわせて熱を産生しようとします.

ホメオスタシスを支える三角形

自律神経系,内分泌系,免疫系の3つシステムを総じて「生体恒常性の三角形」と呼びます.自律神経系は交感神経と副交感神経の働きによって,内分泌系はホルモンの分泌によって,免疫系はサイトカインの分泌によって,相互に作用しあいます.脳の視床下部や下垂体は,自律神経の作用やホルモン分泌に指令を出す中枢としてストレス反応に働きます.

これらが協働して身体の内部環境/外部環境の変化に対応していきます.ホメオスタシスの破綻は,慢性的な疲労や無力感,ひいては病気の発症につながります.

外部からの侵入者を防ぐ,「免疫系」の仕組み

ストレス反応

ストレス反応の模式図(『心身健康科学概論 第2版』より)

 

変動しながら調節する「アロスタシス」

これに対して,「アロスタシス」というシステムもあります.

アロスタシスは,

「ストレスに対処しようとする適切で効果的な素早い身体の反応」

をいいます.

アロスタシスの代表として心拍数血圧などは,身体がおかれている状況によって大きく変動しながら適応しています

例えば,試験や対人関係などで心拍数が上がる.臥位から立位になると,血圧を上げて循環血液量を維持しようとするなど.いわば変動によって調節を受けるシステムです.

ホメオスタシスとアロスタシス

アロスタティック負荷

私たちは日々,さまざまな「刺激」を受けながら生活しています(身体の内外部の情報を五感で感知している).その刺激に対してすばやく反応しながら(=アロスタシスを働かせながら),安定した心身状態を保っています.

しかし時に,心身状態の安定が崩されるような事態に陥ることもあります.それがストレスです.例えば,仕事の大事なプレゼンで緊張することがあっても,プレゼンの本番が終われば落ち着きを取り戻します.しかし,このようなプレッシャーのかかる場面が毎日毎日続いたらどうでしょうか.眠られなくなったり,食欲がなくなったり,頭痛や肩こりがひどくなったりするかもしれません.

このようにストレス反応によって心身がダメージを受けた状態「アロスタティック負荷」といいます.

ストレッサー(ストレス因子)が慢性的になることで,ストレス反応も持続してしまった状態です.生活習慣病といわれる糖尿病や高血圧症,抑うつといった精神状態の異常もアロスタティック負荷と考えられます.

アロスタティック負荷を解消するには,健全な生活習慣を身に付けたり,過剰なストレスを避けることでアロスタシスの働きを回復させることが重要です

ホメオスタシス,アロスタシスとリハビリテーションの関係

上記のようなホメオスタシスやアロスタシスの仕組みを理解しておくのは,日々の健康管理やストレスへの対処として必要ですが,リハビリテーションにおいても,患者さんの状態として配慮しておくことが重要です.

組織治癒過程が進んでいるか

整形外科疾患の患者さんであっても,糖尿病や高血圧症といった持病があったり,睡眠障害や消化器の不調を抱えている方は少なくありません.こういった持病や既往があると,痛みや機能障害の回復も思うように進まないことがあります.

例えば,次のような事態が起こります.

  • 骨折や靱帯損傷からの組織治癒が遅れる
  • 靱帯や筋の再建術後に機能回復が進まない
  • 受傷後の腫脹が長引く(正常な炎症過程が進まない)
  • 機械的でない痛みが慢性化する(循環障害や感作など)

これらはいずれも,ホメオスタシスによる自然治癒力がうまく働いていない状態と考えられます.一般的な組織治癒や機能回復期間から大きく遅延したり,激しい痛みや疲労感が持続したりするときは,ホメオスタシスやアロスタシスの異常が生じていないかを考慮します.

重力応答できている身体かどうか

地球上で暮らす私たちは常に重力という負荷を受けており,その重力負荷に対して身体は適応しようと試みています(=重力応答)

重力応答を担う代表として,循環器系,筋骨格系があります.

背臥位から座位,立位といった抗重力位をとると,血圧を上げて頭部や心臓への循環血液量を維持しようとします.中枢神経損傷後や安静臥床後に起こりやすい起立性低血圧もアロスタティック負荷の一種です.起立性低血圧をきたすようであればリハビリも思うように進行できず,注意を要します.

骨は長軸方向に掛けられた負荷に対して強度を増すという性質をもっています(Wolfの法則).骨の成長や骨粗しょう症の予防,骨折の治癒過程において,適度な重力負荷がかかることが不可欠です.

機能訓練に先立って,まずホメオスタシスを整えることが重要となります.そのためには,ホメオスタシスを破綻させた原因であるストレス因子(精神的,身体的,環境的)を解消させることが必要です.

姿勢筋緊張が適切か

筋肉の持続的な緊張状態(筋緊張)も,重力応答の一つです.

筋は重力負荷に対して姿勢を適切に維持し,バランスを保つために(身体重心を支持基底面内に留めるために)持続的な緊張状態を維持しています.いわば車のアイドリング状態であり,この筋の緊張状態は「姿勢筋緊張」ともいわれます.

筋緊張も自律神経の変動や血液循環によって変化しています.活動・緊張をもたらす交感神経の活動が優位になれば筋緊張は高まります.冷えや乾燥によって四肢末端への血流量が滞れば,筋緊張も高まります.

痛みの原因は「冷え」と「乾燥」?この時期に気を付けたい冷え対策

過度に緊張の高まった筋では,関節を制動したり,正常な筋力を発揮したりすることができません.正常な筋機能が発揮されなければ,運動パフォーマンスが低下したり,運動時の痛みを生じやすくなります.過度に緊張の高い筋が筋内血管を圧迫し,ますます血液循環が不良になるという悪循環をまねきます.

姿勢変化

姿勢変化も「重力応答の結果」と考えられます

重力応答できていない身体は,筋緊張が過度に高まっています(筋腹を把握すると硬く,痛みがある).言い換えれば筋緊張が高いのは,姿勢を保持するために筋が必死に対応しようとしている結果なのです.

筋力トレーニングや関節可動域運動に先立って,姿勢筋緊張を正常化しておくことが重要です.全身の姿勢筋緊張を正常化するには,脊柱を含む体幹を中心とした姿勢制御を改善することが有効です

*姿勢筋緊張を調節する仕組みと痛みの関係→「坐骨神経痛」の正体は⁉️「梨状筋症候群」可能性も

ホメオスタシス,アロスタシスを破綻させる要因

ホメオスタシスやアロスタシスを破綻させる要因は,身体の内部と外部にあります.

  • 内部要因:不適切な生活習慣や思考のくせ(抑うつ,不安,怒り/ねたみ/そねみ)など
  • 外部要因:運動の不足/過剰,生活環境(音や臭いなど),化学物質,ブルーライト,人間関係など

交感神経を高ぶらせる日常生活

 

リハビリテーションを進行させるには,ホメオスタシスやアロスタシスが正常に働いているのが必要条件であり,そのために生活習慣の改善やストレスコントロールが重要です.

運動療法による負荷の不足や過剰も影響するので注意します.筋緊張や体力の程度によって,運動肢位を抗重力位あるいは重力除去位に調節します.循環器系の回復を促すために,心拍数をコントロールしながらの有酸素運動も有効です.

下半身筋力をセルフチェックする方法-立ち上がり動作からWBIを推定する-

結びに

身体の内部状態を一定に保持しようとする仕組み「ホメオスタシス」と,ストレスに対してすばやく対応している仕組み「アロスタシス」についてご紹介しました.

ホメオスタシスやアロスタシスが適切に働いているかどうかでリハビリテーションの進行も影響を受けます.組織治癒や機能回復が思うように進まない,痛みが持続するときには,一度疑ってみることも有効です.いわば「患者さんに,いかに治っていただくか」です.

最後までお読みいただき,ありがとうございます.ふだんの臨床にお役立ていただければ幸いです.

参考文献

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